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俺とクー太の銀河物語  作者: カツヒコ
第2章 サルガスの悲劇
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第2章 72話

「ちょうどよかった、アレス、紹介するよ!」

 と、早速ジャネイロは勝彦達をシンシアのお兄さんに紹介しようとする。

だが、シンシアのお兄さんはそれを遮り、自分の用件を先に言った。

「悪い!ジャネ!兄貴が帰ってきそうなんだ!悪いけど、シンシアを先に連れて帰るぞ!」

 そう言ってシンシアに手を差し伸べる。

「え、でも、お兄様はハーンの町に行っていたんじゃ・・・?」

「ああ、急遽、宰相殿に止められてな、もうすでに帰還しているそうだ!さあ、早く乗るんだ!早くしないと兄上が家に到着してしまうぞ!」

「わ、わかったわ!じゃあ、二人共また会いましょうね!」

 そう言って、シンシアのお兄さんは、牛みたいな動物にシンシアを引き上げる。すると、引き上げられたシンシアは、お兄さんの後ろに乗ってお兄さんの服を掴んだ。

「シンシアさん、ここまでありがとうございました!」

 と、クー太は急いでシンシアにお礼を言う。このままでは、シンシア達は、もうすぐにも出発してしまいそうだったからだ。

「じゃあアレス!悪いけど俺達は、お先に失礼する!また明日にでも挨拶に行くよ!」

「わかった!じゃあまた明日な!」

「ああ!」

 そう言って、後ろにシンシアを乗せ、颯爽と帰って行ってしまった。その姿は、本当にどこかの王子様みたいである。

「ジャネイロさん、あの人は一体・・・」

 と、クー太がジャネイロに尋ねる。

「シンシアの真ん中のお兄さんだよ!僕の親友で、シンシアと一緒で幼馴染さ!」

(真ん中のお兄さん・・・・?という事はもう一人上にお兄さんがいるのか?)

 でも、何故シンシアは、お兄さんが帰って来るだけで、あんなに急いで帰ったのだろうか?勝彦はその事が気になっていた。

「なんで、あんなに急いで帰ったんだ?」

 と、ジャネイロに率直に聞いてみる。

「そ、それはその・・・僕はちょっと、シンシアの一番上のお兄さんに嫌われているからね・・・」

 と、ほほをポリポリと頬を掻く。

 ここでようやく勝彦は悟ったのだった。

 森で会った時に、シンシアがお兄さんの事を言って暗くなった理由と、今来たお兄さんに会っても、別に険しい表情をしなかった事の矛盾が今解決された。

「ああ!・・・それで、森の中で会っていたんだね!」

 クー太も思い出したようにジャネイロに尋ねる。

「まあ、それもあるけどね・・・実は・・・あそこにある森の湖は、願いがかなうと言われているんだ。だから、二人で願い事に行っていたのさ・・・・」

 ジャネイロは顔を赤らめて恥ずかしそうに言っている。それを見て勝彦はどんどん不機嫌になった。

(つまり、逢引ってやつか・・・マジでリア充は爆発しろ!)

「何を願いに行ったんですか?」

 と、クー太が勝彦の事なんかそっちのけで、ジャネイロに質問をする。

「僕達の仲を・・・シンシアのお兄さんに認めてもらえますように、ってね・・・あははは!」

 と、ジャネイロは照れ笑いをしていた。

(あははははじゃねーよ!ホントに爆発しろ!)

「ジャネイロさんなら、きっといつか認めてもらえますよ!ね、勝彦君!」

 クー太は、勝彦の方に向かって同意を求めてくる。勝彦はすぐに怒った表情から、何事もなかった様な顔に戻す。

「ま、まあな・・」

 と、勝彦は複雑な表情で答えた。

 これが親しい真司なら『リア充爆発しろ!』とか言っているところである。

 まあ、心の中では言っていたが・・・でも、お世話になった上に、これからお世話になるジャネイロに対して、何とも言えない複雑な気持ちだったのである。

「さあ、僕らも行こうか!」


 その後、勝彦達はジャネイロに連れられて、歩いてジャネイロの家に向かった。

 ジャネイロの家は、大通りを真っ直ぐ行った先の宮殿のすぐ近くにあって、城門からは歩いて15分ほどで着いた。どうやら、ジャネイロは皇帝一族の家系という事で宮殿の近くにあるらしい。

 それに、ジャネイロの家の後ろには皇帝が住んでいる大きな宮殿がそびえていて、この国が栄えている事が見て取れる。

「それにしても・・・ジャネイロの家も馬鹿に広いな!」

 ジャネイロの家も後ろに見えている宮殿に比べたら規模は小さいが、ここも宮殿だと呼ぶにふさわしいくらい大きな家である。。門だけでも、象がくぐれてしまいそうだ。

「うちは代々皇帝を輩出して来た家系だからね、昔からの家を受け継いでいるんだ。今の兄上が34代目だから・・・えーっと、28代、25代、22代、17代、9代、5代目もだから・・・・7人の皇帝を輩出しているんだよ」

 ジャネイロは、指折り数えて歴代皇帝の数を数えて教えてくれた。

「へえー、結構名門なんだな・・・・」

「そんな事ないよ、本当は28代目以降から没落し始めていて、家だけ立派なで、実際はお金の無いただの貧乏貴族さ!」

 そう言うジャネイロを、勝彦は疑問の目で見ていた。

 ジャネイロは、自分の事をただの貧乏貴族だと言う。でも、お兄さんが皇帝陛下なのに、貧乏貴族なはずがない。またいつもの謙遜を言っているんじゃないかと疑ったのだった。

「え、でもお兄さんが皇帝陛下なんだろ!?」

「いやあー兄上はただ皇帝陛下に推挙されただけだからね、なりたくてなれた訳じゃないよ・・・・それに、僕も皇位継承権を放棄して政治権力の無い状態なんだ・・・・」

 と、ジャネイロは落ち込んだ声で、神妙な顔で答える。

 その姿から、とても謙遜して言っているようには見えなかった。

(何か・・・特別な事情があるのかな?)

 勝彦はジャネイロに聞いてみたいと思ったが、ジャネイロの顔を見ているとどうしても聞けなかった。

 すると、ジャネイロが自分の家の門を見上げて、懐かしむ様にお兄さんとの思い出を語る。

「実は・・・・兄上が皇帝になるまでは、ここで一緒に暮らしていたんだよ」

「じゃあ、今は両親とここに住んでいるのか?」

「いや、両親は死んだよ・・・・」

「あ、すまん・・・・」

 勝彦は地雷を踏んでしまったと後悔したが、ジャネイロは特に気にしていなかった。さっきの様な暗い顔はしていない。

「いや、いいよ!僕だけが死別した訳じゃないしね!世の中には、多くの人が親と生き別れているし。それに・・・僕には兄上がいてくれればそれでいいんだ!」

 ジャネイロは笑顔でそう答えた。勝彦は、ジャネイロの兄である皇帝陛下を心の底から尊敬しているんだなと思った。

「そっか・・・・」

「でも・・・今はこの家に僕一人だけで広すぎて困っているんだ!」

「え!?まじで?この家に・・・?」

 門の壁を見渡してみると、100メートル以上先にようやく曲がり角が見えている。しかも壁の向こう側には、大きな建物がいくつも見えている。

 こんな家に一人で住んでいるなんて、勝彦はすごいと思った。だが、ジャネイロはすぐに一人で住んでいる件については、否定する。

「あ、だからシンシアの意見を取り入れて、今は孤児院や診療所として民衆に開放しているんだ!」

 勝彦は、シンシアがジャネイロは民衆に人気があると言っていた事を思い出した。広い自分の家を、民衆の為に孤児院として開放しているんだったら、確かに人気があるのも当然である。

 そして、気が付くと目の前に立っているジャネイロは大きな門の扉を開ける。すると、門の前に多くの子供たちが待ち受けていたのだった。


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