第1章 45話
「ありがとう・・・救世主のおにいちゃん!」
だが、その一言で勝彦のモチベーションはガクッと下がる。そして、アーロンをじろりと見つめた。
「・・・・あのさ、その救世主って止めてくれないかな・・・?」
自分で演説とかして調子乗っていたけど、流石にそれは恥ずかしすぎる。傍から見れば、逆におちょくられている様な感じがした。
「え?でも、救世主のお兄ちゃんって言えば喜ぶって聞いたんだけど・・・?」
「はあ?誰が・・・・」
勝彦は、すぐにアーロンに尋ねる。自分の事を知っている人間が、アーロンの知り合いにいただろうか?不思議に思ったが、それを聞く前にアローンはすぐに次の行動に移っていた。
「そんな事より、早く行こうよ!僕は兄ちゃん達を宇宙船のある所に案内する為に来たんだから!」
そう言うとアーロンは手招きをして部屋から出ていった。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
勝彦はそれにつられるように一緒に部屋を出た。
本当は、もっと話を聞き出したかったが、急いでいる様である。確かに悠長にしている訳にはいかない。でも、勝彦は何かすっきりしなかった。
そう思いながら、アーロンを追っていくと、ドア前の通路に警官が倒れているのが見える。
「眠っているだけだよ。ちなみに、この人も協力者で、わざと眠ってくれているんだよ!」
と、アーロンは笑顔で説明してくれる。眠っているという事は、アーロンがこの部屋に入る前に、眠り薬でもわざと飲んでくれたのだろうか?
(そうか・・・この人も協力者なんだな・・・)
「ふーん・・・・なるほどね・・・」
ここに居る警官まで協力してくれるという事は、多くの人達が自分達を助けてくれようとしているんだなと感心した。
そして、倒れている警官の横を通ろうとして警官の顔を見ると・・・。
「って、お前かよ!」
思わず突っ込んでしまう。
そこに倒れている警官は、まさしくリリアが強引に通過した時、立ちふさがった警官だったからだ。
(こ、こいつ・・・ツンデレ警官かよ!)
倒れている警官は幸せそうに眠っている。
演説をした後、管理局長に命令されて勝彦達を拘束したのに(しかも強引に・・・)今は、ここでぐっすり眠っている。
(何考えているんだ?こいつは・・・・?)
勝彦は、複雑な気持ちでその場を通り過ぎる。
そして、倒れている警官を後にして、部屋がいくつも並んでいる廊下に出ると、隣の部屋の扉が開いた。
「リリア!!」
そこから一人の女性と、リリアが出てきた。
「勝彦君!」
リリアは、勝彦と目が合うと、すぐに走り出して勝彦の胸に飛び込んだ。
「ちょっお前・・・!」
勝彦は急に抱きつかれて焦った。リリアに(クー太含めて)抱きつかれたのは今回で2度目である。この前に抱きつかれた時は、男の姿だった。いくら子供の姿とはいえ、今度は女の子の姿である。リリアに抱きつかれて少し恥ずかしかった。
「ちょ、ちょっと待て!離れろよ!」
勝彦はリリアの肩を掴み、無理やり引き離した。前回は男だから離れろ!だったが、今回は恥ずかしいから離れろ!・・・だった。
「良かった!無事だったんだね・・・」
リリアは涙ぐんでいる。
「まあ・・・お前も無事でよかったな。でも、お前はどうやって・・・?」
「はい、この人が助けてくれたのです!」
リリアは、横に居た一人の白人女性を紹介した。その女性は、ブロンドで髪が長く、そして足が長くてジーンズをはいていた。
そして、ここが一番重要だけど、胸が大きかった。
(Dはあるな・・・)
いかにもアメリカ的な白人の女性だった。
その女性は、勝彦にぺこりと頭を下げて挨拶をした。
(綺麗な人だな・・・)
でも、年は明らかに若く、少女から少し大人になったといった感じだった。
「あ、あなたが・・・勝彦?・・・西田勝彦なの?」
その女性は、まるで勝彦の事を知っているかの様なそぶりで話しかけてきた。
「俺の事・・・知っているのか?」
勝彦は不思議に思った。これまでの人生で、白人と知り合う機会なんて一度もなかったからだ。
いくら住んでいる所が都心から近いとはいえ、閑静な住宅街に外国人を見かける事自体がほとんどない。
高校時代も、留学生が来るような進歩的な高校ではないので、出会う機会があるとすれば電車に乗って街に出た時に会うくらいである。




