第1章 52話
「おい、どうした?聞こえるか!?」
管理局長は必死に叫ぶ、だが返事はない。
「リリア様、隔壁が開きます!」
アルテミスは隔壁が開くのを感知して報告をする。
すると、外に見えていた港をふさいでいた隔壁が開いていく。それは、アルテミスの可視モニター越しからでも見えていた。
「やったー、これで出られるぞ!」
喜んでいると、映像越しにキャロリンは最後の声を掛けてきた。
「勝彦、リリア!絶対無事に帰ってきてね・・・」
彼女の願いは、勝彦とリリアの表情を笑顔に変える。
「ありがとう、キャロリン。何から何まで・・・」
「今度こそお別れですね・・・」
リリアも感極まって別れを惜しんでいた。だが、コントロール室の反乱を知った管理局長は、すぐにリリアの説得始める。もう、コントロール室の制御は敵の手に落ちて、すべての隔壁は開くのだろうと悟った様だ。
「姫様、お待ちください。どうかお父様の言うとおりに、ここにいて下さい!もうすぐ、姫様への御使者の方が到着されます。どうか・・・それまでは・・・・」
最後の最後まで局長はリリアを引き止めてくる。それでもリリアは、管理局長に気を使ってお別れの言葉を告げる。
「ごめんなさい、貴方はしっかり任を全うしようとしていた事は、お父様にはちゃんと言っておきますから・・・」
「待ってください!姫様!!」
ここで、リリアは通信を切った。
「いいのか?リリア・・・」
勝彦はリリアに尋ねる。自分をシンピ星に連れて行く事で、父親に反抗する結果になった事が気になった。
「はい、もう決めた事ですから・・・」
リリアは少し悲しい顔をして答えた。やっぱり、父親の事が気にかかるのだろう。勝彦は、心の中でリリアに謝っていた。地球を救う為に、家族と疎遠になってしまった事を。
勝彦はふと、外を見ると港のガラス窓には多くの人が見送りに来ていた。
そして、その中にはキャロリン、アーロンもいる。彼らはみんな手を振っている。力一杯振っている。みんな、見送りに来てくれた様だった。
勝彦は、向こうには見えていないのは分かっていたが、ずっと手を振っていた。彼らに見えていなくても、見えているつもりで、彼らの事を考えながら手を振っていた。
そして、隔壁は開き、アルテミス号はゆっくり動き出し冥王星の縦穴に出た。上を見ると、上の隔壁も開いてついに宇宙空間が見えた。アルテミスは、その縦穴をどんどん浮上して、ようやく宇宙空間に出ると、眼下には冥王星の何もない陸地が広がっていた。
「それでは出発します」
「勝彦君・・・ホントにいいのですか?出発したら、もう、しばらくは地球には戻れないですけど・・・」
リリアは最後にもう一度勝彦に尋ねる。正真正銘、これが本当に、地球に戻れる最後のチャンスである。でも、勝彦の心の中の気持ちは決まっていた。
「ああ、行ってくれ!俺も、すでに覚悟はできているから・・・」
勝彦はもう覚悟が出来ていたのだった。地球を救う方法を教えてもらうまで、地球に帰るつもりはない。
そして、目線ははるか銀河中央の先を眺めている。
勝彦はもう、前しか見ていなかった。それを見たリリアは、同じように勝彦の見ている先を見ていた。
そこには・・・・銀河の星々が広がっている。
「それでは、シンピ星に向かって出発します」
アルテミスがそう言うと、アルテミスは光の速さで出発する。しばらくする と、一気に冥王星は見えなくなってしまった・・・・。
今、勝彦とクー太の5万8千光年のかなたへの旅が始まったのであった。




