表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

カニが食べたい

作者: ダイバ

思いつき一発ネタ。

 カニが食べたい。

 思えば突然この世界に転移させられてからカニはおろか貝やエビといった魚介類の類を食べていない。

内地だからだろうか、いいや、内地といえども今いる地方にも自然豊かな山はある。山があるということは当然川もあるわけで、渓流を探ればサワガニの一匹でもいるだろう。

 しかし、転移されて60日余り経過しているにもかかわらず、サワガニやカワエビといった生き物を食べた記憶はないし、他人が食べているところを見たこともない。それどころかそういった生き物の単語すら聞いたことがない。

 どうして言葉が通じるのかは甚だ疑問ではあるのだがそんなことはこの際どうでもよい。

 私はカニが食べたい。食べたいと思った時が吉日だと、とある漫画のキャラクターが言っていたような気もする。よし、カニを食べに行こう。


こうして、私はカニを食べに旅をすることにした。


 まずは情報収集だ、たまにやってくる行商人であれば海岸沿いの町に行くこともあるだろう、カニやエビといった生き物についても知っているかもしれない。

 しかし、こういったときに限って、間の悪いことに行商人は先日町を離れたという話だ。

 私にそう教えてくれたのは近所の肉屋の店主で、どうやら香辛料の買い付けを行商人にしたらしい。

 山で採れるのはシナモンみたいなものぐらいで、胡椒や唐辛子の類はこの地方では取れないというのは私もよく熟知していた。

 肉屋の店主が機嫌よく話を続けてくるので、私はこれ幸いと店主にカニなる生き物を知って言えるかどうか尋ねてみた。

 曰く、甲羅がある。

 曰く、足が何本もある。

 曰く、ハサミをもつ。

 曰く、甲羅を外して身のぎっしり詰まった足やハサミを主に食す。

 

 私の説明を聞いて最初は怪訝な顔をしていた店主であったが、どうやら心当たりがあるようで、カニを準備してくれると言ってくれた。

 なんだ、やはりサワガニが存在するのか、よかった。これでカニが食べられると私はその日は詫びに肉を200gほど購入して家に帰った。


 数日後、大通りを歩いていると、私を呼び止める声が聞こえた。誰かと思って声のする法を見れば、肉屋の店主ではないか。

 もしやと思って近づいていくと、私の言っていた生き物が手に入ったらしい。

 ありがたい!

 ぜひ購入したいと言うと、店主は密閉された木箱をポンと渡してくれた。

 彼の話によると、祖父の代では普通に食べていたらしい。

 なぜその食文化が廃れたか私には疑問だったが、何も言うまい。こうしてカニを手に入れることができたのだ。木箱の重さを差し引いても2kg程度あるだろうか。私はお代を支払い、家に帰ることにした。





 サソリだった。





 いざ調理しようと家に帰ってすぐさま木箱を開けたのだが、それこそタラバガニに匹敵するサイズのサソリが木箱の中に入っていた。丁寧なことに毒のあるであろう尻尾を飛ばされており、店主の心遣いが見えた。


 だが・・・・サソリだ。これはサソリだよ店主。



 なぜカニがサソリに変わったのか。私は自分が店主に説明した内容を思い返していた・


 曰く、甲羅がある。

 曰く、足が何本もある。

 曰く、ハサミをもつ。

 曰く、甲羅を外して身のぎっしり詰まった足やハサミを主に食す。


 あ、水源に住むって言ってないわ。そりゃ勘違いするよね。


 いや、だがしかし、サソリを食うのか?サソリだぞ?

 ・・・・そういえば、祖父の代までは食べていたと言っていたな。

 なるほど、日本でいうところのイナゴの佃煮とかそういう類なんだろうか。


 サソリの購入額は意外と高額で、それこそ上等な牛肉が200gは買えるぐらいの値段だったので、私は仕方がなくサソリの足をナイフでカニの足を取るようにカットして、それをお湯の入った鍋へ突っ込んだ。




 ・・・・悲しいことにサソリはタラバガニと勘違いするほど美味かった


 だが所詮はタラバガニ、奴は分類上ではカニではなくヤドカリ。違うのだ。

 生まれ九州佐賀の私としてはカニといえば最上位のワタリガニを食べたいのだと!声を大にして言いたい。

 故郷で食べた小さなワタリガニの味噌汁の味を思い出して私は泣きながらサソリを食べた。偽カニとわかっていても、久しく食べていない味に魅了され、結局一晩でサソリ1匹食べきってしまった。ご馳走様でした。



次回に続かない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ