第2章 63話
勝彦とクー太は今、サルガス第13惑星に順調に向かっていた。今の所、ツキタカや冥王星からの追っても来ず、特に問題なく航行している。地球から冥王星に向かった時の様な、のんびりとした時間がずっと続いていた。
アルテミスは、地球の時と同じで、恒星系内での短距離ワープは行わず、光速航行でサルガス第13惑星に向かっている。もちろんそれは恒星系内の重力磁場に影響を与えない為と、サルガス恒星系内の管理局に発見されない為である。
ここで無理にワープなどして、わざわざ目立ってしまい、発見されでもしたら目も当てられない。それでは何の為に、危険を冒してワープをして来たのか分からない。
勝彦とクー太は、このサルガス恒星系に来て、睡眠を取った後、映像スクリーンでアルテミスの講義を聞いて勉強をしていた。それは、これから向かうサルガス第13惑星の事を知る為である。
これから向かう星の事を、少しでも知っておかなければ、いざという時に対処出来ないかもしれない。文化や習慣を知らずに異星人と接触すれば、トラブルの原因になりかねない。
実際、多くの宇宙人は上陸する惑星の事をしっかり勉強してから上陸するそうだ。勝彦は面倒臭いと思いながらも、この数時間でサルガス第13惑星についてある程度の事を勉強していた。
サルガス第13惑星は、地球よりも人が住み始めた期間が長く、温暖で安定した気候と、地震や火山があまり活発ではない星である。重力も地球の98%と酷似しているうえに、自然災害が少なくて空気も水も豊富にある。住んでいる人間も比較的温厚で、争いが少なく平穏な地域が多い。地球人である勝彦にとってものすごく過ごしやすい平和な星である。
だが、それはあくまで地球に比べると少ないだけで、全く戦争や争いが無い星ではない。
実際、世界規模の戦争が十数回行われているし、虐殺や大量殺戮なども時代によっては起きている。地球の時代で言う中世だという事を考えれば、用心するに越したことはない。
また、サルガス第13惑星は、平穏だからこそ地球よりも文化の発達が遅れ、科学技術が発達していなかった。
地球に比べて戦争を頻繁にしていなかったので、科学や文化に刺激が加わらず、平穏な年代が長く続いていたのである。
それ以外にも、勝彦は銀河系の宇宙人に関しての勉強もしていた。特に印象的だったのが、銀河系に住む人々は、環境や科学技術の発展の影響で、様々な特殊能力を持つ人々がいる事である。
人間には様々な能力が秘められていて、地球人は、まだその能力の1%も使いこなせていないらしい。超能力、霊能力、気功、ヒーリングなどは、その現れだそうだ。
とにかく、そんな内容の話がもう3時間も続いて勝彦の頭はパニック寸前になっていた。それはまるで、地球から冥王星に向かう時のような感じだった。
あの時も、勝彦はかなり苦しかった。勝彦は、難しい話が何時間も続くと頭が痛くなってくるのだだった。
そんな風に、サルガスの恒星の事や、サルガス星人、銀河系の人類の勉強をしていると、ようやくここでアルテミスが到着を告げる。
「リリア様、勝彦殿、着きましたよ。ここがサルガス第13惑星です」
「お、やっと着いたか!!もう、脳みそパンクしそうで助かったよ・・・」
何も運動なんてしていないのに、勝彦の身体は疲れきっていた。そして、フラフラになりながら、外のスクリーンを見て見ると、目の前には、地球に酷似した惑星がそこにある。
というか、それはほとんど地球だった。
(青い星で、陸地も見えている。雲もある・・・地球と何が違うんだ?)
「こ、これ・・・地球じゃないのか・・・?」
目の前にある惑星を見つめながらクー太に尋ねる。
「ホントだ!そっくりだね!」
クー太も勝彦の言葉に相槌を打ってくる。だが、アルテミスは二人に地球ではないと否定する。
「いえ、確かに似ていますが、完全に別の星です。よく見てください、陸地が3つの大陸しかないはずですよ!」
そう言われて、勝彦は地球に酷似した星をじっくり観察してみた。すると、確かにこの星には、自分の知っている陸地が見えなかった。角度による見え方ではなくて、明らかに見覚えのない大陸があった。
地球の場合、ユーラシア大陸があって、アメリカ大陸、南アメリカ大陸、、アフリカ大陸、オーストラリア大陸などに分かれている。
でも、どこから見てもこの星の陸地は、自分が知っている形ではなかった。
それに、夜で影になっている部分が真っ暗闇なのだ。地球では、街の明かりが見えていたが、この星は暗い部分の所に街明かりの光が見えていない。
(確かにここは、地球じゃないのかもしれない・・・)
勝彦は目の前に見えている星を見ながらそう思った。
「本当だな・・・確かに陸地が微妙に違うな・・・」
「サルガス第13惑星は、極めて地球に酷似した惑星の内の一つです。見間違えても仕方がありません!ここ以外にも、銀河系には、200個以上の地球酷似惑星が確認されています。勝彦殿にとっては、比較的上陸しやすい惑星かもしれませんね」
「へー、地球そっくりな星がまだまだあるんだな・・・」
「重力、大気、質量などの違いを気にしなければ、銀河系には、数万個以上の人が住める星があるのです」
「そんなにあるんだ・・・銀河系って広いんだな・・・」
勝彦が感心してサルガス第13惑星を見ていると、クー太がこれからの旅について語りだす。
「勝彦君・・・・これから始める旅は、その銀河系に広がる星々に立ち寄る旅になるんだよ。だから、ここはあくまで最初の星で、これからシンピ星に行くまでに、いくつもの星を渡り歩いていかなくちゃいけないんだ・・・」
クー太の話を聞いて、勝彦はより一層気を引き締めた。地球を救う旅の第一歩がこの星から始まると考えたら、やる気がみなぎって来たのだ。
「そうです、少なくとも、シンピ星までに8個から14個くらいの惑星や、恒星を渡り歩く事になると思いますよ」
アルテミスもそう言ってくる。
(そうか・・・これからいくつもの星を渡り歩いて、シンピ星を目指すんだな。もしかして・・・クー太もそうやって地球までやってきたのかな・・・?)
勝彦は、クー太がどんな思いで地球にやって来たのか考えてみた。クー太は2年かけて地球までやってきたと言う。
恐らく、この2年間で多くの星に立ち寄って来たのだろう。そう思うとクー太が並々ならむ覚悟で地球にやって来たことがうかがえる。勝彦は、地球を救う為、時間をかけてやって来てくれたクー太に改めて感謝したのだった。
「星を渡り歩くか・・・・それはやっぱり、ダークマターだっけ!?それを手に入れる為なのか?」
勝彦は、これまでの会話の中で、ダークマターを手に入れれば、より遠くに転送できる事を理解していた。
クー太とアルテミスが星々を渡り歩かないといけないと言ったのは、それを手に入れる為だと分かっていたからだ。
「はい、ダークマターを手に入れる方法は、星によって違いますし、それに、手に入れて使用しても、またすぐに手に入れないと、連続して超長距離空間転移が出来ません!なので、これからの旅は、ダークマターを探す旅になると思いますよ」
やはりダークマターを手に入れれば、地球を救う旅は順調に進むようだ。勝彦は、早くサルガス第13惑星に降り立ち、そのダークマターを手に入れたいと思った。
「ふーん、なるほどね・・・じゃあ、この星が地球を救う旅の、最初の第一歩になるんだな!?よーし!やってやるぞ!で、いつ降りるんだよ?」
旅の目的を聞いて、勝彦はようやくやる気が出てきたのだった。
ここまで、地球を救う為にシンピ星に行くという事はわかっていた。でも、その為には具体的に何をすればいいか分からなかった。ダークマターを手に入れる旅だという事が分かった以上、ぐずぐずしていられない。




