第2章 88話
さらに翌日になって、勝彦とクー太はジャネイロに連れられて、街の中央にある宮殿に来ていた。
ここには、ジャネイロの兄である皇帝陛下が住んでいる。
城門を抜けると中央の広場の周りに建物がいくつもならんでいる。大きな街の中に、小さな街があるかのような壮大な敷地が広がっている。
「でけえー!」
勝彦が宮殿に到着して、最初に出た言葉がこれだった。
さすが街の中央にそびえる宮殿である。その広さとでかさに圧倒されていた。
見渡す限り建物がそびえ立っていて、いくつも棟が見えている。
「ホントだね、建物も凄くきれいだね!」
クー太も感動して周りを見渡していた。
確かにここに立っている建物は、色々な色を使っていて色鮮やかである。どれを見渡しても、京都に立っている建造物よりも立派だった
そして、そこでジャネイロが宮殿について説明をしてくれる。
「アントフェス帝国300年の都だからね、ここの宮殿から街が発展していったんだよ・・・・」
と、途中でジャネイロは説明をやめる。
興奮した勝彦は、完全に観光地気分になってジャネイロの声を聞いていなかった。そんな勝彦を見て、ジャネイロはもっと自由に見物させてやろうと説明を辞めたのだった。
そして、ジャネイロは勝彦達を笑顔で見つめる。
先日の怪我した肩を触り、しきりに気にしながら勝彦達を笑顔で見つめていた。
すると、ここでクー太はジャネイロが肩を痛そうにしているのに気づいた。
「大丈夫ですか?ジャネイロさん・・・・?」
「ありがとう、クー太君。大分よくなってきているよ!現にここまで歩ていて来れているしね」
それに気づいて勝彦もジャネイロに言う。
「なあに、シンシアに頼まれたんだ!何かあれば俺が守ってやるよ!」
「ああ、期待しているよ・・・」
ジャネイロはそう言って笑って見せた。
そして、ようやく勝彦達は中央の大宮殿に向かって歩き出す。
そもそも、今日、勝彦達が何故ここまで来たのかというと、この国の権力者が集まる重大会議に出席する為に来たのである。
ジャネイロは、皇帝の弟として特別待遇でその会議に参加する事になっていて、勝彦はその付き添いでやって来た。
昨日、シンシアにジャネイロを守る様に頼まれてから、勝彦は正式にジャネイロを護衛する事になった。ジャネイロの護衛をする以上そばを離れるわけにはいかない。
なので、勝彦はジャネイロの護衛として皇帝の住む宮殿の中に入る事になったのである。
(今日は大丈夫だよな・・・・)
だが、宮殿の中に入る勝彦は、ジャネイロの事が心配になっていた。
観光気分になって浮かれていたが、昨日のシンシアのジャネイロを心配して怯えている顔が忘れられなかった。シンシアに頼まれたからでもあるけど、勝彦もまた、ジャネイロの事が心配だったのである。
先日、襲って来た奴らは、ジャネイロをただの皇帝の弟としてしか判断していなかった。
勝彦は、ジャネイロの人間性を知って守ってやろうと決めているが、ジャネイロもまた権力者側であり、民衆を虐げることが出来る立場である。
今後も、そういう人が出て来るのは目に見えている。
そして・・・何よりも昨日のアレスの思いつめた感じが勝彦の心の中で引っかかっていた。
昨日、アレスはこの会議でアレスの戦争行きが決定すると言っていた。
本当にアレスは戦争に行かなければならないのだろうか?アレスは何を思って戦場に派遣されるのだろうか?勝彦の不安は募っていた。
それから、不安を感じながらも勝彦は宮殿の奥深くにどんどん入っていく。
途中、クー太はジャネイロを気遣って時々肩を貸してあげている。
勝彦は、そんなクー太をほのぼのした気持ちで見ていた。
(クー太は本当に誰にでも優しいな・・・)
「あ、これはジャネイロ様!」
門番の兵士がジャネイロに挨拶をしてくる。さらに宮殿中央に向かって通路を歩いていると、会う人会う人にジャネイロは挨拶をされていた。さすが、皇帝の弟というだけの地位である。
すると、宮殿奥深くに入ったところで、ジャネイロは誰かを探していた。
辺りを見渡してキョロキョロしている。
やがてジャネイロは、目当ての人物を見つけた瞬間大声を出して呼んだ。
「あ、居た居た!おーい!」
ジャネイロが声を掛けた人物は、初老かかった体の大きい鎧を着た人物で、ジャネイロに呼ばれるとノシノシとこちらにやって来る。
「あ、これはどうもジャネイロ様。お久しぶりです!」
そして、その人物はジャネイロに対して跪いて挨拶をした。
「やあ久しぶり、アルゴ!元気にしていたかい?」
「はい、もちろんです。ジャネイロ様も、私が居ないからっていたずらばかりしていませんでしたか?」
「おいおい、止めてよ!それは小さい時の子供の話だろ!」
「ぐあははははは・・・でも、元気そうで何よりですな!」
「アルゴこそ、兄上の事を、いつもそばで守ってくれてありがとうな・・・」
ジャネイロは、優しい顔でアルゴに語り掛ける。
「いえ、私はカタ・ルー家代々に使える身、当然の事です。ところで、私の娘は元気にやっておりますかな?」
「ああ、元気にやっているよ。彼女にはいつも助けてもらってばかりだよ!」
「それは良かった。娘もジャネイロ様に仕えることが出来て喜んでいる事でしょう!」
「おい、ジャネイロ。この人は・・・」
ここで勝彦はジャネイロに尋ねた。
ジャネイロは、この人物といつまでも話して中々紹介してくれそうもなかったので途中で割り込んだ。このままでは二人で長話をしてしまいそうだったからである。
「あ、紹介するよ!遠い国からやってきた勝彦とクー太だ!」
「どうも・・・」
勝彦はぺこりと頭を下げた。
「初めまして・・・」
クー太も丁寧に挨拶をした。
「これはどうも、ご丁寧に。私は近衛兵士団長ジェンリック・アルゴと言います。以後お見知りおきを」
アルゴ団長は勝彦とクー太に丁寧にあいさつをする。
「アルゴ団長は僕が幼い頃、家に仕えていた御家人だよ。ちなみに、家にネコウネがいただろ?ネコウネは彼女の父親なんだよ!」
「へー、あのメイドさんのお父さんなんだ!」
まじまじと見てみるが、ネコウネと全く似てなかい。
(本当にネコウネの父親なのか・・・・?全然似ていないんだけど・・・・それに、御家人って何だ?この星のメイドさんの呼び名の事か?)
勝彦は不思議に思ってアルゴに尋ねようとした。しかし、アルゴ団長はすぐにネコウネについて尋ねて来る。
「あいつは真面目に働いていますかな?」
「はい、ネコウネさんの料理はすごくおいしかったですよ!」
と、クー太がアルゴに答えた。
「ふぉふぉふぉ、それはよかった!」
クー太とアルゴ団長が話している横で、勝彦は仕方がないのでジャネイロに聞けなかった質問を尋ねる。
「なあ、ジャネイロ、御家人って何だ?」
「ああ、家の秩序を守り、補佐してくれる人の事さ!」
「召使みたいなものか?」
「いやいや、違うよ!アルゴは、僕が生まれる前から家を守ってくれて、勉強を教えてくれて、剣の師匠になってくれた。僕の大事な家族さ!」
「ふーん、護衛みたいなものか?」
「ふぉふぉふぉ、もちろん護衛も私の仕事の内の一つでしたな!」
急にアルゴ団長も会話の中に入って来る。そして、今度は逆にアルゴが勝彦をジロジロと見始めた。




