第2章 79話
「すぐ終わるから勝彦君達は、ここでちょっと待っていて!」
と言って、クー太はそう言ってゼルから降りて、雑草や木につかまりながら、ピラミッドに上り始める。
結局クー太は、何も言わずにピラミッドに上り始めたのだった。すると、アレスが改めて勝彦に尋ねる。
「なあ・・・結局お前達はここに何し来たんだよ?」
と、問い詰めて来る。
勝彦は、いよいよ答えに困ってしまって、どこまで本当の事を言おうか迷った。
(どうしよう・・・・何ていえばいいんだ?)
そもそも、勝彦自身も詳しい話は分からないし、ダークマターの事に関しても知っているのは【長い距離をワープする為に必要なエネルギー】というだけである。
でも、それを言ってもいいのか迷った。下手に言えば、未開惑星に技術を伝えたとかにならないだろうか?ワープとか言っても大丈夫だろうか?
勝彦は迷ったが、ここにクー太がいない以上、自分がジャネイロ達にうまく説明するしかないと思った。
どちらにしても、勝彦だって詳しい話は分からない。ついさっき、勝彦が暑さで参っている時は、クー太が何とかしてくれたし、今度は自分の番だと自分に言い聞かせたのである。
「いやー、実は俺も分からないんだよ!ただ、クー太は遺跡が好きで、そこのパワースポットを調べているんだよ!あははは・・・・」
と、勝彦は何とか笑ってごまかした。今の勝彦にとって、これがごまかせる限界である。
ジャネイロもアレスも、怪しいと思っているようだったが、これ以上勝彦から聞き出せないと思って、不満そうな顔をしてこれ以上何も聞いてこなかった。
そして、気が付くとクー太はアッという間に頂上まで登っていた。
「あいつ・・・ちっこい体なのに意外とやるなー」
と、アレスがクー太を眺めながら言った。確かに小さな体とは思ない早さである。
やはり、クー太も再構築技術で肉体が強化されているのだろうか?
「なあ・・・何が始まるんだ?」
ジャネイロもピラミッドを見上げながら勝彦に質問をする。
「さあ・・・俺にも分からないよ・・・」
三人そろってピラミッドを見上げて、クー太を見守っていた。そして、頂上に着いたクー太は何やらつぶやいている。ジャネイロ達は不思議そうに見ていたが、さすがにここからでは聞き取れない。
だが、勝彦だけはアルテミスと話しているんだろうと思っていた。
そして・・・しばらく眺めていると、クー太はレッドストーンを取り出して、空に掲げた。すると、辺りは赤色に輝いて、そこに赤い太陽があるかのように輝いた。あまりもの輝きに、まぶしさで目をまともに開ける事が出来ない位である。
(一体何が起きたんだ?)
「クー太!」
勝彦がクー太を心配してそう叫ぶと、赤い輝きはいつの間にか消えて無くなっていた。ついさっきまで、クー太の手にあったレッドストーンはきれいさっぱり無くなっていたのである。
「ん?き、消えたのか・・?」
「なんだ?何が起きたんだ?」
驚いたアレスは、隣にいたジャネイロに聞いた。
「俺にもわからない、勝彦!一体何をしたんだ?」
(何度もいうが、そんなの・・・俺も分かるはずがない・・・)
あまりにも衝撃的な光景に、ジャネイロはもう一度勝彦に尋ねて来る。
「いや、俺にも分からないんだ・・・ただ、この周辺はエネルギーが集積していて、それを回収するのが俺達の目的なんだけど・・・」
勝彦も予想していなかった光景に自然と本心が漏れる。
「エネルギー?この何もない、この古い遺跡がか?」
アレスが不思議そうにしている。
「君たちは・・・いったい何者なんだい?」
二人の疑惑は限界に達していた。その口調から、ジャネイロ達の疑問にいつまでも隠せないと勝彦は思った。
実際、仲良くなったジャネイロに、いつまでも隠し事するのがつらくなってきていた。今までの恩の事を考えたら、嘘は良くないと思っていたのである。
「そ、それは・・・」
勝彦はここで何て答えようかと迷った。本当は、もうジャネイロ達に本当の事を喋ってもいいのではないかと思っていた。
でも、自分達は宇宙人で、地球を救う為にこの星までやって来たなんて、一体どう話せばいいか分からなかったからだ。
そして、勝彦は少し考えて、とりあえず宇宙から来た事を伏せて話す事にした。ジャネイロとアレスには、宇宙という概念が無いかもしれないし、詳しい事を言っても理解してもらえないと思ったからである。
「俺達は・・・・故郷を守るために旅をしているんだ。俺達の故郷は今、滅亡寸前の危機が迫っているんだ。故郷を救う為には、世界を旅して、世界中(銀河中)にあるエネルギーを集めないといけないんだよ!」
と、勝彦は真面目な顔してあたりさわりのない理由を二人に述べる。
本当は世界じゃなくて銀河系なのだが、多分それを言ってもわからないだろうと思った。
「エネルギー・・・?なんだそれ!?それを集めなければどうなるんだよ?」
と、興味津々にアレスは聞いてくる。
「そうなったら・・・俺の故郷も・・・家族も・・・友達も・・・仲間もみんな消えてしまうんだ!」
勝彦はうつむいて真剣に答えた。勝彦の頭の中には、父さん、母さん、姉さん、高校の時の友人、真司や孝司などの後輩、アーロン、キャロリン、そして・・・・勝彦達を逃がしてくれた冥王星の人々・・・勝彦は、彼らの事を思い出していた。
「うーん・・・お前が言っている事はさっぱり分からんが、俺達に出来る事があった協力するから頑張れよ!」
と、アレスは真剣に答えてくれる。どうやら、勝彦の思いつめた気持ちは二人に通じた様である。
アレスもジャネイロも、気を使ってくれたみたいで、これ以上多くを聞いてこない。
(こいつら、やっぱりいい奴らだな・・・)
「ああ・・・こうやって、ここに案内してくれただけでも十分ありがたいよ!」
勝彦が、ジャネイロとアレスにそう答えると、タイミング良くクー太がピラミッドから下りてきた。
「お待たせ!勝彦君!」
「もういいのか?」
「うん、あとは一週間くらい待つだけだよ!」
「ふーん・・・なんだ、意外と簡単なんだな・・・」
ピラミッドでの行動は、意外と単純でそっけなかった。てっきり機械とか出して、何か難しい事をするのかな?と、思っていた。
でも、これから一週間、レッドストーンをここに置いておけば自動的にダークエネルギーを吸収してくれるそうである。
「もう終わったなら、飯にしねえ?俺、腹が減って仕方がないんだよ!ここに、シンシアの奴が作ってくれた弁当があるんだ!みんなで、一緒に食おうぜ!」
と、安心したアレスが昼食を食べようと提案してくる。
「そうだね!そうしようか、僕もネコウネが作ってくれたお弁当があるんだよ!」
と言ってジャネイロは、ゼルに括り付けていた荷物を持ち上げた。
どうやらこの二人は、もう勝彦達の詳しい事情に深入りしてくるつもりは無い様である。
勝彦もシンシアとネコウネの手作り弁当キター!と思って、すっかり今の事を忘れてしまった。
よくよく考えてみれば、朝出てからずいぶん時間が経っている。おそらく昼時はもう過ぎている頃だろう。勝彦はお腹が空いてヘロヘロだったのだ。




