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「決して混ざらない黒」「月面クーデター」
「決して混ざらない黒」
ジプシー民話集には
新しい言語が
書いてある
果実入りチョコレートには
使いかけの合成のりが
入ってる
聞こえてくる音楽には
音のない誰かが
混ざって来る
コンビニの縛られた雑誌には
定価通りのおばさんが
忘れられてる
月も見えない夜の闇の中には
決して混ざらない黒が
混ざってる
「月面クーデター」
誰も起きてない夜に
あのPL花火を見た
こっそり屋上へ登った
雑居ビルから
世界で一番
長い 長い 長い 梯子を登って
満月の端っこにしがみついて
明るいばかりの
世の中に
太った胸の ひくさとか
痩せすぎ小指の なみだとか
黙ったままの うらみとか
月の鼻梁につま先立ちで
暗いばかりの
世の中に
笑うモグラの えくぼとか
睨むホタルの 艶眼とか
泣いたカエルの 睫毛とか
宇宙最低の
長い詩を詩って 詩って 詩って