第1章 51話
「おかえりなさい、二人とも!」
アルテミスの声が勝彦達を出迎えてくれた。
「ただいま、アルテミス」
リリアが嬉しそうに返事をする。アルテミスの船内は、ものすごく久しぶりに感じた。まるで、何日も帰ってこなかったみたいだった。
でも、勝彦はすぐに気を引き締める。喜びを感じている暇はない。ぼやぼやしていると、管理局長の息のかかった警官がやってくるかもしれないからだ。
(早く出発しないといけない・・・)
「それより早く出発しよう。管理局長が追って来るかもしれない!」
懐かしんでいるリリアを尻目に、勝彦はリリアを急かす。だが、アルテミスが外の状況について説明して来た。
「はい、でも・・・残念ながら港口はまだ封鎖されています。出るには隔壁を破壊して強硬突破するしかありません!」
アルテミスは、港を出て、宇宙に出る事は不可能だという。
「そうしたら、どうなるんだ!?」
「多くの犠牲者が出るかもしれません。おそらく、そちらに見えている人達は死んでしまうかと・・・」
転送された部屋は可視モードになっていて、港全体が見えている。アーロンとクリスが港のガラス越しに見えていて、こちらを見て手を振っていた。
「何とかならないのかよ、せっかくここまで来たのに・・・」
せっかく地球人達の協力を得て、ここまでやって来たのに、肝心の宇宙に出る事が出来ないなんて聞いてない。ここで足止めを喰らったら、ここまでのみんなの努力が全部無駄になってしまう。
勝彦は焦って、その場を右へ左へ動きまわっていた。すると、アルテミスがリリアに通信が来ている事を告げる。
「リリア様、局長から通信が入っています!」
「くっ・・・・」
勝彦は遅かったか!と悔しがった。恐れていた事が現実に起きてしまったのである。これでは、何のためにここまで急いでやって来たのか分からない。
スクリーンが現れて管理局長が出てきた。
「姫様、このような事はやめて、お戻りください。心優しい姫様の事です。冥王星に被害を出してまで、出られないのでしょう。隔壁は開きません。なので、冥王星から出る事はできません。私は別に・・・そのまま船内に居続けてもらっても構いませんが・・・?」
(くそー、このまま俺達をここに閉じ込めようっていうつもりか?)
「ブレッド管理局長、私は地球を救いたいのです。どうか見逃してください!」
リリアはここで、もう一度管理局長に懇願した。
「残念ですが、あなた様のお父上様にきつく言われていますので・・・」
管理局長は、あくまでリリアの願いを拒否する。
(この頑固爺が!あくまで、俺達を行かせるつもりが無いんだな!)
勝彦は、頭に血が上ってアルテミスに質問をする。
「アルテミス、隔壁を破壊できるのか?」
こうなったら、何とか被害が出ないように強行突破するしかない。何とか被害を最小限に、隔壁を破壊できないものか聞いてみた。
「できますが・・・やはり被害は出ると思います」
「なんとか人的被害が出ないようにできないのかよ?」
「隔壁を破壊するには、高エネルギーが必要です。それだけのエネルギーを放てば、港全体が吹っ飛びます。下手をすれば、隔壁は残って港が消滅します!」
「くそう・・・何か他にいい手はないのかよ!?」
勝彦は悔しさで打ち震えていた。そして、何もできない自分にいら立ちを覚えていた。
(ここまで来て、出発できないなんて・・・)
「勝彦君・・・」
横で見ているリリアも心配そうに勝彦を見ている。だが、ここでまた、思いがけない事態が起きる。
「リリア様!港から通信が入っています!」
アルテミスは予期しない通信が来て報告してきた。こんな時に一体誰が?勝彦とリリアは顔を上げて通信映像を見た。
「え!?」
すると、管理局長が写っている映像の隣に、もう一つ通信スクリーンが出てきた。そこに映っていたのは、さっき別れたキャロリンだった。
「勝彦、リリア!遅くなってごめん!」
「キャロリン!?」
「言い忘れていた事があってごめん!もうすぐ隔壁は開くわ!」
「え、本当か?」
「ええ、今、アーロンのお父さんが向かっているはずよ!」
「そんな馬鹿な、隔壁のコントロール室を呼び出せ!」
キャロリンの通信を横で聞いていた管理局長は、焦って叫んだ。そして、管理 局長はあわて隔壁コントロール室を呼び出した。
呼び出されたコントロール室から管理局長に報告する声が聞こえる。
「ブレッド管理局長殿、申し訳ありません。警備の一部が反乱を起こしまして・・・うわー!プッツ・・・・・・」
呼び出されたコントロール室の通信が消えた。




