第1章 37話
ここで勝彦は、レストランに居たあの子供の言葉を思い出した。
確かあの時「お姉ちゃんは地球を救う事が出来る星に、行く事が出来るんだ!」って言っていたのを思い出したのである。
だとすれば、ここまでの話の中で、あの言葉の意味を解決する話は出てきていないはずだ。もし、リリアがそのシンピ星に行く事が出来るのなら、まだ地球が助かる可能性が残っているんじゃないかと思ったからである。
勝彦は顔を上げ、その事についてリリアに尋ねた。
「なあリリア・・・・あの子供は言ったよな!リリアは地球を救う星に行く事が出来るって・・・それは、シンピ星の事なんだろ?」
「はい・・・・」
リリアは軽くうなずいて返事をした。
「確かに、私の星ベルウイング星は、そのシンピ星と少しだけ交流があります!」
リリアは、その事を素直に白状した。だとすれば、リリアは地球を救う方法を知っている・・・その星に行く事が出来る、唯一の宇宙人という事になる。
「だったらリリアは知っているのか?地球が助かる方法を?」
「いいえ・・・分りません!」
リリアは目を閉じ、顔をそむけた。
「何でだよ!リリアなら教えて貰えるんだろう?シンピ星に行ってないのかよ?」
さっきから、分からないばかりを言うリリアに、勝彦は次第に声を荒らげ、感情的になって言った。
「いいえ!リリア様は行きましたわ!」
勝彦の質問にアルテミスが答えた。そして、それに合わせるようにリリアが話し出す。
「はい・・・実は、私はシンピ星に行っていたのです!」
「だったら何故・・・・?」
勝彦の疑問に、リリアは遠くを見つめて語りだした。
「私は・・・・親の反対を押し切って、シンピ星に行ったのです。そして、超彗星から逃れる方法をシンピ星の人に聞きました。でも・・・・彗星から逃れる方法を、どうしても教えてくれなかったのです・・・」
「それは何でだよ!?」
「その・・・回避する方法は、実現がとても難しくて、シンピ星でも奇跡だったそうです。そして、その方法をどうしても知りたかったら、地球人自身が直接聞きに来なければ教えない。と、言われたのです・・・・」
リリアは悲しそうに言った。そして、とても悔しそうに・・・・。
勝彦の言う通り、リリアはシンピ星に地球を救う方法を聞きに行ってくれていた。そんなリリアに対して、さっき怒鳴ってしまった自分を少し恥じた。
そして、ちゃんとリリアは地球の事を思って行動を起こしてくれていたんだなと思った。でも、リリアはそれを教えて貰う事が出来ず、教えてほしければ地球人自身が直接聞きに来いと無理難題を言われていたのだった。
「地球人が・・・?だったら誰か、誰かいなかったのか?何なら俺でも・・・・」
勝彦は、尚もリリアに提案する。でも、リリアの表情が変わる事は無かった。
「残念ながら・・・・地球は正式な銀河連合加盟星ではありません!私達の技術を使って、純粋な地球人の太陽系からの脱出は惑星保護条約で禁止されています・・・・」
リリアは申し訳なさそうな顔をしていた。勝彦の期待に応えることが出来なくて本当に悲しそうにしていた。
その横で、勝彦は悔しさで打ちひしがれていた。地球人を連れて来いというシンピ星の人にも、そして、地球人は地球から出てはいけないという新銀河連合同盟の条約にも納得いかなかった。
「そんな!何でだよ!地球が滅んでしまうという理由があれば、そんな条約関係ないだろ!」
「もちろん、特例措置として申請を出しました。でも、認可は下りませんでした・・・」
「じゃあ何だ!?地球は銀河連合から見捨てられてしまったのか?」
リリアは勝彦から顔をそむけた。そして、リリアは言葉を絞り出すように答えた。
「そういわれても仕方がありません・・・」
「そんな馬鹿な!」
勝彦はリリアの肩をもう一度つかみ、食い下がった。リリアは続けて勝彦に告げる。
「でも・・・銀河系では、地球以外の多くの星が、ブラックホール、超新星爆発などで滅んでいます。あくまで新銀河連合は、宇宙の出来事としてとらえています。なので・・・地球に手を貸す事は出来ないのです・・・ごめんなさい・・・」
ここで、またリリアは申し訳ないという感じでうつむいて答えた。そして、リリアの目から一筋の涙がこぼれた。
それを見た勝彦は、リリアの肩から手を放す。
そして、ずるずるとその場で膝をつく。
「そんな・・・そんなー。助かるチャンスがあるかもしれないのに、俺達にはそれを実行する機会も与えてくれないのか!?」
勝彦は悔しさで叫んだ!本当は、地球が滅んでしまう事を受けていた。でも、地球人として、ホテルのレストランに集まったあの男の子や、多くの人達が地球を救いたいと動いているのを見て、悔しさが込み上げて来ていたのだ。
そんな勝彦に向かって、アルテミスは追い打ちをかける言葉を言う。
「・・・・勝彦殿、銀河連合では未開惑星に対して、不干渉は絶対なのです。それに、今から地球人をシンピ星に連れて行っても、今の技術では2年かかります。どちらにしても間に合いません!」
アルテミスの言葉で、勝彦はその場に蹲った。地球人に残されたわずかな希望も潰えてしまった事に落胆した。
「そんな・・・やっぱり駄目なのか・・・」
「・・・・・」
リリアは何か言おうとしたが、結局その言葉を飲み込んだ。
勝彦は、あの子供の言葉を聞いてから、もしかしたら地球を救うチャンスがあるのかな?と、思っていた。
もしかしたら、地球が助かる可能性があるんじゃないかと、ちょっとだけ期待していたのである。
でも・・・結局駄目だったのである。
リリアが言いにくそうにしていたのは、この事実を知られたくなかったからかもしれない。新銀河連合同盟が地球を見捨てている事や、地球を救う最後の手段が絶たれている事を言いたくなかったのかもしれない。
勝彦は、本当は地球が滅びる事を受け入れていた。でも、わずかな希望があるなら、それにすがりたいと思っていた。
あの男の子の気持ちや、リリアにすがって来た地球人達の思いを聞いて、勝彦は少しだけ気持ちが揺さぶられていたのだった。
(やはり、どう頑張っても地球は滅ぶのか・・・・?)
勝彦はすくっと立ち上がる。
リリアは、何か勝彦に声を掛けようとしたが、ここでも何も言えなかった。
そんなリリアに気づかず、勝彦は落胆したままバルコニーに出た。ホテルの外には、多くの地球人がホテルの前に集まっているのが見えた。みんな、リリアに地球を救う希望を見出している様だった。そんな地球人達を、勝彦は憐れみの目で見ていた。地球人でただ一人、勝彦はこの事実を知ってしまったのだから・・・。
(この現実を知ったら、皆、何て思うだろうか・・・?)
「・・・・・」
勝彦は冷めた目付きでバルコニーを後にする。すべてがふっ切れていた。地球が滅んでしまう事も。リリアがこの事実を隠していた事も。すべて受け入れる覚悟を決めていた。
だが、勝彦がバルコニーから戻り、リリアを見ると、まだ何かあるような雰囲気で話しかけて来た。




