第4話
孝司が手を振ってケンヴィに向かって叫ぶと、どうやら向こうも彼に気が付いたらしい。
(……何であいつがここに居るんだ……)
しかし、孝司に余り出会いたくなかった彼は渋い顔して孝司を見た後に、すぐに踵を返して立ち去ろうとした。
「ちょ、ちょっと待てって!! 無視すんなって!!」
このまま逃げられてたまるかとケンヴィに必死に追いすがる孝司は、そのまま決死のジャンプで彼の背中にまたがった。
そして乗られた方のケンヴィは明らかに嫌そうな顔をする。
「今すぐ降りんと斧で斬り裂くぞ・・・!」
「無理ー! 俺疲れてるんだよー! だからタクシー頼むよー!!」
そう言いながら、孝司は1つの仮説を思いついた。
「あっそーだ、この町に物を売れそうな場所か何か無いかな? 服とか売れば金になると思うからさー、知らないか? ほら、さっさと行ってくれ!! ゴーゴーッ!!」
「知らんわ!!」
孝司を馬背から振り落として、両手に握った特注の斧を彼に向かって振りかざすケンヴィ。
だが孝司はそれを素早い横っ飛びで回避して立ち上がる。
「おいおい、そんな切れる事じゃねーだろーよ。知らないのか……。さっき俺、酒場で骨董品屋の話聞いたんだけどあんたならその場所を知っているんじゃないかと思ってな」
骨董品屋の場所を教えればさっさと立ち去ってくれるだろうと判断したケンヴィは、嫌そうな顔はそのままに斧を持ったままの右手で町の内部を指し示す。
「……御前の言っている骨董品屋の場所なら向こうだ。あの青い屋根の建物がそうだ」
「おっ、そうかありがとよ。……でさぁ、9人分の荷物を買い込んだとか言ってるけどちょっと荷物潰れちまった。すまんね」
「何だと!?」
ケンヴィの緑色の瞳が見開かれているその間に、孝司はさっさとその骨董品屋に向かって歩き出した。
◇
「結構高い値段で売れた……のか?」
骨董品店で将棋の駒のキーホルダーを売り、7777ガリッドと言う金を手に入れた孝司。しかし物の価値が分からないので高いのか安いのかが分からない。
だが結果は結果なのでありがたく金を頂く事にする。
そのまま骨董品屋を出た彼の耳に、ふと馬の蹄の音がカッポカッポと聞こえて来た。
「……で、これで潰れた分の食料は弁償できるのか?」
今度はケンヴィの方から孝司の目の前に現れたので一体何事か、と思った彼だったが、その理由は先程、自分がケンヴィの背中に飛び乗って潰してしまった食糧の弁償をしなければならなくなったからだそうだ。
ケンヴィに振り落とされた挙句に斧まで振りかざされた孝司は、それで勘弁してくれと思ったのだが、ケンヴィ的にはそうもいかないらしい。
「足りる事には足りるがな、これ以上色々と勝手な事をされてまた俺の身に迷惑が降り掛かっても困る。……それと、色々と聞きたい事があるのでな。しばらく一緒に行動させて貰うぞ」
「聞きたい事……?」
何やら深刻そうな表情でそう聞いて来るケンヴィに対し、孝司はキョトンとした顔をしながらも、一緒に行動してくれるだけ不安な気持ちが拭えると安心してその話を受け入れた。
「で……俺に聞きたい事って何だよ?」
潰れてしまった食材を町の中の食料品店で買い直したケンヴィに、一緒に着いて来た孝司が尋ねる。
すると、ケンヴィは思い掛けない話をし始めた。
「……これはずっと前の話になるんだが、俺の仲間が気になる話をしていたんだ。何でも、素手で物凄く強い男が自分の泊まっている宿屋に現れて、一緒に盗賊退治に行ったらしい。そしてその後、その男は魔法陣に飲み込まれて姿を消したそうだ」
「それで?」
「その時に現れたと言う男も、確か御前と同じ様な響きの名前だった記憶がある。俺の仲間が言っていた名前は……確か栗山とか言ったか。世界中で傭兵として活動していたと言う話もその時に一緒に聞いた。もしかして、御前もそうなのか?」
ケンヴィの口から出て来た名前を聞いた孝司は、その瞬間この世界に来てからあり得ない位に目を見開く事になった。




