第2章 67話
「勝彦殿、後ろの座席にある剣をお持ちください」
到着して立ち上がると、アルテミスは勝彦に剣を持っていくように指示する。
「ん、剣?」
そう言われて、後ろの座席を見ると古めかしい中国風の剣が置いてある。
「はい、万が一という事もあります。護衛用にお持ち下さい!」
その剣を取り、鞘から剣を引っ張り出した。すると剣は金属で出来ていて、光り輝いていた。
「剣って、お前・・・この時代には合っているのかも知れないけど・・・もっと、銃とかの方が良いんじゃないのか?」
「大丈夫です。手元のトリガーを引けば、ショックレーザーが出ます。それに、剣の形はこの時代に合わせたものですから」
「ふーん、こんなんで役に立つのかよ?」
その剣を手に取って握ってみたが、いまいち近代的ではなかった。見た目はほとんど普通の剣だったのである。
(これ・・・俺に扱えるのか?)
「で、クー太には無いのかよ?」
「僕は別のものを持っているよ。それに、僕みたいな子供が剣を持っていたら怪しいでしょ!?」
「まあ・・・そうだな、で、お前は何を持っているんだよ?」
「僕はこれだよ!」
そう言って取り出したものは、携帯電話程度の小さな機械だった。
「なんだそれ!?」
「これはね、ここを押せばエネルギレーザーが出て、相手を気絶させる事が出来るんだ!その他にも、レーザー剣にもなるし、緊急用のアルテミスとの通信機にもなるんだよ」
「おいおい、俺もそっちの方がいいよ!」
どう考えてもそっちの方が、性能がよさそうである。
「勝彦殿、機能としてはそちらの剣も同じですよ!むしろ、剣として自動戦闘ができる点では、勝彦殿のほうが安全ですよ」
「そ、そうなのか・・・?」
勝彦はまじまじと剣を眺めてみる。
(どうみても、見た目は普通の剣なんだけどな・・・)
「まあいいや、それじゃあ行くか!」
そう言って、剣を鞘にしまって、腰にぶら下げた。そして、扉の前に移動する。
「それでは、扉を開きますよ」
小型宇宙船の扉が少しずつ開き、扉が地面に接触した。開いた扉から外の景色が見えている。小型宇宙船は林の中に降り立ったので、見えている外の景色は林の木々が並んでいるのが見えていた。
勝彦は、目の前の扉が開いたので、さっそく外に出てみる事にした。扉がスロープのようになっているので、そのスロープの階段をゆっくり下りていく。
「これがサルガス第13惑星かあ・・・」
大きく息を吸い込んで吐き出した。
ここの空気は日本の街中よりも澄んでいておいしい。辺りの木々の匂いも立ち込めている。
そのまま勝彦は、宇宙船から下り立ち、正面を見ると湖が見えている。その湖は、林で囲まれていて、自然に溢れたほのぼのとした風景が目の前に広がっている。
すると、ここで勝彦の頭の中に、あるフレーズが思い浮かんだ。
「ふふふふふふ・・・、この一歩は、俺にとっては小さな一歩だが、地球人類にとっては・・・・」
と、勝彦はお決まりのアームストロング船長のセリフを言おうとする。だが・・・・その時である。
「え・・・!」
目の前に人がいいるのだ・・・しかも二人いる!?
(ど、どうしよう・・・?)
勝彦は、予想していない出来事が起きて頭が真っ白になっていた。
「お、おい、アルテミス!ひ、人がいるんだけど・・・」
慌ててアルテミスに訴える。だが、アルテミスはそんなはずはないと否定してくる。
「え、そんなはずはないんですが・・・・」
「いや・・・だってそこに・・・・」
間違いなく、そこに男性と女性の二人の人間がいた。
「おかしいですね・・・・宇宙からの監視調査での結果では、5分前に人の反応はなかったはずなんですが・・・」
そうは言っても、現実に勝彦の目の前に人が居る。どれだけ目を凝らしてみても幻覚ではない。
後ろから下りてきたクー太も、その二人を確認してから勝彦の後ろに隠れてしまった。
「ど、どうするの?勝彦君・・・」
クー太が勝彦に尋ねる。でも、勝彦は心の中で「それは俺のセリフだ―!」と思っていた。
(何故俺に聞く!?)
「ど、どうするって、俺に聞かれても・・・・いや、ここは宇宙人慣れしているクー太が何とかしてくれよ!」
と言って、勝彦はクー太を前に出そうとする。
勝彦にとって、ほかの惑星で会う初めての宇宙人である。どう対処すればいいのか分からなかった。
だが・・・それと同時に向こうにいる二人も勝彦達を見て驚いて見ている。向 こうも向こうで、勝彦達と同じで二人で何やら言い合っていた。
ここで勝彦は冷静になり、目の前にいる二人をじっくりと観察してみた。すると、目の前にいる二人は、見た目は白人なのに中華風の東洋系の服を着ている。
確かに事前のアルテミスの情報通りだった。
そして、そのままお互い見つめあって沈黙していると、アルテミスが警戒しながらも声を掛ける様に言ってくる。
「勝彦殿、念のために剣をいつでも出せる準備をしておいてください。そして、会話をしてみてください。おそらく、敵意はないはずですよ」
「何でわかるんだよ!?」
勝彦は、アルテミスの無茶振りに戸惑った。まず、剣を出せる準備と言われても、剣なんて扱った事がない。会話してみろって言われても、言葉が通じるのか分からない。敵意がない無いと言われても、確証はない。
そもそも、何故分かるんだ?と思って勝彦は抗議したい気持ちで一杯だった。だが、目の前に人が居る以上、こんな所で言い争っている場合ではない。
「宇宙船に付いている小型カメラの映像では、脈拍、血圧共に安定しています。おそらく、向こうも敵意はないと感じているはずです」
(本当だろうな・・・?信用してもいいのか?)
それを聞いて勝彦は、とりあえずアルテミスの言う事を信用してみる事にした。
「あの・・・」
勝彦は恐る恐る声を掛ける。そして、アルテミスの言葉を信じて、女性に話し掛けてみた。でも、勝彦の心の中は不安でいっぱいだった。
「あの天使様ですか・・・?」
だが、勝彦よりも先に女性の方が勝彦に話しかけてくる。
「は?天使様・・・?」
それを聞いて、勝彦はまた頭が真っ白になった。そのような言葉を掛けられるなんて思ってもみなかったからだ。
(天使様って・・・何を言っているんだ?)
考えてみたが、全くもって意味不明だった。




