第1章 30話
勝彦は、部屋を完全に出ていない今ならタイミング的ちょうどいいと思った。
(よし!オペレーションHARAIT作戦【腹痛作戦】略してエロ本隠しだ!)
「あ、痛!痛たたたたた・・・」
勝彦は、通路に出る直前で、その場でお腹を抱えてうずくまった。もちろん仮病である。
ちなみに作戦名は、(昔、その姿がお腹にエロ本を隠している様に見える事からそう名付けた。中学時代に・・・)
アルテミスはクー太の気持ちを感じ取る事は出来たが、自分はこの食事会をぶち壊すことが出来る。今ここで、これをやれるのは自分にしか出来ない。勝彦はそう思ったのである。
(どうだ!?俺の映画俳優顔負けの演技を見せてやる!!)
勝彦は、この演技に自信満々だった。この仮病は、今までの人生の所々で利用して来た。何度もやっていると、時には見破られることがあったけど、初見でこれを見破った人はいない。
「どうかなさいましたか?」
管理局長が勝彦の方を見て聞いてきた。
「すみません、急にお腹が痛くなって・・・」
「大丈夫ですか、勝彦君!?」
部屋から出ていたクー太が、慌てて駆けつけて戻って心配してくれている。どうやら勝彦が仮病を使っている事に気づいていない。
「ああ、大丈夫だ・・・心配ない。いつもの事だ・・・・緊張すると・・・いつも・・・・お腹が痛くななるんだ・・・・ただ・・・やっぱり、これからの食事はちょっと無理かも知れない・・・」
勝彦は苦しそうに、訴えた。その表情には油汗が出ていて、演技にしては迫真に迫っている。
「ふむふむ、それは困りましたね・・・」
管理局長は勝彦を眺めて困っている。このままでは、この部屋から出る事もままならない状況だ。クー太も勝彦の体を支えて心配している。
そんな中、勝彦はチラッとクー太を見て、ウインクをして合図を送った。それに気づいたクー太は、すぐに反応して管理局長に訴える。
「申し訳ないですがブレッド管理局長、どうやら私の連れは、ブレッド管理局長と食事する事にとても緊張しているようです。申し訳ありませんが、お食事は次の機会に・・・」
と、ここでクー太もタイミングよく食事を断った。勝彦は(うまい!)と思った。相手を立てて、丁寧に断る。これなら、管理局長の面子も立つ。
「むむむむ、そうですか・・・私はそんなにエライ人物ではないのですがな・・・」
局長は顎を触って考え込む。食事が出来ないという事に、心底残念そうにしている。
「でもまあ、そういう事では仕方ありせんな・・・・じゃあ私はこれで退散するとしましょうか・・・・」
「申し訳ありません!この埋め合わせは必ずしますので・・・・」
と、クー太が管理局長に謝罪をする。
「分かりました。それでは、お大事に・・・」
しばらくの沈黙の後、残念そうに管理局長とサラは帰っていった。どうやら、勝彦の仮病はうまくいったようだ。
「勝彦君・・・ホントに大丈夫?」
管理局長がその場を離れた事を確認して、クー太は心配そうに勝彦に声を掛ける。
どうやらクー太は、土壇場で話を合わせてくれていたかにもかかわらず、仮病だという事に気づいていない様だった。
すると、勝彦は管理局長が完全にいなくなったのを確認してから、クー太に向けてニヤリと笑った。
「何言っているんだよ、大丈夫に決まっているだろ!」
そう言って勝彦はケロッとして立ち上がった。
「勝彦君・・・やっぱり・・・」
クー太は一応心配したものの、勝彦の演技にようやく気づいて、元気な姿を見てホッとした。
「そう、あれは嘘!アルテミスがクー太は、管理局長と一緒に居たくないって、言っていたからな、一芝居打ってやったのだ!」
「勝彦君・・・別によかったのに・・・」
クー太は安心して、勝彦に満面の笑顔を向ける。その笑顔を見て、勝彦は不覚にも可愛いと思ってしまった。男の子の時も、何度も同じような感情に落ちいってしまったが、今度は女の子である。女の子を見て可愛いと思うなんてこれはやばい!と勝彦は思ってしまった。
(い、いけない!駄目だ!こいつはクー太だぞ!俺はロリコンじゃねー。それに、こいつはちょっと前まで男だったんだぞ!)と、自分に言い聞かせる。
さすがに、今までの様な気持ちでいられない。男の子だという言い訳が出来なくなってしまう。
勝彦はスーハ―と息を吸い込んで気持ちを落ち着かせる。そして、動揺を隠す為、すぐさま話題を変える。
「で、これからどうするんだ・・・?」
「そうですね、すこし街に出ましょうか・・・」
「おう、いいぞ!それを待っていたんだ!」
「ちょっと待ってくださいね今、着替えますから・・・・」
「お、おう・・・」
その言葉を聞いて、またドキドキした。
(き、着替える?もしかしてここで・・・?)
クー太は、この部屋に降り立った転送装置の機械の上に乗った。そして、アルテミスにお願いする。
「アルテミス、お願い!」
すると、クー太のドレスは、可愛らしいワンピースに変わっていた。
(な、なんだ・・・)
勝彦のドキドキも関係なしに、転送で一瞬に着替えは完了した。転送中、クー太は魔法少女の様に裸になることはなかった。
(別に期待していた訳じゃないが・・・何となくホッとしたような、そうじゃない様な・・・)何とも言えない変な気持ちだった。
だが、転送で着替えたクー太の服装は、急に子供らしくなったので勝彦の気持ちは冷めていた。
さっきまでドレスを着ていた時と違って、見た目が完全に子供になっていたからである。
それを感じた勝彦は(あ、よかった・・・・俺はロリコンじゃなかったな)とひと安心する。今まで、クー太の可愛らしい姿を見て、鼓動が早くなったのを、もしかしたら・・・・と、考えていたからである。
「今度はどうかな?勝彦君!?」
そう言われて勝彦はクー太をまじまじと見つめる。今度こそ返事を真面目に返そうと思っていた。
一応、心の中の感想としてはさっきと同じである。まだまだ幼い感じが抜けきれてない。




