第2章 53話
第2章 サルガスの悲劇
宇宙は広い。
果てしなく広い。その宇宙の本当の広さを知る者はこの世にはいない。
何故なら宇宙は、今でも広がり続けているからである。
宇宙は、一体どこまで広がり続けるのだろうか?
その答を知る者もいない・・・・。
地球が滅びる事だって・・・全宇宙からすれば、たいした事ではないのかもしれない。
もしかしたら・・・銀河系全体が消滅することだって、全宇宙からすれば、ほんの些細な事に過ぎないのかもしれない。
俺の旅は、地球が滅びるという運命(定め)から抗っているのだろうか?
地球は、広い宇宙では、ほんのチリ程度の存在だ。
でも、チリ程度の存在の地球上に、数多くの人が住み、数多くの生活が営まれている。
あの光の中に、多くの人達の夢や希望があふれている。
だから・・・俺はあがき続ける。
人それぞれに、一つの歴史があるように、地球人は、広い宇宙のほんの小さな歴史を刻んでいるからだ。
地球に残された時間は残り少ない。
俺は・・・本当に地球を救うことができるのだろうか?
冥王星を出てから24時間。
勝彦とクー太が乗る宇宙船アルテミス号は、いまだ太陽系の宇宙空間をまだ航行している。
変わる事のない景色を眺め、勝彦はアルテミスにレストランホールを出してもらって、そこでお茶をすすりながら宇宙を眺めていた。
「はあー・・・」
勝彦は、ため息をついて一口お茶を飲む。冥王星を脱出した頃の緊張感はなくなり、勝彦は宇宙空間でやる事のない、退屈な時間を過ごしていた。
勝彦は、アルテミスに色々出してもらうのも慣れてしまい、もう、たいして驚かなくなっていた。
「ふぁああああああ・・・」
勝彦は予期せずに大きなあくびが出てしまう。もう、これで何度目のあくびか分からない。
でも、別に眠たい訳ではない。冥王星を出てから睡眠はたっぷりとっている。むしろ、ゲームばかりの不規則な生活をしていた数日前に比べれば寝過ぎである。
なので目が覚めてしまって一人でお茶を飲んでいたのだ。ちなみに、リリアは奥の部屋でまだ寝ている。
それに、アルテミスは相変わらず光の速さで、太陽系を出ようと頑張ってくれている。
本当は少し前に、早くワープを(長距離空間転移)しないのかと聞いてみたが、冥王星近くで長距離空間転移を行うと、太陽系の重力磁場に影響を与えるから出来ないと言われた。だから、いまだにワープ出来ずにいる。
アルテミス曰く、ワープで重力磁場が変化すると、冥王星から逆探知されてしまい、自分達の位置がばれてしまう恐れがあるから気軽に出来ないそうだ。ワープを行う為には、なるべく離れた所から行わなければならないのである。
とにかく、今は通常航行で早く太陽系から脱出しないといけないそうだ。
勝彦には詳しい事は分からなかったが、アルテミスがそう言うならそうなのだろうと勝彦は納得し、どうせ詳しい事を聞いても、頭がパニックになるだけだと諦めていたのだった。
(俺はただ・・・クー太とアルテミスを信じて、前に進むしかないからな・・・)
「なあー、アルテミス・・・まだワープしないのかよ?」
と、両手を頭にのせて、背伸びをしながら、軽い感じでアルテミスに尋ねる。さっきから勝彦は、何度も同じ質問をしている。
景色の変わらない単調な宇宙を眺めていると、眠たくなくても眠たくなってくる。
今はもう・・・初めて宇宙空間を眺めた時の様な感動は無い。
かといって、難しい話をして頭がパニックになるのも嫌である。とにかく、今は何か変化がほしかったのである。
「はい、あともう少しですよ。あともう少しで、太陽系の重力磁場ヘリオポーズから抜け出す事が出来ますから!」
そう、アルテミスは勝彦に丁寧に諭すように言う。
今の所アルテミスは、勝彦との会話にずっと付き合ってくれて、同じ質問を何度もしても根気強く答えてくれている。
もし、アルテミスがいなかったら、今頃勝彦はリリアをたたき起こしている頃である。
勝彦にとって、この暇な時間を潰す唯一の方法がアルテミスとの会話だったのだ。
「何だ?そのヘリオポーズって・・・?」
「地球が存在する太陽系圏の事ですよ。これを抜ければ、太陽系、つまり外宇宙に出る事になります」
(外宇宙・・・?何だそれ?宇宙に、内も外もあるのか?)
相変わらずアルテミスとの会話は、良く分からない事が多い。でも、アルテミスは「地球の言葉でなるべく表現しているから分かるはずですよ」とも言ってくる。
しかも、転送技術で知識を脳に再構築しているから、理解しているはずだとも言う。
それでも勝彦は理解できずにいて苦しんでいた。感覚は地球人だから、どうしても理解できなかったのである。
「うーん・・・要するに、日本人の俺が日本を出るっていう事だよな?」
勝彦はあくまで、地球の・・・つまり自分の感覚を優先させて質問する。
さっきから勝彦は、アルテミスとの会話の中で何度もこの自分の感覚を優先させて質問をしていた。
どれだけ説明されても、頭の隅で何となく分かっても、すっきりしなかったからである。
とにかく、アルテミスの言葉は地球の常識が通じない。それが勝彦にとって物事の受け入れる事を遮っていたのだった。
「・・・・・・・まあ、簡単に言ったら、そうかもしれませんね!」
と、アルテミスは長い沈黙の後、そう答えた。勝彦は少しむっとした。自分が馬鹿にされて、呆れられたと思ったからだ。
(なんだ?今の沈黙は?今、俺の表現で合っていたのか、それとも間違っていたのか?どっちなんだよ?)
少し前に勝彦は、物事を受け入れて理解できないのは文明レベルの低い未開惑星人の証拠だとアルテミスに言われて、何気に腹が立っていた。
勝彦の考えは、地球人として知的生命としての進化がまだ進んでいない。だから、惑星保護条約で未開惑星人である地球人を太陽系から出せないのですよと言われた。
勝彦は、地球人として少し馬鹿にされた感じがして嫌だった。
(ふん!地球人舐めんなよ!)
勝彦がぶすーっとしていると、アルテミスは突然話を振ってくる。




