第2章 69話
シンシアは少しクスッと笑った後、勝彦達にゆっくり話し掛ける。
「最初は驚いて、天使様と勘違いしましたけど・・・貴方達は、何か大事な使命を帯びてここまで来たのですね」
「わ、分かるんですか!?」
クー太が驚いてびっくりしていた。もちろん勝彦も驚いて焦っていた。シンシアに自分の心の中で考えている事が、バレてしまったじゃないのかと思ったからだ。
(もしかして、俺達が別の星から来た宇宙人だっていう事が・・・・もうバレているんじゃないのか!?というか・・・今考えている事も・・・・もしかして、バレているんじゃ・・・?)
と、勝彦は恐る恐るシンシアを見る。すると、シンシアも勝彦の方を見てニコリと微笑みかけた。
勝彦は思った。あの顔は何もかも分かっている顔だと・・・。
「よろしければ、私達に力になれる事があれば、力になりますけど?主に、ジャネがね!」
と、シンシアはジャネイロの方を見てニコリと笑う。
シンシアは、協力を申し出てくれたが、それはあくまでジャネイロに振ろうとしていた。
「おい!シンシア!勝手なことを・・・」
ジャネイロは急に振られて戸惑っていた。それはそうだろう、いきなり見ず知らずの勝彦達の面倒を見る様に言って来たのである。普通は、初対面では信用出来るはずがない。
「うふふふふ!いいじゃない。それに、この人達はものすごく遠い所からやって来て、困っているみたいだし、力になってあげましょうよ!本当は・・・私が力になってあげたいのだけど・・・お兄様が・・・」
シンシアはジャネイロに、勝彦達を助ける様に言った後、自分の兄の事を言うと急に落ち込んだ顔をして黙ってしまった。そんな彼女を見て勝彦はどうしただろうと思った。お兄さんと何かあったのかな?と思った。
すると、シンシアの悲しい顔を見たジャネイロが急に態度を改める。
「シンシア・・・わかったよ!元々人助けはいつもやっている事だし、君が信用した人だ!僕に任せてくれよ!」
ジャネイロが急に態度を改めて、勝彦達の面倒を見てくれると言ってくれた。 勝彦は、ジャネイロが本気で言っているのか半信半疑だった。
確かに協力してくれるのは助かる。何も知らないこの星で協力者がいるのは心強い。
でも、それは恋人のシンシアに良いところを見せようと、良い人ぶっているだけかもしれないと思ったからだ。
だがそれと同時に、勝彦は二人を見ているとこのままお世話になってもいいかもしれないと思い始めていた。
ジャネイロとシンシアが笑顔で微笑みあっているのを見ていると、この二人からは悪い感じはしない。これだけ良い人オーラを出している二人なら、信用していいかもしれないと思ったのである。
「本当?ありがとうジャネ!」
シンシアは、ジャネイロに飛びついた。二人は力一杯抱きしめあっている。それを見て勝彦の表情はすぐに曇る。勝彦はまた少しイラッとしていたのだった。
(まったく、さっきから何度もリア充を見せつけやがって!)
別に怒っているわけではなが、何とも言えない気持ちになっていた。だが、それとは別に、力になってくれるなんて好都合だと思っていた。何も知らない土地で、協力者がいるのは良い事である。
「お二人は仲がいいんですね」
クー太がまじまじと話しかける。
「ええ、昔からの幼馴染ですからね!」
「お・・・・幼馴染といえば、真のリア充のみに与えられる真の称号!」
(くー、・・ここにもいた!真司に負けないリア充設定キャラが!)
勝彦は悔しさで一杯だった。今言われた協力してくれるという提案に喜んでいた気持ちなんて、アッという間に吹き飛び、またジャネイロを睨み付けていた。
「リア充・・・・?」
勝彦の発言に、ジャネイロが不思議そうにしている。
「き、気にしないでください!いつもの事なので!」
と、クー太は、目の前の二人に手を振って取り繕う。
だが、相変わらず勝彦はジャネイロを睨み付けている。勝彦は地球に居た頃、こういうモテモテ男とは天敵だった。特に高校時代はリア充男子は童貞男の敵で、この手の男を目の敵にしてきた。
(何だよこいつ・・・・どうも好きになれない・・・)
すると、クー太はチラッと勝彦を見て、それを遮る様に勝彦の前に立って二人に喋りかける。
「あのー、実は僕達は、街の北東にあると言われている、ピラミッドに行きたいんですけど、分かりますか?」
と、ここでクー太は本題を切り出した。
どうやらクー太は、このまま勝彦に喋らしてはいけないと感じた様である。
(そうだった、さすがクー太・・・)
ここで、勝彦はようやく冷静になって自分の使命を改めて思い出す。ジャネイロのリア充振りに、頭に血が上っていたが、協力してくれると言っているなら願っても無い事である。
(そうだよ・・・・俺達は地球を救うために、この星に来ていたんだっけ・・・つい、すっかり忘れてた・・・)
勝彦は、ジャネイロとシンシアの関係を見て、完全にこの星に来た理由を忘れてしまっていた。勝彦は、ついリア充を見ていると我を忘れてしまうのである。
そう勝彦は何気に心の中で反省していると、クー太の質問にシンシアが答えてくれる。
「ピラミッド?それって、大昔に作られたと言われている大きな山ですよね。今からですと、着いても真っ暗で何も見えないですよ!」
「そこは遠いの?」
「はい、ここからでしたら、一度町に戻らないといけませんから、明日の朝一番に行かれてはどうですか?」
と、シンシアは提案してくれる。それに合わせるように、ジャネイロもそうする様に言ってくる。
「シンシアの言うとおりだよ。その方が良いよ。最近、街の外は物騒で盗賊も出る様になったからね。今日は、僕の家に泊まりに来るといいよ。明日、僕がそこまで案内してあげるから!」
そんなに危険なら、お言葉に甘えるほかにない。だが、勝彦は少し気になっていた事があった。
「え!?いいんですか?ぜひお願いします。よかったですね勝彦君!」
クー太は二つ返事で承諾する。
「ああ、でもいいのか?」
勝彦はチラッとジャネイロを見た。別に睨み付けた訳じゃない。むしろ願ってもない申し出である。
でも、さっきまで自分達を警戒していたのに、こんなにすぐに信用してもらって大丈夫なのだろうか?と思っていたのである。
「気にしないでください、私も剣を向けて失礼な事をしましたし、お詫びを兼ねて、泊まって行ってください」
と、ジャネイロは気軽に言ってきた。特に問題はなさそうだ。
(さっきとはえらい変わりようだな・・・)
改めてジャネイロの、シンシアに対する信用を実感した。だが、もう一つ気になっている事があった。
それは気軽にこの星の人と接触してもいいのか?という事である。それを確認する為、勝彦はこっそりクー太に小声で話しかけてみた。
「おい、惑星なんちゃら条約にひっかかるんじゃないのか・・・?」
そう言いながらも勝彦は気づいてしまっていた。もうすでに冥王星を脱出した時点で、自分達は条約を破って追われている身である事を。
元々自分達は、条約なんて守っても仕方がない存在である。でもクー太は、そんことは気にしていなかった様だ。
「丁度いいじゃないですか、どうせ一週間滞在しないといけないんだしね。それに、重大な違反は、勝彦君のように宇宙に連れ出す事や、テクノロジーの移転だから別に滞在するだけなら特に問題はないよ!」
「え、そうなのか・・・?」
クー太と小声で話をしていて、ここで、勝彦は「ハッ!」と気が付いた。ある方向からの目線を感じたのだ。そして、シンシアの方をそっと見てみると、ニコリと笑って微笑みかけていた。
「大丈夫です、私は何も言いませんから・・・」
と、シンシアは笑顔で答えた。
(バレている・・・全部バレているよ、多分・・・)
「あはは、あははは・・・」
勝彦は愛想笑いをしてその場をごまかした。




