第1章 38話
「あの・・・勝彦君。・・・実は地球を救う方法が一つだけあるんだけど・・・」
「え・・・・!?」
勝彦はまた頭が真っ白になった。すべてを受け入れる覚悟を決めたのに、リリアは衝撃の事実を告白する。
ここでまた、話が振りだしに戻ってしまった。
(なんだ・・・?まだ地球を救う方法があるのか?)
だが、ここでリリアを止めようとアルテミスが声を荒げる。
「いけません!リリア様!ベルウイング星を出る時、地球を見てくるだけだと、お父上と約束したはずです!」
アルテミスは、慌ててリリアを諌めた。
「アルテミス・・・ごめんなさい、私・・・決めていたの・・・」
しかし、リリアの決心は固かった。勝彦の前に立っているリリアは、覚悟を決めた表情をしていた。
「だけど、地球人を太陽系から出すなんて、重大な違反なんですよ!リリア様の立場が危うくなるかと思います・・・」
アルテミスは、しつこくリリアを諌めていた。それでも、目の前に立っているリリアの表情は固かった。そして、これからリリアが、勝彦に何を言おうとしているのか、アルテミスにはすべて分かっている様だった。
「いいの、お願いだからアルテミス・・・」
しかし、覚悟を決めたリリアの決心は変わらない。
「・・・・・」
アルテミスはこれ以上何も言わなかった。リリアの覚悟を感じたアルテミスは、これ以上何も言えなかったのだ。
「おい、どういう事なんだよ!?」
アルテミスと話しているリリアを見て、勝彦は何が何だか分からなかった。そして、リリアを見てみると、勝彦に優しく微笑みかけてくる。
「勝彦君・・・何から話そうかな・・・」
リリアは、傍にあったソファーに座る。そして、ゆっくりと語りだす。
「かつて、銀河系には一つの種族が全銀河を統治していました。私達はその種族を伝説の古代人と呼んでいます。伝説の古代人は、全銀河を自由に行き来して、その栄華は隣の銀河のアンドロメダ銀河にまで及ぶと言われるほどでした。でも・・・小さな意見の食い違いから戦争をはじめ、他の星との交流を止めるようになり、人々は自由に銀河を移動しなくなりました。そして、その事によって技術は失われ、小さな移動でしか銀河を移動する事が出来ない様になったのです。今の銀河に住む人々は、その伝説の古代時人の末裔なのです」
「でも、リリアは銀河の向こう側からやってきたんだろ?移動できているじゃん!」
「はい、でも・・・私がここまで来るのに2年かかっています・・・・」
たしかに、地球まで2年もかかっていたら、シンピ星までどれくらい掛かるか分からない。
ここで、勝彦はリリアの言いたい事が分かった。リリアの言う古代の技術があれば、2年よりもっと早くにシンピ星に行けるという事を理解したのである。
「だったら、その古代の技術があれば、もっと早くにシンピ星に行けるという事だな?」
勝彦はリリアに念を押す。今まで散々肩透かしを食らって来たので、簡単には信じられなかった。今までの様に、期待させる事を言って結局ダメなんじゃないかと、そんな考えが頭をよぎった。
「はい、そうです。そして・・・・アルテミス号は古代の技術が搭載されている特別な宇宙船なんです。その技術を使えば、シンピ星まで順調にいけば、5ヶ月で行くことが出来ます」
リリアは、今までと違って力強く答えた。それは、勝彦に希望を持ってほしいと訴える様だった。
(という事は・・・さっきシンピ星まで2年かかると言っていたのが、5ヶ月で行ける様になったのか?だとすれば大幅に短縮出来るじゃないか!?)
「それじゃあ、そのシンピ星ってとこに往復10ヶ月くらいで行けるのか・・・?」
もし、それが可能ならば、1年以内にシンピ星に行って帰って来れるという事になる。シンピ星に行って帰って来る事が出来れば、地球が助かるかもしれない。
「あくまで目安で、必ず5ヶ月で着くというわけではないのですが・・・」
「でも・・・可能性がない訳ではないんだな・・・」
勝彦は落ち着いてゆっくり尋ねる。
「はい・・・」
リリアはゆっくりうなずいた。
勝彦はここですべてを悟った。
リリアが何を言いたいのか、そして、自分に何をさせたいのかを・・・。
「で、リリア。お前はどう考えているんだ?その言い方だと、俺にシンピ星に行けと言っているよう思えるんだけど・・・?」
勝彦は率直にリリアに尋ねた。
でも、勝彦はもうすでに返ってくる答がもう分かっていた。
(リリアがここまでの話を俺にしてくれるという事は・・・・俺に地球を救うチャンスをくれようとしているんだ。そう・・・地球人の中で唯一俺だけを!本当に、俺でいいのか・・・?)
勝彦は少し不安になった。自分みたいな普通の人間が地球の運命を握る事を。
「勝彦君が断れば、私は何も言いません。ただ、私は地球が大好きなのです。勝彦君がいる地球が大好きなのです。勝彦君が望めば、私は一緒に頑張りたいと思っています!」
リリアは力強い言葉でそう言ってくれた。彼女の覚悟の程が伺い知れた。その言葉で、勝彦の決心は決まった。でも、勝彦は気がかりな事が一つあった。それは、さっきアルテミスが反対していた事である。リリアの決断はもしかして大変な事じゃないのかと心配していたのである。
「お前の・・・お前の立場は大丈夫なのか?」
勝彦は恐る恐る聞いた。いくら地球の為とは言え、リリアの立場が危うくなる事が心配だった。
「発覚すれば重大違反ですが、命までは取られないと思います・・・」
リリアの目は、一点の曇りもなく真っ直ぐだった。リリアもまた、すべてを受け入れる覚悟が出来ている事がうかがい知れた。
「リリア様・・・」
アルテミスも、リリアを心配して声を出す。
おそらく、この決断はかなり思い切った事なのだろう。勝彦は、リリアのその決断を素直に受け止めようと思った。むしろ、これが地球に残された最後のチャンスである。勝彦にしか出来ない。勝彦だからこそできる、地球を救う最後のチャンスだった。
(逃してはいけない!)
「リリア、俺・・・やるよ!俺の行動で、地球の運命が握られているなんて全然実感がないけど・・・地球人じゃないリリアがここまで言ったんだ、俺がやらないで誰がやるんだ。それに、あの美しい地球を俺は守りたいんだ。地球を救うチャンスがあるなら、俺はそれに賭けたい!」
と、力強く答えた。
(俺は大した人間ではない。というか馬鹿だ!でも・・・地球を救うチャンスがあるならそれに賭けたいし、チャレンジしたい。それに、リリアがリスクを承知で、俺に地球を救うチャンスを持ってきてくれたんだ。俺がやらないで、誰がやるってんだ!?)
「はい!」
リリアは笑顔で答えた。




