第2章 57話
「逃げ切ったのか?」
「いえ、まだです。攻撃はまだ続いています!」
クー太の言った通り、よく見れば後ろからレーザー攻撃が断続的に続いている。
勝彦が見ている宇宙空間の先には、当たらなかったレーザー攻撃がかすめていく。
「アルテミス!振り切って逃げることはできる?」
と、クー太は断続的に続く攻撃を見てアルテミスに聞く。
「駄目ですね、この距離なら十分捕捉されています。超空間転移をしたところで、重力場をトレースされたら、おそらく永遠に追われ続ける事になります!」
ここで勝彦は、アルテミスの返事を聞いていて不思議に思った。
この前クー太は、アルテミスは銀河系でもすごく速い(遠くに飛べる)宇宙船だって言っていた。なのに、何故逃げきれないのか?銀河系でも指折りの速い宇宙船なら、このまま逃げ切ればいいだけじゃないかと思ったのだ。
「おい、アルテミスは銀河系でも速い方じゃなかったのかよ!?何で逃げ切れないんだよ?」
と、勝彦はすぐにクー太に尋ねる。すると、それについて答えたのはアルテミスだった。
「勝彦殿、現実空間では光速が一番早いのは知っていますね」
「ああ、光速を超える事が出来ないんだろ?」
「そうです、だからどれだけ早くスピードを出しても、相手が光速で動ける以上、振り切ることは出来ません!」
「だから、ワープでビュウーって飛べばいいだろ!?」
そもそもアルテミスのアドバンテージはそこにあるはず。それを知っていたから勝彦は単純に飛べばいいと思っていたのだ。
「はい、そうですね。でも、たとえ超空間転移しても、重力磁場を感知されましたらどこに転移したのか分かってしまうのです。なので、後から飛んできてすぐに追いつかれてしまいます」
と、アルテミスはワープしても無駄だと言う。
「え?そ、それじゃあ・・・アルテミスは一体何がすごいんだよ!?この前クー太は、アルテミスはすごく遠くまで飛べる特別な宇宙船だって自慢していただろ!?」
勝彦はすぐにクー太の方を向き、この前言った事の確認を取った。
「そ、それは、その・・・・」
だが、勝彦の質問に対してクー太は答えられず、口ごもっているだけである。
確か、この前クー太はアルテミスはすごい船だと言っていた。それなのに、逃げ切る事が出来ないならアルテミスの一体何がすごいんだろうか?話の意味が分からない勝彦はイライラが募っていく。
そして、勝彦とクー太がそうこう話している間も、ツキタカからの攻撃は断続的に続いている。
「アルテミス、あれは出来るの?」
と、ここでクー太は勝彦の質問には答えずに、何やら別の手段があるかの様にアルテミスに聞いてみる。
「駄目です!まだ十分な充填が出来ていません!」
それでもアルテミスから返ってくる答えは何も出来ないという答えである。
(なんだよ、何か奥の手があったのか?)
勝彦はそれを不安そうに見ていた。今、クー太が言った何か奥の手があるなら早くそれを使って欲しいと思った。
何がダメなのか分からないが、少しでもこの状況から脱出する可能性があるならそれに掛けるべきだと思っていた。だから勝彦はその方法をクー太に尋ねてみた。
「なあ、あれってなんだよ?あれって?」
勝彦の質問にクー太は丁寧に説明を始める。
「僕はこの前言ったよね、アルテミスは古代の技術を搭載しているって!」
「ああ、より遠くに飛べるんだろ?」
「うん、確かに追って来れないくらい遠くに飛べるはずなんだけど・・・でも、 その為には膨大なエネルギーが必要なんですよ!だから、すぐに飛ぶ事が出来ないんです!」
(なんだよそれ!それじゃあ、この前の話した事は何だったんだ?アルテミスは特別な船じゃなかったのかよ!?アルテミスには特別なアドバンテージはないのかよ!?)
勝彦は聞いていた話と違う事に怒っていた。
「じゃあどうするんだよ!?」
「ズウウウウウウウウン!!」
ツキタカからの攻撃は、アルテミスのシールドに当たって衝撃音が聞こえてくる。尚も攻撃は激しさを増していた。勝彦の怒りに合わせるように攻撃も激しさが増していくのだった。
「ふ、普通に空間転移しても・・・・先を読まれてしまえば追いつかれてしまいます。それに・・・超長距離空間転移を行うためには、いずれ惑星に立ち寄らないといけません!もし、そうなれば、いずれ追いつかれてしまいます・・・」
と、クー太はどうしようもないといった感じで答える。その表情を見て勝彦は焦った。
(くそー、これじゃあ何のために俺達は、冥王星を脱出したのか分らないじゃないかよ!)
だがここで、アルテミスは何かこのピンチを切り抜ける方法があるみたいにクー太に話しかける。
「リリア様、私に考えがあります・・・」
「なに!?どうしたの?アルテミス!?」
「もうあと数分で、太陽系圏を完全に抜けます。そうしたら、超空間転移で逃げる事が出来ます!!」
「でも・・・普通の超空間転移では、重力場を調べられたらすぐに追いつかれてしまうよ」
「はい・・・ですから、超彗星を利用しましょう!」
「超彗星を・・・?」
勝彦は横で話を聞いていて、アルテミスの言う超彗星について聞き覚えがあった。
「超彗星って言えば・・・確か、地球を滅ぼすやつだよな!?」
「そうです、ここから約一光年先のオールトの雲の所を、地球に向かっています!」
アルテミスが勝彦に答えるのと同時に、クー太は思い出したかのように感心する。
「なるほど・・・超彗星なら、重力場を乱しているね!」
でも、少し考え込んだ後、すぐにリスクについて指摘した。
「・・・でも、リスクが高いんじゃないの?」
「はい、成功率は50%と言ったところですね」
「50%・・・五分五分かあ・・・」
クー太はさらに考え込んだ。そんな二人のやり取りを見て、勝彦はさっきから二人の会話についていけなかった。一体何が出来て、何が危険で、何が実現可能なのか全く分からなかったからである。
「なんだ?なんだ!?また、俺には分からない話をしやがって!!俺には、二人の話の内容がさっぱり分かんねえだが・・・?」
と、勝彦は首をかしげる。そんな疑問に満ちた勝彦の顔を見て、クー太はゆっくり説明を始めた。
「実は・・・超空間転移は、ワープしてもその場に残った重力磁場変化を調べれば、どこに転移したのかすぐに分かる様になっているんです・・・」
「うーん・・・じゃあワープしても無駄って事か?」
クー太の話を聞いて、勝彦は一応そこまでは理解した。
「無駄じゃないけど・・・うーん、要するに、捕まらないけど、逃げ切れないっていうのが正しいのかな・・・?」
(つまり、永遠に終わらない鬼ごっこみたいなものか・・・?)
「ふーん、で、その超彗星がどう関係してくるんだ?」
「超彗星は・・・その存在だけで、周辺の空間重力磁場に影響を与えているんです。だから、超彗星の前で超空間転移をすれば、僕達の重力磁場を分からなくさせることが出来るんですよ!」
ここまで説明をされて、ようやく勝彦は理解した。




