第1章 36話
(これは気のせいか・・・出られないように閉じ込められたのか?)
どちらにせよ、リリアがいかに大事にされているのがよく分かる。
落ち着いたところで、勝彦はリリアにさっきの子供の話を聞く事にした。ここなら、誰にも邪魔をされず、リリアの本当の話を聞けると思ったからだ。
あの子供が言っていた「リリアなら、地球を救う事が出来る」という真実を聞き出せることが出来ると思ったからだ。
「ふうー・・・」
勝彦はため息をついてソファーの上に座った。そして、手を組みリリアを見つめた。
「リリア、聞かしてくれるよな・・・・」
勝彦の真剣なまなざしに、リリアも軽くうなずく。
「ご、ごめんなさい!勝彦君・・・うっぐ・・・」
リリアは泣き崩れた。隠していた感情を吐き出すかのように一気に泣き出してしまった。
勝彦は、真実をすぐにでも知りたかったが、泣かせてしまった事に動揺してしまい焦った。勝彦にはそんなつもりはなかった。まさか、リリアが泣いてしまうとは思わなかったのである。
「リリア・・・」
勝彦は泣きじゃくるリリアを見て、呆然と眺めていた。
リリアは勝彦よりも知識を知っていて、どこかの星のお姫様で、大人っぽい事を言っていて、地球の運命を知っている。
そんなリリアも(まだ子供なんだな・・・)と、勝彦は眺めていた。
「リリア様・・・私が説明しましょうか?」
勝彦が茫然と眺めていると、アルテミスがリリアに優しくそう言った。勝彦はその言葉を聞いて我に返り、泣いているリリアの元に駆け寄ろうとした。
ついうっかり、リリアが泣いているのをほったらかしにしていたからである。
でも、リリアはすぐ泣き止んで、立ち上がって勝彦の方を見た。それを見た勝彦はすぐに立ち止まった。
「ううん、私からちゃんと言うわ!」
リリアはアルテミスにそう返事をすると、真剣な顔をして勝彦の方に向いた。勝彦は、その真剣なリリアを見て、「もう大丈夫だな・・・」と、思い、もう一度ソファーに座った。
勝彦がソファーに座るのを確認すると、リリアはおもむろに喋りだした。その表情に、さっきまで泣いていた子供の姿はない。
「・・・本当は、地球に帰った時に話そうと思っていたんですが・・・今、地球に向かっている彗星は、本当に原因不明なのです。私達の技術では回避不能なのは本当の事で、昔から多くの星々が、あの彗星によって滅ぼされています。伝承によれば、人類発祥の星も、あの彗星に滅ぼされたとも言われています・・・」
リリアの真剣な表情から、とても嘘を言っているようには見えなかった。もちろん人を騙したり、隠し事をしている様にも見えない。
では何故、あの子供はリリアなら地球を救えると言ったのだろうか?
そして、リリア自身も何故、あの時否定しなかったのか?勝彦には聞きたい事が山ほどあった。
「何で・・・・そんな事が起きるんだ?」
その勝彦の問いに、リリアはすぐに答える。
「それは・・・わかりません!一説には宇宙の意思がそうしているとか、高文明の星が開発した兵器だとか言われています。でも、どれも確証を得ているものはないのです」
リリアの答えは確かなものではなかった。でも、勝彦が一番知りたかったのは、地球を救う事が出来る事に関しての話である。勝彦はすぐにリリアに尋ねる。
「でもよ・・・・あの男の子は、お前なら地球を助ける事が出来るって、言っていたじゃないか!」
確かにあの時、リリアはそれを否定しなかった。その事について、勝彦はどうしても理由を知りたかった。
すると、リリアは勝彦の質問を待ってかのように話し出しす。
「はい・・・実は、この銀河の歴史の中で、初めてあの彗星を逃れた惑星があるのです」
(何だって!?彗星の滅亡を逃れた星があるだって・・・?)
勝彦は驚いた。逃れる事が出来ないと思っていた彗星の衝突を回避できた星があるなんて、思ってもみなかったからだ。
「何!?・・・・それは本当か!?」
勝彦の心は躍った。もしかしたら、地球が助かるチャンスがあるんじゃないかと期待したからである。
「はい、ここから直線距離で約5万8000光年の所にある惑星シンピは、今から2000年前に、地球と同じように彗星に狙われたのです。そして、その時・・・・誰もが惑星シンピは滅びると言われていたのです」
と、リリアはゆっくりと、そして丁寧に勝彦に説明をする。
「で・・・その星は助かったのだな?」
勝彦は、喉をごくりと鳴らし、リリアに尋ねた。
「はい、シンピ星は見事に生き残りました!」
その言葉を聞いて、勝彦は安堵する。
(何だよ、助かる方法があるんじゃないか?でも、何故リリアは最初に地球が助からないと言ったんだ?)
勝彦は不思議に思った。そして、ソファーから立ち上がり、すぐにその真相についてリリアに尋ねる。
「だったら何故、地球は助けられないんだよ?」
「そ、それは・・・・」
ここでリリアは、また口籠った。言いたくないのか、言えないのか?どっちか分からなかったが、ここで言えないとは勝彦は言わせないつもりだった。
すると、勝彦はリリアに迫って、それを聞き出そうとした。
「リリア!」
リリアは勝彦から顔をそむけた。そして、申し訳ない顔をして言葉を絞り出す。
「すみません・・・分からないのです・・・・」
「はあ?・・・・どういうことだよ!?」
勝彦はリリアの肩を掴み迫った。
ここまで来て、「分からない」では納得出来るはずも無い。超彗星から助かった惑星がある、でも地球は助ける事が出来ない。その理由も分からない。では、とても納得出来ない。
勝彦の憤りに、リリアは申し訳なさそうに言う。
「それは・・・・シンピ星の人達が、それを教えてくれなかったからです・・・」
「何でだよ!」
尚も勝彦の激しい問い掛けに、リリアはゆっくりと喋り出す。
「はい・・・シンピ星が超彗星から助かった後、その真相を探ろうと何人もの科学者や研究者達がシンピ星へ調査に向かいました。でも、そのシンピ星は新銀河連合同盟の加盟惑星じゃなかったのです。ですから、真相について誰一人調査させてもらえなかったのです」
リリアはゆっくり丁寧に勝彦に説明をした。
「そんな・・・・」
それを聞いて勝彦は、後ずさりしながらソファーに戻り、ドスンっと座った。そして、リリアはさらにシンピ星について詳しく教えてくれた。
「彼らは他の星との争いを嫌い、交流をせず、他の星との接触をずっと拒否してきたのです。だから、何も教えて貰えなかったのです」
「クソ!鎖国ってやつか・・・・」
勝彦の頭の中に浮かんだのは、つい数日前に大学入試試験で受けた歴史の問題である。
日本もつい190年前まで江戸幕府が鎖国をしていた。その知識がこんな所で役に立つとは思わなかった。でも、そんな事はどうでもよかった。現実問題として、地球が救われる為には、その星がとった方法を教えて貰う他ない。




