第2章 94話
「本当なら・・・この祭りでアレスも見送ってやるはずだったんだけどね!」
「そういえば、アレスの奴、謹慎処分だっけ?」
「ああ、そうだよ!」
「家から出たらいけないのか?」
「そうだね、ボトル宰相の事だから、もし、外に出ていたら、それを口実に重罰を加えてくるだろうね・・・」
「じゃあ、アレスはこの祭りに参加できないのかよ?」
勝彦の問いにジャネイロはうつむく。
「ああ・・・・もうすでにアレスの屋敷の周りには、ボトル宰相殿の見張りがついていると思うよ・・・・」
(くそ、またあいつか!)
勝彦は、昨日からボトルという男の事が腹立って仕方がなかった。
「ホント、ボトルって何者なんだ?あいつ!?」
「昨日も言ったけど、この国の怪物さ!自分の言う事を聞く人物だけをそばに置いて、反対するものを次々と殺していくんだ!だから、家臣達はみんな、兄上の・・・いや、皇帝陛下の言う事よりも、ボトルの意見を聞くようになってしまったんだ・・・」
「でもさ、お前のお兄さんは皇帝なんだろ?皇帝の方が偉いんじゃないのかよ?」
「うん、そうだよ・・・でもすべての権力は宰相のボトルに握られて、兄上は何もできないんだ。兄上は・・・・ただのお飾りなんだよ!」
ジャネイロは悔しそうに言って首を振る。
昨日の会議から帰る時、ジャネイロは物凄く悔しそうにしていた。まさに、あの時の様な悔しい顔をまたしているのだった。
「・・・・何でそんな事になったんだ?」
「もともと兄上は皇帝になれるはずじゃなかったんだ。皇位継承権も6位だったしね。でも、一族はみんな、ボトルを恐れて皇帝になりたがらなかった。そこで、ボトルに目をつけられたのが兄上なんだ。兄上は心優しくて大人しかったから、ボトルには操りやすいと思われたんだよ・・・」
「たしかに・・・優しそうな人だったよな・・・」
むしろ、アレスのお兄さんの方が迫力があったくらいである。
それに、皇帝陛下は一度も喋っていなかった。会議ではほとんどボトルが喋って決断していた。
「兄上も・・・・最初は皇帝としてボトルに意見を言っていたし、兄上に協力する家臣もいたんだ。でも、少しずつ兄上の身の回りの人間が次々と死んでいったんだ・・・」
「まじで・・・!?それは末恐ろしいな・・・」
勝彦はジャネイロの話を聞いて身震いがしていた。
確かに、昨日のアレスによる反抗は絶対絶命の大ピンチだったのかもしれない。勝彦は、今更ながらボトルの恐ろしさが身に染みて感じていた。
(アレスの奴・・・・よく無事で済んだな・・・・)
「それから、兄上は何も喋らなくなったんだよ。多分・・・自分が喋る事で誰かが死んでしまうと思っているんだと思う・・・くうっ!!あんなに優しかった兄上だったのに!」
ジャネイロは自分が座っているベンチに「ドスン」と拳を叩きつけた。そして、怒りで打ち震えていた。
「ジャネイロ・・・・」
勝彦は、悔しさに打ち震えるジャネイロを見て、すぐに声を掛ける事が出来なかった。ジャネイロのお兄さんに対する気持ちが痛いほど伝わったからである。
そして、勝彦は一呼吸置いて、ジャネイロに話しかける。
「・・・・なあ、アレスの奴・・・なんで、あんなに反抗したんだろうな?そんな奴が相手なら下手したら殺されていたんじゃないのか?」
実際、あの時の現場の緊張感は半端じゃなかった。
あの時の勝彦は、それほど危険な奴と思っていなかったので、憎たらしい奴だな位しか思っていなかったが、冷静に考えてみるとアレスはあの場で殺されていてもおかしくなかった。
勝彦はずっと考えていた。
何故、アレスはあんなに反抗したのか?
もしかしてアレスは、殺されてもいい覚悟だったじゃないのかと思っていたのだ。
一昨日の食事会の時、アレスは怒りにまかせて、机を叩きつけるくらい怒りに打ち震えていた。
もしかしたら、あの時からボトルに反抗する覚悟は出来ていたのかもしれない。
そして、ジャネイロがその事について話そうとする。
「うん・・・きっと殺されていただろうね。でも・・・僕もわからないんだ。何故アレスがあそこまで・・・」
と、ジャネイロがアレスの事について話そうとするとクー太がやってきた。
「ジャネイロさん!」
(クー太の奴さっきまで寝ていたはずなのに?いつの間に起きたんだ?)
ここで、一気に緊張した空気が元に戻った。
すると、クー太とネコウネが勝彦とジャネイロが居る小屋の中に入って来る。
「やあおはよう、クー太君!ネコウネ!」
「おはようございますジャネイロ様・・・」
「おはようございますジャネイロさん!」
二人はジャネイロに返事をする。そして、勝彦も二人に挨拶をする。
「おはよう!クー太、ネコウネさん!」
「・・・・・・・」
「・・・・おはよう・・・ございます・・・」
だが返事をしてくれたのはネコウネだけだった。クー太は勝彦を見てぷいっと明後日の方を向いた。クー太は露骨に勝彦を無視する。
(そういえば、顔に落書きして来たんだっけ・・・・怒っているのか?)
「クー太君!」
だが、クー太はプイッと別方向を向く。
「クー太ちゃん!」
クー太は断固して返事をしない。
(あっちゃー・・・完全に怒らせちゃったか・・・)
「ねえねえ、怒っているの?あれは、ほんのちょっとした出来心っていうか、茶目な悪戯っていうか・・・・そのごめんね・・・・・」
勝彦は手を合わせて謝る。それでもクー太は返事をしてくれない。
「勝彦、どうかしたのか?」
「いや、どうもちょっと怒らせたみたいで・・・あははは・・・・」
すると、ジャネイロはそんな二人を見ていきなり笑い出す。
「ぷはっはははは!君達は本当に仲がいいな!ケンカするほど仲がいいってホントの事だね!」
「笑い事じゃないですよジャネイロさん!勝彦君ってば酷いんですよ!」
「いやいや、ホント羨ましいよ!君達のように仲がいいのは!」
「そうそう、あれはほんの愛情表現ていうか・・・・大好きなクー太の事を思ってつい出来心で・・・・・」
勝彦は必死でクー太に言い訳をする。すると、ようやくクー太は反応した。
「愛情・・・・?」
クー太はそーっと勝彦の方を向く。
「そうそう!クー太の事を愛しているから!宇宙で一番愛しているから出来る事だよ!これが他人だったら絶対していない!ホントだって!」
「うーん・・・・・わかった・・・・じゃあ許してあげる・・・・」
「ホントか?いやー悪かったよ!もう二度としないから!」
「もう!次は許しませんからね!」
「ごめん、ごめんって!」
ようやくクー太の機嫌が元に戻った。それ見て勝彦は一安心した。
(もう二度と・・・・悪戯するのはやめとこう・・・・)
と、勝彦は深く心の中で思っていた。




