第1章 46話
「ううん、会うのは初めてよ!でも、私の友人があなたの事よく知っているわ!」
やはりこの女性とは初対面である。でも、自分の事を知っている人に心当たりがない。そもそも、外国人と知り合いになるような交友関係もない。
「俺の事をよく知っている友人・・・?それって誰だ!?」
(はて・・・俺に外国人の友人っていただろうか?)
「今は言えないわ!でも、あなたの事をとても大切に思っている人よ!」
「俺の事大切に思っている人・・・?」
(ほんとに誰の事だろう?)
考えてみたが、全く身に覚えがなかった。アーロンの件といい、この女性の件といい、自分が知らない知人が気になった。誰の事だろうかと思案する暇もなく、白人の女性は話かけてくる。
「私はキャロライン、あなたの演説とても素晴らしかったわ!」
キャロラインは握手を求めて手を差し出す。
「ど、どうもありがとう・・・」
と、言って勝彦も手を差し出して握手をした。彼女の柔らかい手、すべすべした手を握って勝彦は緊張していた。
「勝彦・・・必ず地球を救ってね!お願いね・・・」
キャロラインは、勝彦の目を真っ直ぐ見つめる。彼女の目は真剣そのものである。
アーロンと違って大人だからだろうか、キャロラインは何か悲壮感を背負ってそこに立っている様だった。
でも・・・・キャロラインとは対照的に、勝彦は見つめられて鼻の下を伸ばしていた。彼女がつけている香水の匂いだろうか?キャロラインに近づいた時に、甘いにおいがしてドキドキしていたからだ。
「さっそくだけど、ここから脱出するわ!」
キャロラインの声を聞いて、慌てて勝彦は我を取り戻す。
「で、でも、どうやって・・・?」
いくら部屋から脱出出来たとしても、ここからアルテミスのある宇宙港までかなりの距離がある。どう考えても、そこに到着するまでに見つかってしまう気がする。
「大丈夫、ここの住人のほとんどはみんな貴方達の味方よ!」
と、キャロラインは、勝彦にウインクして先に進む。
(か、可愛い・・・)
勝彦はキャロラインの笑顔を見て少しポ~っとした。一目惚れ迄はいかないけど、心は完全に惹かれていた。
勝彦がポ~っとしていると、横で袖をクイクイと引っ張ってくるリリアがいた。
「勝彦君・・・私の時と何か反応が違う・・・」
リリアは不満そうな目つきで勝彦に言った。
「え!?そんな事ないぞ!何を言っているんだ!全く、はははは・・・」
勝彦は慌てて取り繕った。率直なリリアの突っ込みに少し焦ってしまったからだ。
(もしかして顔に出ていたのか?き、気を付けないとな・・・)
それにしても、自分の演説がこんな所で役に立つとは思ってもみなかった。半分調子乗ってやった演説が、こんなに役立つとは思ってもみなかった。
勝彦は、自分のした行動の結果が、これほど影響を及ぼすとは思ってもみなかったのだった。
「さあ、こっちだよ!」
と、アーロンが手招きをして急かしてくる。
それから、アーロンとキャロラインは、勝彦とリリアを連れてホテルの地下室に降りていく。
途中、何度もホテルの従業員にばれそうになったが、キャロラインとアーロンが気を引いて、何とかばれずに突破することが出来た。
勝彦とリリアは、気が付くと、人気のない棚が並んでいる広い地下室に来ていたのだった。
「なあ、何でこんな所に来るんだ?」
勝彦はあたりを見渡してみるが、見知らぬ箱や棚がずらっと並んでいる。どうやらここは、ホテルの食材や在庫などを保管している所の様である。
「大丈夫です。ここに抜け道がありますから・・・・」
でもここは、あくまで地下室であって、出口などは全く見えない。それに、地 下駐車場などではなくて、完全密室なのである。
キャロラインに連れられて、地下室の大きな棚の間をツカツカと歩いて進んでいくと、その先にホテルの従業員の制服を着ている男がいる。
勝彦は、何でこんな所に人が?とお思い、これで見つかってしまったな・・・と覚悟する。
でも、キャロラインは気にせずどんどんその男に近づいていく。
「こっちです!」
と、ホテルの従業員は小さな声でキャロラインを呼んだ。どうやら、この人も協力者の様である。
キャロラインはその男の元に行き、勝彦達もキャロラインに付いて行く。近づいてみると、その男は勝彦と同じ東洋人だった。
「お待ちしておりました。貴方がリリア様?」
その男はリリアを見つめる、そして次に勝彦に目線を移す。
「そして・・・貴方が勝彦さんですね?」
「はい・・・」
「そ、そうだけど・・・」
と言って、勝彦もリリアも恐る恐る返事をする。
「この人は協力者よ!」
キャロラインがこの男を紹介した。




