第7話
「博人も俺の知り合いだ。と言うか、博人も栗山も俺と一緒のチームに所属していたからな。博人も2000年に知り合ったからもう18年になるのか。今はチームがもう1つ作られて、博人がリーダーのチームに栗山が入っている形になる。で、その博人ってのもどうやらこのエールディンに来た経験があるらしい」
「そうなのか?」
さっきの話を聞いた時はもしや……と思ったが、やはりもう1人この世界にやって来た人間が居るらしいと孝司から聞いたケンヴィは納得して頷いた。
「ああ。博人はエールディンにやって来て、そこで誰かに会ったらしい。でもその人間とはすげー対立したらしくて、魔法だか何だかでぶっ殺される寸前だったらしいんだよ。その人物の名前は俺は聞いた筈なんだけど……すまん、思い出せねえからこれ以上は聞かねえでくれ」
この話が本当なら、地球と言う所からやって来たのはこの孝司で3人目になるらしい。
「どうやら、その地球とこのエールディンは繋がりがそれなりに強いらしいな。そして御前のその知り合いは2人ともそれぞれエールディンにやって来て、そして地球に帰っている。となれば御前も地球に帰れるかも知れないな」
「ああ。そうあって欲しいもんだぜ」
と言うか、帰れなかったら今までの自分の人生がこのエールディンで終わってしまう事になる。
この世界の事はまだやって来て少ししか経っていないので、どんな世界でどんな決まりがあって……と言うのは当然孝司は知る由も無い。
分かる事と言えば、このケンヴィと言う人間と馬が合体した様な生物が居るファンタジーな世界だと言う話しか無い。
そんな孝司に対して、そう言えば……と1つ忘れていた事があったのをケンヴィは思い出した。
「すっかり忘れていたんだが、まだ御前の名前を聞いていなかったな」
「ん……ああ、俺の名前? 俺は孝司。市松孝司だ。あんたの名前はケンちゃんだろ?」
「……ケンヴィ・タデアーシュ・ロターリオ・スヴィーニンだ。変なあだ名で呼ぶのをやめろ」
ケンヴィのやたら長いフルネームを聞いた孝司は、歩きながら考え込む素振りを見せる。
「ケンヴィ……スヴィーニン……?」
「どうした?」
まさか何か知っている事があるのか? と怪訝そうな表情をするケンヴィだが、現実は全く違う話になった。
「いや、あんたの名前の頭文字を取ったら丁度ケンタロスにならねえか? ケンヴィのケン、タテ何とかのタ、ロタ何とかのロ、スヴィーニンのスで」
「止めろ! 俺はケンヴィで通っているんだ! しかも途中の名前すら憶えられていないではないか!」
「ええー、せっかく呼びやすい名前だと思ったのによぉ。ケンタロスって良い名前じゃねえかよ、ケンちゃんよぉ~?」
そのまま馬の身体の部分を指でつんつんとつついてみる孝司の腹に、思いっ切りケンヴィの前足がめり込んだ。
「ぐほっ!?」
ムエタイで腹を蹴られるのには慣れているが、流石に馬に蹴られた経験は初めてである。
これでも手加減してくれたのかも知れないが、それでもやはり馬のパワーだけあってかなり痛い。
「黙ってさっさと歩け。御前はさっきから喋りすぎだ。見た所俺よりずっと年上なんだから、もう少し落ち着きを持ったらどうなんだ?」
腹をさすりながら立ち上がった孝司を高い目線で見下ろしながら、ふんっと鼻を鳴らしてケンヴィはアドバイスを送る。
「年上~? ってか、あんたは幾つなんだよ?」
「俺は21だ」
「ええっ、21って俺の半分以下じゃねえかよ! 俺、今52だぜ!?」
「俺の2倍以上も生きていてそんななのか……」
ケンヴィは哀れな物を見つめる目で孝司を見下ろす事しか出来なかった。




