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そうだったのだ
こんなに多くの楽器が
音を
互いを
主張せず
引き立て合い
主題を
はっきりと盛り立てている
全体の旋律は
淀みなく流れ
一つ一つの演奏は
音譜に溶けている
指揮は
うねりを導き
そして
圧倒的な存在を
押し出してくるテーマ
観衆は
余韻の中で
賞賛と拍手さえ忘れ
楽器たちは
まだ終わらない
響きを
残したままに
ただ去っていく
そうだったのだ
饒舌な言葉たちが
感情を
意味を
主張せず
むしろ何も持たず
主張など
うっすらとも持たず
全体のリズムは
淀みなく流れ
一つ一つの言葉は
空白に溶けている
彼方からの着想は
文字を産み
そして
脳髄を掴んで千切り投げる
びりびりとする痺れ
見るものは
純白の闇の中で
餓えの面影すら忘れ
連想は
珠になった
膨大な数の雫を
必死の勢いで
貪りだす




