第2章 66話
「そうです。サルガス第13惑星は、冥王星と違って転送妨害装置がない星ですからね。だから比較的自由に転送はできますよ!」
「じゃあ、地上に降りても、食事や着るものに困らないんだな?」
「その辺は大丈夫です。言ってくだされば、出来る限りの事にはお応えします」
「勝彦君、この小型宇宙船にも、ある程度のものは積んでいるから大丈夫だよ!」
クー太も横から安心する様に言ってくれる。地上に降りてからの事は、特に問題はないようだ。
「じゃあ、地上に降りても、何も心配する必要はないんだな・・・」
「はい、そうです。あ、どうやら、もうすぐ大気圏に突入しますね。何かに掴まっていて下さい!」
と、アルテミスが注意すると、宇宙船はどんどん地上に近づいていく。宇宙からの景色は、地球とそっくりである。
あえて言うなら、地球に比べたら、少し青さ加減が薄いかな?と言った感じである。
そして、宇宙船はどんどん地上に近づいていき、外の景色は次第に赤く光り出した。気が付くと、宇宙船は火の玉のように包まれている。炎に包まれた宇宙船は、相変わらず安定しているが、周りの景色は赤く燃えあがっているので、外の景色は全く見えない。
「だ、大丈夫なのか!?」
「重力の摩擦で燃え上がっているだけだよ。耐熱性は十分だから問題ないです」
そう話していると、景色はあっという間にひらけて、赤く燃えなくなっていく。外を見見ると真っ暗である。
「あれ?着いたのか?」
景色が見えず、真っ暗なので、まだ宇宙空間にいるかのような錯覚に陥った。
「そうだよ、地上では夜の所に着いたからね、辺りは真っ暗だけど、下を見てごらん!」
下を見てみると、暗闇の中に陸地がうっすらと見えている。その陸地の中に、一つの光が揺らめいているのが見えた。
その光をよく見てみると、勝彦はいくつもの小さな光が集まっていることに気づいた。どうやらその小さな光は、密集して大きな一つの街明りの様だった。
そして、目線を空に向けると、美しい星空が広がっている。
無数の星の光が、地上を照らしていて、美しい星空と、ゆらめく街明りが、何とも言えない幻想的風景を醸し出していた。
「で、あそこの街に行くのか?」
「いえ、これから行く所は、もうちょっと先に行ったところです。そこは、ここの様に夜ではありません!まだ日が暮れていないはずですから!」
「ふーん、で、それはここから遠いのか?」
「いえ、すぐ着きますよ!この乗り物はUFOですよ。1分で着きます!」
「へ一分・・・?マジで!?」
そう言われて外を眺めていると、景色はどんどん変わっていく。
「おおおおお!はえーーーーー!」
この宇宙船が、ものすごい早さで移動しているのが分かった。外の景色はみるみる変わっていき、気が付くと、地平線から太陽が見えている。辺りを見渡して見ると、もうすでに空は昼間になっていた。
「ハイ、着きましたよ!」
「早や!しかも、この辺りは昼間だぞ!」
空を見上げると、太陽が燦々ンと地上を照らしている。地上には大きな街が見えている。さっき最初に見た夜の街よりも大きな街が見えていたのだった。
「おい、あそこにも街があるぞ!」
どうやら、この辺りは昼間なので、さっきの様な街明かりは見えていない。でも、数多くの家や建物は見えている。まるで巨大な遺跡の様な大きな街である。
「はい、あの町がエポジ大陸にある、アントフェス帝国の首都フェストです。あそこには人口は約50万人の人が住んでいますね」
と、アルテミスが教えてくれる。
「へえー、結構人が住んでいるんだな・・・」
「サルガス第13惑星の、最大の都市ですからね!」
「じゃあ、いよいよ地上に降りるのか・・・俺にとって、地球以外の始めての惑星だな・・・」
勝彦はあの大きな街を見て緊張していた。
勝彦にとっては、地球以外で初めての人が住む惑星である。事前の勉強で、地球人と殆ど変らないという事は知っているが、それでも未知なる出会いに緊張していた。
「地上に下りましたら、街の北西にある、ピラミッドに行ってください。そこがこの星のダークエネルギーの集積ポイントになっています」
「え!?この星にも、ピラミッドがあるのか?」
「はい、地球のエジプトピラミッド程ではないですけど、林の中に、大きなピラミッドがありますね」
と、アルテミスが淡々と教えてくれる。
「おいおい、そんなところに勝手に行ってもいいのかよ?」
「ええ、データーによりますと、あまりにも昔に作られたものなので、現地の人は、ただの小山程度にしか思っていません!」
「ふーん、そういえば俺が子供の頃遊んでいた公園も、たしか古墳だったよな・・・まあ、そんな感じか!」
「うん、僕も覚えているよ!そこによく一緒に散歩に行ったよね!」
「ああ、そうだな・・・お前も好きだった所だよな!」
「うん、また行きたいな・・・」
勝彦はクー太が犬だった時代を思い出した。確かにその古墳は、クー太が犬だった頃によく散歩のコースに入っていた所である。
クー太は古墳の林を走るのが大好きで、勝彦とクー太は一緒になって走っていたのを思い出した。
「ああ・・・行けばいいさ、地球に帰って来た時にな!」
と、勝彦はクー太を見つめた。
「う、うん・・・」
クー太も見つめ返してくる。ここで勝彦はすぐに目を逸らした。クー太の純粋な目を見ていると、何故だか変な感情が沸き起こったからである。
「・・・そ、そういえばさ!そこに行って何をするんだっけ?」
「う、うん!レッドストーンを、ピラミッドの集積ポイントに置いて、ダークエネルギーを吸収するんだ!」
「そうです!おそらく、一週間前後もあれば、完了出来ると思いますよ」
と、アルテミスも続いて教えてくれる。
「一週間か、結構長いな・・・」
こうしている間にも彗星が地球に迫って来ている。しかも、ツキタカ達の追手も迫って来ている。
出来るだけ早くシンピ星に向かわなければいけないのに、一週間もこの星に長居して大丈夫なのか心配になった。
(ホントに、ここで長居しても大丈夫なのか・・・?でも・・・そんな事、俺が心配しなくてもアルテミスやクー太の方が良くわかっているか・・・・)
そして、小型宇宙船は、街上空を横切ったあと、北部の郊外の森の中に降り立った。
そこは、森の中でも少し開けたところにあって、近くに湖がある。勝彦とクー太は、いよいよサルガス第13惑星に到着したのだった。




