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第4話

もしかしたら、隣を歩いている栗山は自分が想像しているよりとんでもない人物なのかもしれない。

そう思いながらまじまじと彼の顔や体を眺めながら歩いていると、先程教えてもらった家の前で老婦人と少女が抱き合っていた。

少女は無事祖母と再会できたようでラスタンは胸を撫で下ろす。

栗山とラスタンに気付き、老婦人と少女は2人へと駆け寄り彼らへ頭を下げた。


顔を上げた少女に、先程の4人組について心当たりがないか聞いてみる。

ラスタンが少女と傍らで話していたのを聞いていた栗山は、その耳で先程の4人組の情報を得る。

何でもあの4人組はここ最近警邏隊からも目をつけられている要注意人物達らしい。

その4人組は、この街外れにあると言う古びた研究施設から出てくるのをこの少女が以前目撃していたと言う。

「どうもありがとう。おかげで俺達も大きく前へと進めそうだ」

少女に礼を言い、ラスタンと一緒に栗山はその研究施設跡へと向かって歩き出した。


道中は人気を全く感じず、道も手入れされていないようで雑草が生い茂っている。

膝の上まである草をかきわけ進んでいけば、その先に形をかろうじて保っている廃墟が姿を現した。

「あれがそうかな。」

背を低くして雑草に紛れ込み、ラスタンは研究施設と思われる廃墟の様子を伺う。

目を細めて建物の正面を伺えば、見張りと思われる男が数人固まって立ち話をしているのが見えた。

「見張りが居るな・・・・これは正攻法では無理か」

どうにかして見張りの気をそらさなければいけない。

と言う訳で、せっかく2人居るのだし自分が囮になる為に栗山はラスタンに耳打ちする。

「良いか、俺があいつらを引き付けておくからその間に中に入ってくれ」

そう言い残して、ラスタンに潜入を任せて栗山は見張りの前へと歩き出していった。


男達が栗山に気付き、一斉に襲い掛かっていく光景に心臓が大きく脈打つのを感じながら、ラスタンは素早く建物の中へ忍び込んだ。

上階まで吹き抜けているエントランスは広く、更に上階通路からこちらが丸見えだった為、慌てて柱に身を隠し剣の柄に手をかけながら辺りを見回す。

天窓から差す光のおかげで建物の中は明るかったが、広間から先の1階通路は黒い口を開けていて、ラスタンからはその先は見えなかった。背を預けている柱を良く見ればそこかしこにひび割れがあり、周りの柱や壁にも殆どの箇所に亀裂が入っていて、爆発でも起これば即倒壊してしまいそうだ。

幸いな事に辺りは静まり返っており足音も聞こえなかった為、ラスタンはなるべく音を立てないように2階へ続く階段を駆け上った。


栗山は栗山で、あの時の路地裏の経験を活かして戦う。

(囲まれないように・・・)

なるべく囲まれないようにして1人ずつ倒して行く。これはシラットの戦い方だ。

(1対3とか1対4じゃなく、1対1が連続であると考えるんだ!!)

そうして時間は少し掛かったが、何とか全員を殺すまではいかないものの関節をへし折ったりして確実に戦闘不能にし、ラスタンが先に潜入したであろう施設の中へと栗山も突入して行った。


薄暗い2階の通路を歩いていたラスタンは前方からの足音に気付き、空いている一室へ逃げ込んで足音が通り過ぎるのをやり過ごす。

見張りとおぼしき男を部屋の入り口から隠れて見送り、ふと部屋の中を見渡せばたくさんの大小の瓶がテーブルに置かれている。

何かと思いそれらに近付き瓶の中身を見た瞬間、ラスタンの背筋が凍りつき後ずさる。

後方を確認しないまま下がった為に後ろにあった棚に気付かずにぶつかり、棚に置いてあった大量の瓶が床に落ち割れていく。

パニックになったラスタンの元へ近くを巡回していたであろう男達が駆けつけてきた。


(きったねー所だなー)

研究施設とは言え、やっぱりあくどい奴等のアジトなんてこんなもんか・・・と栗山は顔をしかめながら歩く。

ラスタンは上手く潜入できたのだろうか? と思いつつ歩いていると、何だか上のほうからバタバタと足音が聞こえて来た。

(・・・・・!?)

敵に見つかったか? と思っていたのだがどうやら違うらしい。だが胸騒ぎがするので、栗山はその足音が聞こえて来た方へと早歩きで向かうのであった。


足元に散らばる割れた瓶の破片と液体、そして長い年月その液体に浸り続けていた得体の知れない臓器や頭部に囲まれ、ラスタンは絶叫していた。

十数人に包囲されている事にも気付かず、部屋の中から剣を闇雲に振り回しながらラスタンは通路へと飛び出した。

瓶が床に落ちて割れた時に衣服に飛び散ったであろう液体や何かの破片を手で払いながら、無我夢中で建物の中を駆け抜ける。

男達の制止する声に気付いたのはそれから暫く経ってからの事だった。

「しまった、気付かれたか・・・!」

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