第2章 91話
「ちょっとまった!!私は納得いきません!」
ここで、一人・・・・反対の声を挙げている。
よく見てみると、それはアレスだった。
「元々反乱が起きたきっかけは何だったのですか?それは宰相殿の賄賂事件が発覚したのが原因じゃないのですか?その後始末に、何故、我々アルゼン家が出ていかなければいけないのですか!?」
と、アレスはボトル宰相に向かって食って掛かった。
その姿を見て、勝彦はヒヤヒヤしていた。
あれだけ多くの人やアルゴが恐れている人物に向かって、食ってかかってもいいのか心配になったのだ。
(おいおい、大事丈夫なのか?堂々と宰相を批判しても・・・)
当然、集まった文官や武官達もざわついている。
すると、隣にいたあの威圧感たっぷりのグランデ将軍がアレスを叱りつける。
「黙れ!アレス!」
グランデ将軍の怒号が部屋全体に響き渡り、辺りはシーンと静まり返った。アレス自身も、怒鳴りつけられてたじろいでいる。
でも・・・勝彦にはグランデ将軍の別の真意が見えていた。
グランデ将軍の態度は、どこかアレスを守るために怒っているように思えたのである。
そして、グランデ将軍は一歩前に出て、ボトル宰相の前に行き、跪いて謝罪する。
「私の弟が大変失礼しました。鎮圧軍の件お引き受けいたしますので、この度は、なにとぞ寛大処置お願いします」
グランデ将軍は黙々と弁明し、ボトルに頭を下げる。その態度は非常に低姿勢で、ボトル宰相に服従している感じである。
「ふぉふぉふぉ、グランデ将軍の弟君は若いですな。しかし、若いゆえ、このように間違いを犯す。帝国の宰相である私に、暴言を吐いたからには何か処罰を与えねばなりませんな!」
ボトル宰相はジロリとアレスを睨み付ける。
だが、アレスも負けていなかった。ボトルの話を聞いてすぐに反論した。
「ふざけるな!俺は本当の事を言っただけだろ!」
「黙れと言っただろうが!アレス!」
ここでまた、グランデ将軍は跪きながらアレスに怒鳴りつける。さっきと同じようにあたりは静かになってシーンとなる。
そして、アレスは納得いかない顔をして、ぶすっとしていた。
「このたびの失礼、重ね重ね、お詫びいたす・・・」
グランデ将軍はさらに深く頭を下げて、もう一度宰相に謝罪する。ボトルは、それを見て上機嫌で見下ろした。
「ふぉふぉふぉふぉ、さて、どうしたものかな?」
一気に修羅場になり、勝彦は驚いて口をポカーンと開けてその場を見ていた。全く話についていけなかったが、アレスがとにかくヤバいという事だけは何となく分かっていた。
(おいおい、大丈夫か?このままではアレスの奴・・・処分されるんじゃないのか?)
グランデ将軍は必死になって謝罪する。
だが、それでもアレスは態度を改めていない。
その姿から、どうやらアレスは処分される事を覚悟して言っているみたいだった。
あまりの緊張で、勝彦も息が止まる。
ふと、気が付くとクー太は勝彦の手を握って来る。
勝彦の横で、クー太も心配そうに眺めてる。
すると、横に立っていたジャネイロは手を上げて喋り出した。
「宰相殿、アレス・・・いや、アイレス・アルゼン殿はこのたびの鎮圧軍に出陣する予定です。出陣する前から味方を罰せれば敵に利するだけです。どうか、この場は寛大な処置を致せば、存分な働きをすると思われますが!?」
と、黙って聞いていたジャネイロが突然ボトル宰相に意見を述べる。
ついさっきまで、「今日こそは言いたい事を言ってやる!」と言っていた姿は無く、下手に出て丁寧に意見を述べる。
これでは、ジャネイロとアレスの立場は逆である。
「ふむ、これはこれはジャネイロ殿が発言するとは珍しいですな。ご親友であるアレス殿を庇いたいのですかな?しかし、いくら皇帝陛下の弟君でも、私情に駆られての発言は関心しませんな!」
「いえ、そのような事はありません!私はただ、反乱軍の討伐を成功させたいのです。その為には、グランデ将軍の力添えが必要だと思っています。ここで、アレス殿を処罰すれば、反乱軍討伐に影響が出ると思ったからです!」
と、あくまでジャネイロは、相変わらず丁寧にボトルに訴える。
アルゴと話していた時とは大違である。
不思議に思った勝彦は、タイミングを見計らってこっそりジャネイロに聞いてみる。
「おい、言いたいこと言うんじゃなかったのかよ?」
勝彦は腕に肘をコンコンと当てて小声でジャネイロに聞く。
「言いたい事はもうアレスが言ってくれたよ!それよりも、アレスの命が危ない。ここは彼の援護した方がいい・・・!」
と、小声でジャネイロは教えてくれる。
恐らく、それだけアレスの身が危険だということなのだろう。
そして、勝彦はジャネイロの事を意外と冷静な奴だなと思っていた。
ジャネイロは、言葉では勇ましいことを言っていたが、実際はちゃんと考えて行動している。
初めて会った時も勝彦に敵意を示してきていたが、すぐに謝罪をして仲良くなった。
確かにジャネイロは、状況をしっかり判断して行動の出来る尊敬できる人物なのかもしれない。
勝彦は、横でジャネイロを見ていて感心していた。
「ふむ、なるほどな・・・・確かにこれから戦に行くのに、味方を罰するのは良くないな・・・・」
ジャネイロの丁寧な説明を聞いて、ボトルは納得する。
そして、ジャネイロに対する敵意は完全に無くなり、態度を改めて考え込んでいた。
すると、ここでグランデ将軍が追い打ちをかけるようにボトルに進言する。
「もし、お許しいただけるのでしたら、存分な戦果を挙げてごらんにいれましょう!」
それを聞いてボトルは表情が変わった。どうやら、考えがまとまった様である。
「よし、わかった!アイレス・アルゼンには、出陣の日まで自宅謹慎を言い渡す。出陣の日まで己の言動を反省せよ!そして、反乱軍を打てばその罪を許す事にする!良いな!?」
「はは、必ずや成果を上げてみせます!」
そう言ってランデ将軍は丁寧に返事をした。
「では、これにて朝議を終了する!」




