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第9話

「ちっ、違う僕は、あの・・・。」

何と説明したらいいのだろう、栗山の視線が痛いほどラスタンの胸を締め付ける。

30万の報酬を欲しいが為に彼の力を借り、更に自分よりも絶対的に強い相手に何を言っているのか。

「ご、ごめんなさい何でもないです。」

両手を左右に素早く振ってラスタンは栗山から2歩、3歩と後ずさっていく。


「おっ、おう・・・・まぁ、別にしようがしまいが俺はどっちでも良いけどよ・・・・・」

いきなり突拍子もない事を言い出し、そしていきなり否定をし出したラスタンを栗山は不思議に思いながらも改めて魔法陣に向き直る。

「あーそうそう、この30万を山分けした奴なんだけど、俺要らないや」

だって、何だかもう元の世界に帰れそうだからさ・・・・と栗山はさわやかに理由を述べつつ金の入った袋を渡す。


しかし栗山が魔法陣へと近付いた瞬間、物凄い殺気が横から膨れ上がって来て咄嗟に栗山は横っ飛びで床を転がった!!

「すまないな、でもこれしかあんたを引き止める術が無かったようでね。」

ロングソードを栗山に向けたラスタンが真っ直ぐ彼の瞳を見つめる。

その目はいつもの平穏な温かみのあるラスタンの瞳とは違い、鋭い眼光を栗山へと向けていた。

左手で軽く胸を叩きながら、ラスタンはほくそ笑む。

「一応戦うのはこの体なんだが、それでも俺の中には受けた衝撃やあんたに与えた力は感じられる・・・だからもう一度言う、手合わせ願おうか。」


「な、何だいきなり!?」

ラスタンがロングソードを抜いて斬りかかって来た。

その事実を頭で理解できないまま、栗山はロングソードを向けて来るラスタンの口調が変わっている事に気づく。

(何だ、この違和感は・・・・・?)

もしかしたらさっきの不安感の正体はこれだったのか、と考えながら栗山は斬りかかって来るラスタンの動きがまるで違う事に驚きを隠せなかった。

「なんだその動きは・・・、賊共と戦っていた時のようにもっとちゃんとしてくれ。」

腰と頭に手を当てて、ラスタンは深く溜め息をつく。

「悪いが俺には時間が無いんでね、あんたには早く本気になってくれないと困る。」


次の瞬間にラスタンの表情は獲物を駆る獣の様に変わり、栗山へとロングソードの連撃を繰り出す。

左から右へと必死に避ける栗山を気に止めず剣を的確に、栗山の顔目掛けて突き出していく。

(何だ、こいつ・・・!!)

今までとは全く違う。ラスタンはこんな動きをしていなかった。

(もしかしたら・・・ラスタンは二重人格!? いや、誰かに身体を乗っ取られたとか!?)

そんな考えが栗山の頭をよぎるが、このまま避け続けているだけでは何時か限界が来て殺されてしまう。


なのでまずは顔面を狙ってくるロングソードから逃れる為、ボクシングのスウェーテクニックでかわしつつ栗山はラスタンの突き出された腕を取って柔道の背負い投げをかました!

宙に浮いたラスタンは瞬時に体を回転させ、猫の様に美しく着地すると息もつかずに右手に持っていた剣を栗山へと振るう。

紙一重で避けた栗山を見ると、ラスタンは剣を持っている右手を下げて不気味に笑みをこぼした。

「火が付いてきたか?」

付いた埃を散らすように剣を軽く振るい、左手を首に突きつけ栗山を挑発する。

「力をちゃんとぶつけてこいよ、俺はそれが見たいだけだ。」


「火がついたというか、俺はこんな所で死にたくない。傭兵は生き残ってなんぼだからな」

傭兵は金で動く生き物と言えば確かにそうだが、それ以上に生き残って報酬を貰わなければならない。

だけど今は地球に帰る事が1番の報酬。それを前にして死ぬ訳には行かない。例えそれがラスタンが相手でも、戦う事に変わりは無い。

「だったら存分に見せてやるよ。傭兵の何でもありの戦い方をよぉ!!」

栗山は相手の出方を窺う事はしない。先手必勝がいつものパターンだったからだ。

叫んだ栗山に闘気よりも殺気に近いものを感じたラスタンは鼻で笑い、右手の剣をしっかりと持ち直した。

栗山が自分へ向かってどのような攻撃を仕掛けてくるか胸を躍らせながらも体勢を整える。


栗山はまずラスタンへと向かって走り出す。そうするとラスタンがロングソードを振ってくるので

それを今度はラスタンの右手をキックする事でガードしつつ軌道を変え、そのままの勢いで飛び回し蹴り。

ラスタンは栗山の足が届かない程度に体をひねり、蹴りを避ける。

体を捻った状態から剣を薙ぎ払おうとしたが、栗山の瞳が自分を見つめている事に気付いてその手を止めた。

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