第1章 39話
「アルテミス!お前はいいのか?リリアの事心が配なんだろ?」
勝彦とリリアは地球を救う覚悟を決めた。でも、アルテミスはリリアの決断に反対している。宇宙船で行く以上、アルテミスの意思が重要である。
勝彦達は行く気満々でも、アルテミスが首を縦に振らないと宇宙での移動が出来ない。
「リリア様、本当にいいのですか?もし、発覚すれば・・・」
アルテミスはもう一度リリアに念を押す。
「お願い、アルテミス!私は地球に来る前から決めていたの・・・」
それでも、リリアの決心は変わらない。
「リリア様・・・わかりました。そこまでリリア様が決心したのでしたら、もう何も言いません!私もリリア様に従います!」
アルテミスも覚悟を決めて返事をした。これで、すべての問題はクリアされた。
今ここに・・・勝彦、リリア(クー太)、アルテミスの3人が覚悟を決めた瞬間なのである。
「ありがとう・・・」
リリアはか細くつぶやいた。
「よーし、そうと決まれば早速行こう!」
勝彦は大声を出して叫ぶ。さっきまでの重苦しい気分は澄み渡るように晴れていた。もう勝彦のテンションはうなぎ上りだった。アルテミスが決心してくれたなら、全員の意見が一致した事になる。これで何も心置きなく宇宙に旅立てる事が出来るのだ。後は行動を移すのみだった。
「え!?」
リリアが不思議そうに聞き返す。
「善は急げだ!早くシンピ星に行って地球に戻って来よう!」
勝彦はリリアを急かした。地球が助かるかもしれないという喜びと、これからの旅に心がときめいていたのである。シンピ星に向かうという事は、銀河を旅する事だ。地球人人類が、今だかつて果たした事がない領域に向かえる事に心が躍っていた。
「いいのですか?家族に会いに、一度地球に戻ってもいいのですよ?」
リリアは心配して勝彦に聞き返す。
「いや、今にも地球に危険は近づいているんだろ?それに、旅が順調に進むとは限らないだろ?」
勝彦は、いちいち地球に戻っている時間さえ勿体無いと思った。一刻も早く出発して、地球に帰ってこなければ地球に未来はない。そう思っていたのだ。
だが、本音を言えば今後の大学生活の事や、家族に心配しないように位は言っておきたいと思っていた。でも、一度地球に戻れば決心が鈍る気がしたのである。
「いいのですか?」
リリアはさらに心配して聞き直す。
「ああ・・・」
勝彦はもうすでに覚悟が出来ていた。地球を救わなければ、どちらにしても自分達に未来はない。家族も、友達も、大学生活も、すべて失われる。
「わかりました。じゃあ、アルテミス!今からそちらに向かいますから、すぐに出発できるように準備しておいて!」
「はい、分かりました。それでは、お待ちしております」
だが、港に戻るにあたって一つの問題があった。
「でも問題は・・・」
勝彦はそう言って、もう一度バルコニーに出て、ホテルの下に集まっている人達を見てみた。すると、多くの人達がホテルの入り口に集まっていて、とても入り口からは出られそうもない感じである。大勢の人がホテル周辺を取り囲んでいて、この包囲を突破するのは一苦労しそうだ。
「問題はこの包囲をどうやって突破するかだよな・・・」
「どこか裏口とかあればいいのですが・・・」
リリアも、勝彦の後に続いてバルコニーから集まっている人達を見ていた。だが勝彦は、集まっている人を眺めて一つの案が思い浮かんだ。
「なあ、リリア!あの人達に、俺達が地球を救うと言ってもいいかな?」
勝彦は、下に集まった地球人にそれを言えば、進んで協力してくれるんじゃないかと思ったのである。
地球が助かるかもしれない事を知れば、きっと皆、進んで協力してくれるはずである。
「え!?どうしてですか・・・?」
「その方が、あの人達も安心すると思うし、下手にコソコソするよりいいと思うんだ!」
勝彦は、地球が助かるかもしれないという希望を、多くの人達に知って貰いたいと思っていた。
こんな重要な事を、自分の中一人だけにしまい込んでしまうのは申し訳ない。もし、ここで何も言わずに出発してしまえば、ここに残った人達は希望を失ったまま、生きて行く事になる。そんな彼らの気持ちを考えたら、可哀想すぎると思ったのである。
勝彦は、偶然リリアによって地球を救う最後のチャンスを手に入れたが、自分の実力じゃなくて、リリア(クー太)によってもたらされたものだ。本当は、もっと選ばれた別の人が行くべきなのに、自分みたいな何の取り柄もない人間が、たまたまチャンスを貰い申し訳ないと思ったのだ。
(でも・・・・リリアに出会ったのも何かの縁!)
勝彦は、これは自分に与えられたチャンスだと思って多くの人達と分かち合いたいと思った。
そもそも、自分が地球を救いたいと思ったのは、地球救ってほしいと懇願した男の子や、多くの地球人達と出会たからなのだからである。
だが・・・・勝彦は同時にもう一つの案が思い浮かんだことは言わない事にしていた。
「勝彦君がそう言うならいいけど・・・」
リリアは少し困惑したが、勝彦の真剣な眼差しを見てすぐに同意した。
「ホントか?」
「はい!でもどうするんですか?」
「地球人には希望が必要なんだよ。地球が救われるという希望がな!だから・・・少しでもみんなを安心させてあげたいんだよ。そうすればきっと、みんな応援してくれると思うんだ!」
勝彦は地球人として、真剣な眼差しでリリアを見つめる。どうしても、地球人の思いをリリアに訴えたかった。
恐らくあそこに集まっている地球人は、きっと自分と同じ思いを持っているはず。だから、リリアにそれを分かって欲しいと思ったのだ。
「・・・・わかりました。早くみんなを安心させてあげましょう」
リリアは少し考えたが、すぐに勝彦に同意してくれた。それを見て、勝彦はほっとした。リリアが少し考えるのを見て、場合によっては、発表してはいけない理由があるかもしれないと内心思ってしまったからである。
でも、リリアは笑顔で承諾してくれた。特に問題なかった。本当は、もしかしたらリリアに断られるんじゃないかとヒヤヒヤしていた。
そして・・・・勝彦は安心してこの部屋を出る準備した。リリアにある考えを隠したまま・・・・。




