第2章 90話
それから勝彦達は、宮殿内部の一番奥にある大きな部屋にやってきた。
その部屋は圧倒されるほどの広さで、壁や柱には大きな彫刻が飾られていて内部は木造で作られてる。
部屋の中央には白いカーペットの様な布が敷かれていて、両脇には多くの人達が並んでいる。
さらにその先には一段高くなった所に皇帝の玉座が置いてあるのだった。
「なんだここ?ずいぶん人が集まっているなあー!」
辺りを見回してみると、様々な人が来ていた。
「今日は、大事な会議があるからね、各地から有力者達が集まっているんだよ」
と、そうジャネイロは教えてくれる。
見渡してみると、色とりどりの服を着た人達がずらっと両側に並んでいる。
文官らしき簡素な服を着た人や、武官らしき鎧を着た人、それに高官らしき豪華な服を着た人など、それぞれ身分にしたがって分かれて集まっていた。
すると、勝彦が物珍しそうに眺めていると、鎧を着た武官が集まっている集団の中に見覚えがある人物がいた。
「おい、あそこにアレスがいるぞ!おーい・・・」
と、勝彦は手を振ってアレスを呼ぼうとした瞬間、すぐにジャネイロに止められた。
「しー!静かに!」
そして、アレスの方も勝彦を見て気づいたのだが、すぐに顔を背けられる。
「な、なんだよ、あいつ!」
勝彦は、アレスに顔を背けられすぐに不満そうにジャネイロに訴えた。
「駄目だってば!ここでは!」
と、ジャネイロは必死になって勝彦を止める。
「何でだよ、あそこにアレスがいるのに会いに行かないのかよ?」
「無理だよ・・・言っただろ、僕はアレスのお兄さんに嫌われているって!」
(ん?つまりそのお兄さんがここに居るのか?)
そう思って勝彦は、アレスの隣を見てみる。すると、アレスの隣には一際立派な姿をした人がいる。
その人はかなり雰囲気のある人で、かなりの圧迫感を感じる人だった。
「アレスのお兄さんって・・・あのアレスの隣にいる人がか・・・?」
「ああ、そうだよ・・・あの人がグランデ将軍だよ!」
「へー、あの人が・・・」
(じゃあ、あの人がアレスとシンシアのお兄さんで、カタリーナさんの旦那さんか・・・なんだかすごそうな人だな・・・)
勝彦には何だか分からないが、グランデ将軍が居る所からものすごい覇気を感じた。これまでの人生で感じた事のない恐怖である。
目をつぶっていても、あそこから流れくる覇気は恐ろしく感じてしまう。
さっきまで、アレスに声を掛けようと思っていた気持ちはあっという間に無くなって、明らかにほかの場所とは違う雰囲気が流れている。
その、とてつもない覇気に、勝彦は恐れを感じていたのだった。
また、勝彦はグランデ将軍から、何か心の中に秘めた覚悟みたいなものも感じていた。
それは、自分の命を失っても、やり遂げなければならいといった覚悟の様な気迫である。
勝彦は何故、そんな事を感じたのか自分でも分からなかったが、地球を救う為に覚悟を背負った自分と同じ気概みたいなものを感じたのかも知れない。
(俺には分かる・・・・地球の運命を背負ってきた俺に似た、何か大事な覚悟を秘めているような気がする・・)
勝彦はそう思いながら、グランデ将軍を眺めていた。
すると、部屋の大きな扉が開き文官らしき人が大声を上げる。
「皇帝陛下のおなーりー!」
謁見の間に集まっていた人々の間に緊張が走る。
さっきまで気楽に、各人それぞれ喋っていた声が一気に聞こえなくなってしまった。
そして、誰一人喋らず、ただ黙々と部屋の左右に分かれてみんな跪いた。
一瞬、勝彦とクー太もどうすればいいのか分らなかったが、ジャネイロのやっていることを真似して跪く。
やがて、中央部分にある白いカーペットに、豪華な派手な服をした皇帝陛下が現れる。皇帝陛下は左右に跪いている人達の間を悠々自適に歩いていく。
(この人が、ジャネイロのお兄さん・・・)
今、勝彦が跪いている目の前を、皇帝陛下がゆっくり歩いていく。周りの人間も、神妙な面持ちで跪いている。
だが、ここで勝彦は、頭を下げている中でも少し違和感を感じていた。
(な、なんでだろう・・・)
目の前を歩いていく皇帝陛下からは、全く威厳を感じなかったからだ。
今さっき見たグランデ将軍からは、恐怖すら感じる威厳を感じたのに、この皇帝陛下からは何の覇気も感じないのだ。
目の前を通り過ぎてゆく皇帝陛下は、豪華な服を着た、ただの気の弱そうなお兄さんである。
(なんでだろう、ジャネイロのお兄さんだからかな・・・・?)
勝彦がそう思っている間に、皇帝陛下は中央の玉座の前まで来るとそこに座った。
そして、傍に居るすごく偉そうな太ったおっさん(初老かかっている)が皆に向かって喋りだす。
「それでは、今日の朝議を始める。今日の朝議は、南東の反乱についてだ。南東で起きた反乱は、全国各地に広がり、帝国の威光は地に落ちている。今こそ軍を派遣し、乱を鎮めるべきである。そこでだ!反乱軍討伐の司令官は、誰にするかだが、私はアルゼン家のグランデ将軍に行ってもらうのがよろしいかと思う、それについて皆の意見を聞きたい!」
勝彦はその男の話を聞いていて、すぐにひらめいた。
今まで話題に上っていた、宰相のボトルとはこいつの事だなと思ったのだ。
それは、教えてもらわなくてもすぐに分かった。
昨日、アレスは自分と兄であるグランデ将軍は宰相のボトルに派遣されてしまうと言っていた。つまり、こいつが言った内容は、昨日アレスが言った内容と一緒である。
顔つきや服装もそうだが、今言った話の内容では、グランデ将軍を反乱軍鎮圧に派遣すると言ったから間違いない。
そして、集まった人達はザワザワ騒ぎだし、色々な声が聞こえて来る。
「おお!!アルゼン家なら安心だ!」
「グランデ将軍ならやってくれるだろう!」
会議に参加している人達から、様々な声が聞こえてくる。
しかも、挙がってくる声はみんなグランデ将軍が鎮圧軍として派遣される事に賛成している声だった。
だが、挙がってくる声は、皆、渋々といった感じである。
それは、明らかに宰相のボトルを恐れて挙げているに過ぎない事は勝彦でも分かった。




