第2章 59話
勝彦は、クー太の決断を早める為にも、自分が理解している現状を言ってみた。
「左回りから行けば、ツキタカの野郎に見つかる。右回りから行けば、銀河帝国という危険な所を通ることになる。はっきり言って、どっちもどっちじゃね!?」
と、勝彦は手を頭にのせてのんきに答えた。勝彦自身の気持ちは、クー太に決断を任せていたから気楽だった。
「わかってはいるんだけど・・・」
勝彦に言われてクー太はさらに考え込む。
勝彦は、クー太の為を思って決断する材料になればと現状を言ったつもりだったが、どうやらますます悩んでいる様である。
どうやら、逆にどっちから行ってもリスクは同じという事がクー太を苦しめている様だった。
ここで勝彦は、別の話をクー太に振る事にする。
関係ないつもりだったが、やっぱり気になっていた事があった。それに、もしかしたらそれが決断の足しになるかなと思って質問してみたのだった。
「そういえばさ、クー太の婚約者だけど・・・言っちゃ悪いけど、あいつかなり気持ち悪いよな!なんであんな奴と婚約したんだ?」
と、勝彦はクー太の婚約者の事が気になって質問した。
最初は、クー太の婚約者と聞いて『このリア充が!』って思っていたけど、あの悲惨な男を見て、今はご愁傷様といった感じである。
なので、これからあんな変な奴が追ってくるんだったら、帝国側の方がいいんじゃないのかと思っていた。
「あんな人、婚約者じゃありません!!」
と、クー太は即座に拒否する。
(それは同感だけど・・・ちょっとひどいな・・・・)
「それに関しては、即決なんだな・・・」
だが、勝彦は気にせずに質問を続ける。
「それにしても・・・クー太って、まだ子供だろ?宇宙人って結婚早いんだな?」
本来、婚約者の相手がツキタカじゃなければ羨ましいリア充展開である。でも、いくらなんでも12歳そこらで婚約者って早すぎる。クー太の気持ちを無視した婚約話に勝彦は少し気になった。
だが、その勝彦の疑問に答えたのはアルテミスだった。
「勝彦殿、リリア様はベルウイング星でも、地球でいう王族なのです。だから、政略結婚が当たり前なんですよ。別に、リリア様の年齢での結婚が普通という訳じゃないんです。むしろ、寿命が長い分、地球人よりも結婚が遅いかもしれません!」
「へーそうなんだ!」
「だから、婚約者じゃないって何度も言ってるじゃないですか!!」
と、クー太は激しく否定した。そんなクー太に勝彦は話を戻す。
「さて、で、クー太はどっち周りで行くつもりなんだ?おそらく右回りじゃないのか?」
話がちょっと脱線したが、ここで勝彦はクー太が右回りで行くと言う事を予想していた。
なぜなら、クー太のツキタカに対する態度を見てそう感じたからである。今までの話の振りは、全て勝彦が予測した結果を確認する為だったのだ。
「え?えーっと・・・なんでそう思うの?」
「そうだな・・・まず、クー太はその婚約者に会いたくないだろ・・・」
と、ここでクー太の顔を見る。クー太はあたふたして反応していた。それを見て、勝彦は少し微笑んでしまった。
さっきまでの会話の中で、クー太がツキタカの事をものすごく嫌っている事は分かった。確かに勝彦もあの手の男は嫌いである。だから、クー太はそんな嫌いな男を避ける為にも、奴に会わない方を選ぶんじゃないかと思ったのだ。
「まあ・・・それは関係ないとしてもだ!」
と、ここで勝彦は話を変える。本当はそれも結論のうちの一つなのだが、先に重要な理由を先に述べておこうと思ったのだ。
「多分・・・・銀河帝国の方が見つかる確率が低いんじゃないのか?」
勝彦は、右回りである帝国側の方が見つかる可能性が低いんじゃないかと予測していた。
すると、その勝彦の答えにアルテミスが即座に質問する。
「勝彦殿、意外と分かっていますね。見直しましたよ。ツキタカ様の事はいいとして、なぜユークレース銀河帝国の方が見つからないと思ったのですか?」
珍しくアルテミスが褒めてくれた。とりあえずアルテミスもツキタカの事を前置きに言ってくる。でも、それと同時に勝彦が何故、そういう考えに至ったかも聞いてくる。
「なあに、左回りの銀河連合方面だったら、見つかった時、すぐ捕まりやすいし、発見されやすいんだろ。銀河帝国の方が、まだ発見されても、連絡される事はないしな。それに、もしもの時は逃げればいいだけの事じゃないのか?」
勝彦は淡々とその理由を説明する。ツキタカの件はあくまで前置きで、本当は帝国側の方なら自由に旅が出来ると思っていた。新銀河連合同盟側の方は、もうすでに連絡がされていて、ツキタカの様に追い回されると思ったからである。
「そうですね、発見されて捕まる確率で言ったら、新銀河連合領域の左回りの方が高いでしょう。でも、捕まった場合、命の危険はユークレース銀河帝国の方が高いですよ」
と、アルテミスは帝国側による命の危険を訴える。
でも、勝彦はそんな事は気にしていなかった。
「でもまあ・・・・どっちにしたって、捕まったら地球を救うチャンスが無くなってしまうんだろ?」
「そうですね、新銀河連合同盟の使節に捕まえれば、恐らく強制帰還になると思います」
アルテミスの話を聞いて、勝彦は少したじろいだ。流石に旅の途中で強制送還は困る。もし、そうなれば地球を救う事が出来ない。だとしたら、どうしてもそれだけは避けなければならない。
勝彦は、すぐに気持ちを切り替えて、クー太の方に向かって言った。勝彦の答えはもうすでに決まっていたのだ。
「俺には、その銀河帝国という所がどういう所なのか分からない・・・けど、発見される確率が低い方がいいだろうし、今さっき、クー太も言ってたじゃん!見つかっても、すぐに戦闘になる事はないって!」
勝彦は、何気にクー太に返事を促す。
勝彦は思った。これだけクー太に決断する材料を与えれば、流石にどちらにするか決断するだろうと。
勝彦の真の目的は、悩んでいるクー太を助けてやろうと、ここまで話を持ってきた事だった。そんな勝彦の気持ちを汲み取って、クー太がようやく決断する。
「・・・そうだね!アルテミス、やっぱり右回りから行こうよ!」
「いいのですか?リリア様・・・」
アルテミスが心配して、念を押す。
「僕も覚悟を決めないといけないからね!確かに帝国は怖いけど、ツキタカさんの事を考えたら、右回りの方がいいと思う!それに、アルテミスも右回りの方がいいと思っているのでしょう?」
「私は・・・リリア様の安全を最優先で考えていますので、本音を言えば、新銀河連合で捕まっても構わないと思っています。でも、リリア様の目的を確実に成功させる為には、やはり右回りの方が確率は高いと思います。それに、追っ手も簡単には追って来れないでしょうからね・・・」
アルテミスの考えは勝彦とまったく同じだった。この旅の成功率を考えれば、多少危険でも、帝国側の方が見つかる可能性が低いはず。
「だったら、そうしようよ!じゃあ右回りからシンピ星に向かおう!」
と、クー太はこぶしを突き上げやる気を出していた。
でも、その横で勝彦は少し気になっていた事があった。
「ふーん、そっか・・・でも、そうは言うけど、結構本気でツキタカの奴が嫌いで、右回りを選んだんじゃないのか?」
と、勝彦は突っ込んで言ってみる。
「もちろん、それもありますよ!」
クー太はこぶしを引き寄せて力説した。よっぽどツキタカの奴が嫌いなんだろう。勝彦は逆にツキタカの事が可哀想に思えてきていた。
「わかりました!それでは長距離空間転移の準備を始めます!」
ようやくアルテミスは、次の目的地に向けて動き出した。シンピ星への進路は右回りで決まり、帝国方面に向かう事になったのだった。
この決断が吉とでるか、凶と出るかは、今はまだわからない。でも、やるからには必ずやり遂げないといけない。
勝彦にはもう・・・残された時間が少ないのだから。




