第1章 33話
「この人達は・・・・地球からの難民の人たちです・・・」
と、さっきまで明るかったリリアは寂しそうに言った。それは、ここに並んでいる人達と同じ感じである。
「こ、この人達が・・・」
行列を見ていると、明らかに街中の人達と服装や雰囲気が違っていた。
街中を楽しそうに歩いている人達は、シンプルでパリッとした服を着ていて、まるでプラスチックの服の様な物を着ている。まさしく、宇宙人の様な格好で地球では見たことがない服装である。
だが、ここにいる人達は、いかにも地球で見かけるような絹や布で出来た服を着ていて、まさに地球人という感じだった。
それに人種も様々で、白人から黒人まで世界各国の人種の人々がいる。並んでいる人達の服装も、国際色豊かで統一性がない。アメリカ風、南米風、ヨーロッパ風、アジア風、もちろん日本人らしき人もいた。
「勝彦殿、難民認定してもらうには、ここで並んで申請をして、何か月もかかって、ようやく認定されるんですよ!」
と、頭の中でアルテミスが教えてくれた。
でも、勝彦はさっき管理長官に数分で簡単にやってもらったのを思い出した。
(そんなに時間がかかるなんて聞いていないぞ!)
「え?でも俺はさっき認定してもらったぞ?」
と、今言ったアルテミスの真相について尋ねる。
すると、その質問に、リリアがそっと答えてくれる。
「本当は、私達もここに並んで申請だけでもする予定だったんだけど・・・」
リリアは申し訳なさそうに言った。リリアが眺める瞳には、地球人達の行列が写っている。リリアは悔しそうに、悲しそうに、いつまでもその行列を眺めている。
「・・・・」
二人の間に一時の沈黙が続く。行列に並ぶ人達は、誰一人文句も言わず黙々と並んでいた。そして、誰一人騒いでいる人はいなかった。
勝彦は、ここに並んでいる地球人達は、一体何を考えているんだろうと思った。そして、地球の事をどう思っているんだろう?と考えていた。
(知らなかった・・・・難民認定してもらえるだけでもすごい事なのに、俺はこんなに簡単に認定してもらっていいのだろうか?俺は・・・本当はものすごく恵まれているのか・・・?)
勝彦はここに居る人達より、一足先に難民認定された事に少しだけ罪悪感を感じていた。
本来、ここに居る人達と同じように並んで申請を受けるはずである。でも、勝彦は管理長官の権限で数分でされてしまった。それは、リリアのお姫様としての権力を使ってである。
それに、勝彦は元々地球を脱出して助かるつもりはなかった。そんな自分が優先的に認定されてもいいのだろうか?と、勝彦の心の奥がキュッと痛くなった。
「さあ、行こう・・・勝彦君」
リリアが心配そうに声を掛けてくる。
「ああ・・・」
その場から離れて、勝彦はしばらくリリアと一緒に街中を歩きながら考えた。
地球は後一年で滅亡する。
そして、多くの人が地球から脱出しようとしている。地球にとてつもない危機が迫っているのは間違いない。
でも、勝彦は地球が滅んでしまっても、そこで一緒に滅びるつもりでいた。もうすでに、死を受け入れている。だけど・・・それと同時にここには地球を脱出しようとしている人達が大勢いる・・・。
(この人達は、地球に対する愛着はないのかな・・・・?)
と、勝彦は地球を脱出する人達を冷めた目でも見ていたのだった。
自分でも地球が滅びると聞いて、すぐに地球と運命を共にする決意をしたのに、ここには逃げ出そうとしている人達が居る。それが、何と無く許せなかった。
でも・・・・勝彦はすぐにその考えを改めて首を振る。
(いや・・・すぐに難民認定された俺が言える事じゃないな・・・)
勝彦は、自分には非難する資格がないと思ったのだった。
そもそも、大きな権力を使って難なく難民認定された自分には、そんな事を考える資格がないと思ったからである。
そう思うと、勝彦は苦虫を噛み潰した様な顔をして、罪悪感に似た複雑な気持ちでその場を後にしたのだった。
(それにしても、どうしても地球滅亡を回避できないものなのだろうか?リリア達の技術なら、何とか回避できそうなものなんだが・・・)
勝彦が深く考えていると、リリアが急に前にでてくる。
そして、向こうの方に見えている建物に指をさして話し出す。
「勝彦君!あそこに見えるホテルのレストランが、ものすごく美味しいので有名なんですよ。行ってみませんか?」
と、リリアが声をかけてくる。指を差された所を見てみると、少し離れ所に大きなビルが見えている。
「そうだな・・・行ってみるか・・・」
勝彦は気持ちを切り替えて食事をとる事にした。
よく考えてみれば、冥王星に着く前から、お腹が空いていた事をすっかり忘れていたからだ。
本当は管理局長と行こうとしたが、仮病を使って中止していたのをすっかり忘れていたのである。
それから、リリアに連れられて街の中心部からすこし離れた所にある、大きなビルのホテルのレストランに向かった。
そこは、この街で一番高い建物で、この街を一望する事が出来きる、ホント、いかにもセレブなレストランである。
勝彦とリリアは、そのホテルに着くと、早速入り、レストランがあるホールに向かった。
「へー、なかなかいい所だな・・・」
レストランの中に入ると、見晴らしのいい窓際の席に案内され、早速メニューを見る。
すると、見たことがない文字なのにいきなり何故か読むことが出来た。勝彦は、すぐに再構築されたおかげだなと思った。
(なるほど、確かに読めるな・・・)
そして、メニューには魚料理、肉料理、野菜料理など、数多くの料理が書いてある。
「ここでは、地球の料理が食べられるんですよ。特に一番人気が、勝彦君の国の、日本料理なんです。他にもイタリア料理、フランス料理、中華も食べることが出来るんですよ!」
と、メニューを見ていると、ここのレストランについてリリアが教えてくれる。
「へー、宇宙でも日本料理は人気なんだな・・・」
「今、地球料理でも、1・2を争う勢いなんですよ。私は、ここで日本料理を食べるのが夢だったんです!」
と、手を合わせて笑顔でニコニコしている。
「そういえば、リリア様は地球に来る前、このホテルの事をお調べになっていましたね」
「うん、すっごく楽しみなんですよ!」
「夢って、お前日本出身だろ!?」
て、すかさず突っ込んだ。リリアが日本料理を食べたいと言って、思わず突っ込んでしまった。日本生まれで、日本育ちなのに、何を言っているんだこいつは?と、思ったからだ。
「いえ、私はその時、犬だったので・・・地球にいた時、ドックフードしか食べていませんでしたし・・・・」
と、リリアは俺の突っ込みに対して、冷静に返してきた。




