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俺とクー太の銀河物語  作者: カツヒコ
第2章 サルガスの悲劇
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第2章 75話

 サルガス第13惑星に着いてから翌日。

 勝彦は、朝早くに目が覚めてしまった。外を見てみると空はまだ薄暗い。勝彦はもう一度寝ようとしたが、全く眠れない。本当はもう少し眠っていたかったが、どうしても目が覚めてしまう。

 やはり、昨日早くに寝てしまったのが原因だろう。勝彦は、もう諦めて起きてしまおうと思った。どちらにしても、ピラミッドに行く約束をしているので、早くに起きなければいけない。今から2度寝をしても、起きられなくなるだけである。

「うう・・・ん・・・・!」

 勝彦はベッドから下りて背伸びをした。これで完全に目が覚めてしまったも同然である。ふと、横のベッドを見るとクー太が幸せそうに寝ていた。

(こいつ・・・よく寝ているな・・・)

 勝彦は、普段ネットやゲームなどをやっていて不規則な生活をしていたので、久々の早起きで新鮮だった。窓枠からは、薄暗い朝日が立ち込めて気持ちのいい朝である。

(まともに朝日を見るなんて何ヶ月振りだろう・・・?)

「それにしても・・・大きな家だな・・・」

 勝彦が寝ていた窓枠から、向うの方までいくつもの建物が見えていた。さすが皇帝を輩出し続ける名門の家である。

 ジャネイロによると、敷地内には15個の建物があって、その中の5つを孤児院として、そして、2つを診療所として貸し出しているそうである。

(ホント・・・一人で住むには広すぎるな、ここは・・・?)

 それに建物の作りも立派で、細やかな装飾が施されている。建築様式は中華風で、朱色を使った色鮮やかな建物が連なっていた。

(見事なもんだな・・・)

 本来、この家はジャネイロのお兄さんが引き継ぐ予定だったが、皇帝に推挙されて家を出て行って以来、ジャネイロが引き継いで守っているのである。

 それから、勝彦はクー太を起こさない様にそっと寝室を出て、建物中央にある庭園にやってきた。

 そこには池があって、休息所みたいな小さな小屋がある。

 勝彦はその中に入って、そこにあったベンチに腰をおろすと、ゆっくりと庭を見ていた。周りには木々が生い茂っていて、池には魚がいる。そこからの景観は最高だった。

「はあー・・・地球からずいぶん遠くまで来たな・・・」

 勝彦はベンチに座って、目をつぶり、ほんの数週間前の高校の卒業式の事を思い出していた。あの時期はまだ桜がつぼみを付けていて、まだ咲そうもなかった。でも、恐らく今頃は、そろそろ咲き始めているか満開の頃である。

(はあー・・・・今年は見れなかったな・・・・)

 さらに勝彦は、先月まで通っていた高校の桜の木を思い出していた。

 勝彦が通っていた高校は、丘の上にあって、周りが緑の木々に覆われている。都会のベッドタウンにしては珍しい緑の多い高校だった。

 特に学校の周辺には、毎年桜の季節になるとピンクの絨毯で色鮮やかになって、近隣住民はもとより、毎年遠方から桜を見に来る観光客が多くいた。

 通学路の桜のトンネルは圧巻で、勝彦は高校3年間、毎年春になると通学路の桜の木々のトンネルを自転車で駆け抜けるのが好きだった。

 本当は、今年も卒業してしまって通学は出来ないが、一度くらい時間を作って見に行こうと決めていた。

「来年か・・・・」

 今年はもう無理だと思い、勝彦は来年地球を救ってから学校の桜を見に行こうと思っていた。

 すると、勝彦の頭の中には、来年の真司と孝司二人の卒業式が頭に浮かんだ。

(そういえば来年は・・・あいつらの事を祝ってやらないといけないな・・・・)

 春と言えば卒業式である。

 卒業式の時には桜は咲いていないが、旅が順調なら、その頃には地球に帰って来ているはずである。自分の卒業式にお祝いに来てくれた二人に恩返しをしようと考えたのだった。

(それにしても・・・・まだ始まったばっかりなのに、色々な事があったな・・・・)

 よくよく考えてみると、ここまで多くの困難にぶち当たっている。

 地球を出て、冥王星に行き、アーロンとキャロリンに会って、冥王星を脱出した。そして、ようやくクー太と一緒にこのサルガスまでやって来たのだ。

(これからどうなるんだろう・・・・)

 さらにジャネイロとシンシアに会ってからは、いつの間にかここに滞在する事になって、ひっきりなしに色んな事が起きている。

 しかも、今日はこれから次のワープの為に必要なダークマターを取得しに行く。ここで早起きしたのも、ピラミッドに向かってそれを取得する為である。勝彦が地球を救う為には、まだまだ前途多難である。

「本当に・・・俺は地球を救えるのかな・・・」

 と、ここで勝彦は不安になってぼそりとつぶやいた。

 地球を救うと決意してから、気が休まる時が一日もなかった。常に何かしらのリスクに思い悩んでいる。

 ホント、これからの旅に先が思いやられる・・・。

 すると、ここですっかり忘れていた懐かしい声が勝彦の頭の中に響く。

「勝彦殿ならきっと救えますよ!」

 アルテミスの声が突然頭の中で聞こえた。ジャネイロとシンシアと会った時に話して以来、一度もアルテミスの声を聞いていなかったのでびっくりした。

「うわ!ア、・・・・アルテミス!?聞いていたのか!?」

「私は・・・・銀河の多くの知識を持っています!その・・・・私の予測ですと、勝彦殿は地球を救えるんじゃないかと思っています・・・」

「ほ、ホントか!?」

 勝彦はすぐに聞き返す。だが、すぐに考えが変わり、別の事を質問する。

「というか・・・・お前・・・・喋れたんだな!急に話し掛けてこなくなったから、もう出来ないのかと思っていたぞ!」

 アルテミスはサルガス第13惑星に降りる前、何時でも好きな時に話が出来ると言っていた。もちろん、転送もいつでも出来ると言っていた。

 なのに、何故?この星に着いてからあまり話しかけてこなかったのか?そっちの理由の方が先に知りたかったのだった。

「いえ、勝彦殿が他人との会話中に、私がいきなり喋りかけましたら、勝彦殿が変な人だと思われたらいけないと思ったので、私は話すのを控えていました!」

「へ、そうなのか・・・?」

 それを聞いて勝彦は拍子抜けした。

 そんな人間的な理由で話をしなかったなんて思ってもみなかったからだ。

 てっきり、ルールやシステムなど、物理的要因で話す事が出来ないのだと思っていたからである。

 そして、それを知ってすぐに勝彦は気持ちを切り替え、改めて本題をアルテミスに切り出す。

「・・・で、俺は本当に地球を救えるのか?」

「確実とは言えませんが、何と言いますか・・・ごめんなさい!はっきり言いまして、勘です!」

 と、ここでアルテミスは曖昧な事を言う。

 勝彦はその答えを聞いてがっかりしてしまった。アルテミスが自信もって言うから、何か確信する理由があるのだと思った。でも、アルテミスの何の根拠もない答えに失望した。

「人工知能なのに、勘とかあるのかよ・・・?」

 勝彦は呆れて苦笑いをし、疑問に満ちた声でアルテミスに尋ねる。だが、そんな勝彦にアルテミスはすぐに反論する。

「失礼ですね、人口知能でも、私は、人間以上の思考能力を持っているんですよ!とにかく、私の勘は良く当たるのです!」

 と、珍しくアルテミスは感情的に反論する。

 それでも勝彦は、人工知能に勘なんてあるのかよ、と内心思っていた。

(勘に頼るなんて・・・・おかしな機械だな!)

「それにしても・・・・アルテミスって、やっぱり生きているみたいだな・・・・」

 ここで勝彦は話を変える事にした。これ以上話すと、アルテミスを怒らせてしまいそうである。

 だが、そう思ってアルテミスに話しかけた瞬間である。ハッ、と気づくと、目の前に人の気配がする。目を瞑てアルテミスと話していたのが祟ってしまったのだった。

「お前・・・なに独り言を言っているんだ!?」

「うわ!」

 誰かに話かけられて、勝彦は目を開けて見上げると、目の前には金髪の立派な服を着た男が立っている。

 その男は堂々としていて、とても凛々しい。そこに立っているだけで、勝彦は何とも言えないプレッシャーを感じた。


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