第2章 55話
「ファーン!ファーン!」
艦内にけたたましくサイレンが急に鳴り響く。
(何だ?何が起きたんだ?)
勝彦は、ビックリして周りを見渡すが、今のところは何も起きていない。艦内は赤く点滅して、サイレンがうるさく鳴り響いていた。
「リリア様、勝彦殿!後方より宇宙船が4隻急速接近中です!」
目の前にまたスクリーンが現れて、レーダーを映し出していた。レーダーには、アルテミスの現在地が示されていて、後方に4つの反応が示されている。
「何だ!?何が起きたんだ!?」
勝彦は、慌ててクー太に尋ねる。
「多分・・・追って来たんだよ!」
「本船後方、約1億キロまで接近しています」
続けてアルテミスが報告をしてくる。
「うーん・・・うまくまく為に、ジグザグ航行で航行していたのが祟っちゃったなあ・・・アルテミス、接近中の船はどこの所属かわかる?」
クー太の声に、すぐにアルテミスは答える。
「はい、識別信号によると、冥王星所属の警備船が3隻と・・・・」
だがここで、アルテミスはクー太に慌てて報告する。
「大変です!リリア様、ベルイング星所属のロンベルク家の船です!」
「ええ!!ロンベルク家の・・・」
そのアルテミスの言葉にクー太は驚いた。そして、クー太の顔色は明らかに変わっていた。勝彦は、二人のやり取りを不思議そうに見つめていた。
(どうしたんだ?)
「ロンベルク家・・・?」
勝彦は、クー太の方を向いて質問する。
「ええと・・・その・・・」
クー太は顔をそらして、口籠ってあたふたしている。何か喋ろうとしているが、言葉になっていない。
(どうしたんだ?何かやばい事なのか?)
「おい、どうしたんだよ?とにかく落ち着け!」
勝彦は、クー太を落ち着くように諭す。
そして、少し落ち着いたクー太は喋ろうとしたが、クー太が答えるよりも先にアルテミスが答える。
「おそらく接近している宇宙船は、コウサイ・ロンベルク・ツキタカ様。つまり、リリア様のフィアンセですよ、勝彦殿!」
と、アルテミスはすらっと答える。それを聞いてクー太は慌てて怒り出した。
「ちょっと、アルテミス!!」
クー太は困った顔をして、アルテミスに抗議した。でも、勝彦はそんな事気にせずにクー太に質問をする。アルテミスが今言った内容が衝撃的過ぎてびっくりしたからである。
「お、お前・・・フィアンセなんているのか!?」
勝彦が驚いて震えている指先には、クー太が恥ずかしそうにしている。
(さ、さすがお姫様だ・・・もうすでに婚約者がいるとはな・・・ん?ちょ、ちょっと待てよ!!という事は・・・クー太はリア充なのか!?)
勝彦の頭の中に、クー太の(リリア)ウェディングドレスと相手の顔の無い男性姿が思い浮かんだ。そして、すぐに怒りに変わる。
(ぐぬぬぬ、クー太に先こされていたとは・・・)
勝彦は悔しさで、クー太を睨みつけていた。それは、クー太を取られたとかいう嫉妬ではない。自分よりも先に結婚が約束されているという状況にだった。幼 馴染、婚約者、義妹は三大リア充だからである。
だが、そんな勝彦にクー太はすぐに否定する。
「ち、違うよ!親が勝手に決めただけだよ!僕はちゃんと断ったんだよ!ほんとだよ!」
と、クー太は、必死に取り繕っていた。でも、勝彦はクー太がリア充という事が気になって、ほとんど聞いてなかった。
クー太の環境が、地球で別れた真司の様なリア充展開振りに、敵意を感じたからだ。
「リリア様、接近中の船から通信が来ています。どうしますか?」
勝彦とクー太とのやり取りとは別に、アルテミスは話を進める。
「・・・・分かったよ・・・つないでよ」
クー太は勝彦の方を見て少し考えたが、渋々了承する。
そして、目の前に現れた通信スクリーンには、一人の男が映しだされていた。
その男は、軍服のような服を着ていて背筋はピシッと立っている。
そして、髪の毛は銀髪で、長い髪の毛が肩までかかっている。さらに胸元に花を挿していて、その花をずっと触っている。
そう、一言で表現すれば・・・キザったらしい、やさ男である。
「やあ、久しぶりだね、プリンセスリリア・・・いや、今はプリンスリリアかな。会いたかったよ!」と、手を伸ばす。
「な、何か用ですか・・・」
と、クー太はぶすっとした顔で答えた。
「相変わらずつれないな、わざわざ婚約者が迎えに来たというのに!」
その男はくるっと回った。勝彦はその姿を見て寒気がした。
(こいつが、クー太の婚約者か・・・)
「婚約者の件はお断りしたはずです!!」
クー太は即座に返答する。
「おやおや、姫様はご機嫌ななめの様だね。でも、婚約の件は君の父上が了承したことだよ!」
「それは父上が勝手に決めたことです。僕は認めていません!」
クー太は断固として認めない。
「まあいいでしょう・・・」
ツキタカは両手をあげて、やれやれと言った感じの態度を示した。そして、そのまま話を続ける。
「それに、君は何故男の姿になっているんだい?あの可憐で美しい女の子の姿のほうが、僕は好きだったんだけどな・・・でも、君がどうしてもっていうなら、僕の方が女性になってもかまわないよ!」
(こいつが女に・・・?うげー!)
勝彦は頭の中で想像してしまって気持ち悪くなった。
「結構です!!」
クー太は体を震わせて激しく拒否した。横で聞いていた勝彦も同じく鳥肌が立っていた。
(当然だ!俺も気持ち悪くなってきた・・・)
「さて、僕は君の父上から、君をベルイウング星に連れて帰ってくるように言われているんだが、素直に帰ると言ってくれ言ってくれないかね、プリンスリリア!」
と、手を差し伸べる。
(こいつの仕草・・・なんで、こんないちいちキザったらしいんだ!?)
「嫌です。僕は地球を救う為に、ここまで来たんです!父上が何と言われても、僕は絶対に帰らない!」
「はあー・・・」
ツキタカはため息をついて喋り出す。
「君が頑固なのは知っているよ!ここにいるブレッド管理局長から話を聞いているからね!」
通信映像に映っているツキタカの隣には、冥王星の管理局長が立っていた。そして、管理局長は頭を下げてゆっくり喋り出す。




