第1章 48話
それから、街中に出てからも、二人に連れられて監視カメラや警官のいるところを避けて、小さな通路、地下道などを駆使して街中を駆け抜けて行く。
時には、知らない人の家の中を横切ったり、待ち構えていた車に乗り込んで運ばれたり、お店の中の厨房を通過させてもらったりして街中を横断した。
出会う人の中には「頑張れよ!」とか「地球を頼む!」とか、声を掛けてくれる人が大勢いた。まるで、町全体が勝彦達に手を貸してくれている様だった。
どうやら、演説での映像の効果があってか、いつの間にか勝彦とリリアは有名人になっていたのである。だから、出会う多くの人が手を振ってくれていたのだ。
そして、気が付くと、いつの間にか港の入口の所まで戻って来ていた。最初にこの街に来た入り口の所である。
「ここから先は、局長の警備がついているから、慎重に行かないと行けないわ!」
キャロラインは勝彦達に小声で言って、物陰に隠れるように指示する。それを聞いて、勝彦達はすばやく近くの物陰に隠れた。
そして、物陰に隠れて遠くから様子を見て見ると、最初に街に出る時に使ったエレベーターの前に、多くの警備の警官がたむろしているのが見える。どうやら、警官達は港に行くエレベーターの前で検問をしている様である。
「ど、どうするんだよ?」
離れた所から様子を眺めながらキャロラインに尋ねる。
検問の前では、人の流れが止まってしまって、港に行く人達の行列が出来ている。これでは、簡単にここを通過する事が出来ない。
「大丈夫だよ、もうすぐパパが来るから!」
ここで答えたのはキャロラインではなく、アーロンが答える。
アーロンは自分にまかせてよ!と言わんばかりの笑顔で勝彦に答える。
(アーロンの父親も協力してくれるのか?)
そして、しばらく物陰で待っていると、アーロンの言った通り、一人の男性が勝彦達に近づいてくる。
「パパ!」
アーロンは、その父親らしき男性に飛びついた。
「うまく連れ出せたみたいだな、よくやったぞ、アーロン!」
アーロンと、その父親は力一杯抱き合っている。そして、アーロンの父親はキャロラインの方を向いた。
「ご苦労様です。キャロラインさん!」
「いえ、それよりも・・・・準備は出来ているのですか?」
「ああ、準備は万全だ!いつでも行ける・・・・」
そういうと、アーロンの父親は、勝彦とリリアの方を向いて、真剣な顔で喋りかけてくる。
「君達は本当に地球を救ってくれるのか!?」
真っ直ぐな目で勝彦達を見つめてくる。そんなアーロンの父親に、勝彦は力強く答えた。
「はい!俺達は、地球滅亡を回避する方法を聞きにシンピ星に行ってきます!」
「本当に、地球の滅亡は回避できるのか!?」
アーロンの父親は、疑惑に満ちた目で勝彦に尋ねる。
「可能性は低いかもしれないけど・・・俺はその可能性に賭けています!」
と、勝彦は真剣に答えた。しかし、アーロンの父親は、勝彦の返事に納得しない。
「出来ないかもしれないじゃ駄目なんだよ!」
アーロンの父親は、勝彦の肩を掴み迫ってくる。
「必ず、必ず地球を救くれ!頼む・・・」
アーロンの父親は怒鳴り叫んで、勝彦にしがみついて崩れ落ちた。その急変した態度に、勝彦とリリアは戸惑った。
アーロンの父親のあまりにも激しい懇願に、何も言えなかったからである。
「・・・・・・」
勝彦は、アーロンの父親に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
勝彦も、地球を救いたい気持ちは一緒である。でも、ここまでの覚悟と決意があるかと言われれば疑問だった。
(俺には・・・この人ほどの覚悟があるのか?一応、俺も本気で地球を救う覚悟もしている。でも、この人の覚悟は俺以上に本物だ!俺なんか・・・演説で調子のって、「これで英雄だ!」なんて言っている有様だ!・・・・)
勝彦は自分の気持ちを恥じて、アーロンの父親ほどの強い覚悟と決意が持てなかった事に自分の不甲斐なさに恥じていた。
そして、アーロンの父親は力強く勝彦を掴んで崩れる。
それを勝彦は、苦虫を噛み潰した様な顔で見ていた。すると、ここでアーロンの父親に声を掛けたのはリリアだった!
「大丈夫です!勝彦君なら必ず地球を救う事が出来ます!」
勝彦が戸惑っていると、リリアがアーロンの父親に自信満々で断言する。
「ほ、本当か・・・?」
アーロンの父親はリリアの方に振り向いて、すがるように言った。
「私が・・・勝彦君を選んだのは、勝彦君なら絶対にやれると思ったからです!」
(おいおい、何故リリアが断言するんだよ!?)
勝彦は焦っていた。確かに勝彦はベストを尽くすつもりだけど、自分でもどこか結構適当な所があると思っている。それなのに、リリアは何故、そこまで自分を信用してくれているのか?
(そもそも、何故、俺なんかを選んだんだよ?)
「本当なんだな・・・」
アーロンの父親はリリアに念を押す。そして、少し安堵した顔になった。
その姿を見て、リリアは勝彦の方を見てニコっと笑った。
リリアの顔は、「大丈夫、勝彦君なら出来るよ!」と言っている様である。
勝彦はそのクー太の笑顔を見て、決心してアーロンの父親に言う。
「必ず地球を救ってみせます。必ず帰ってきます。だから俺達に任せてください!」
さっきと打って変わって、勝彦はアーロンの父親にそう断言した。
本当は・・・・そんなに自信はなく、アーロンの父親の顔をまともに見られなかった。何故なら、アーロンの父親ほどの決意と覚悟が自分には無いと思ったからである。
でも・・・リリアの笑顔をみて、自信が出てきた。リリアと一緒なら自分はやれると思ったのだ。自分を信用してくれるリリアとなら何だって出来ると思ったからである。
「ああ・・・・頼む・・・!」
アーロンの父親は絞り出すようにそう答える。そして、勝彦の自信に満ち溢れた顔を見て、アーロンの父親は安堵していた。
「パパ早くしないと・・・」
ここで心配したアーロンが父親を急かす。
そうだった・・・・ここで「地球を救える」「救えない」などグダグダ言っても、ここを突破出来なければシンピ星には行けない・・・。
「どうか・・・地球を頼みます。さあアーロン行くぞ!」
「うん!作戦開始だね!」
アーロンの父親は、深々と勝彦達に一礼をすると、アーロンと一緒に検問をしている所に向かった。




