第1章 27話
「勝彦殿、リリア様はベルウイング星の公式行事や、普段の生活では、こっちの姿の方が多いのですよ」
と、アルテミスの声が頭の中で響く。
「うわ!アルテミス、どこで喋っているんだ?」
船を降りたのに、アルテミスの声がどこからともなく聞こえてくる。
「はい、転送時に脳にマイクロ装置を入れておきましたので、船から離れていても船内にいる時みたいに会話が出来るのですよ」
と、教えてくれる。勝彦は、次から次へと起こる出来事に対応が追い付けずにいた。
「俺の脳の中に・・・」
自分の体の中に、勝手に変なものを入れないでくれと思ったが、入れられてしまったものは仕方がない。
それに、これだけ当然の様に言ってくるという事は大丈夫なのだろう。勝彦は、あれこれ細かい事は突っ込まない事にした。もうアルテミスやクー太達のテクノロジーの事で驚くのは慣れっこである。
「勝彦君・・・私、ど、どうですか?」
ここでクー太は、もじもじして聞いてくる。
(こ、これは・・・女の子になった自分をどうかと聞いているんだよな・・・)
「うーん・・・」
そう言われて、冷静にクー太を眺めてみた。確かに女の子らしくなっていて可愛い。
普通に考えたら、ここは『可愛いよ!』とか「『綺麗だよ!』なんだろう。
でも、勝彦はバリバリのモテない男で、非リア充である。そんな気の利いた言葉なんて、言う機会もなかったし、声に出したこともない。そんな奴に「可愛い」とか言える訳がなかった。
(さっきまでクー太は男の子だったのだぞ!そんな事恥ずかしくて言えるかー!)
って、勝彦は心の中で考えて一人で突っ込んだ。
そして、すぐに首を横に振る。
駄目だ!やはり、恥ずかしくて言えない。
「ダメ・・・だったかな・・・・」
クー太が勘違いして、寂しそうにしている。
「あ、いや・・・・」
(さーて、どうする?なんて声を掛けたらいいんだ?素直に可愛いよって言えばいいのか?それとも・・・・)
勝彦は改めて、まじまじと女の子になったクー太を眺めた。男の子の時もそうだが、まだまだ背が小さくて幼い感じがまだ抜け切れていない。(よし、これだな!)と、思った。
「クククク・・・・甘いな、クー太よ!」
「え?」
勝彦はクー太に対してビッシッと指をさす。
「その程度の変わりようでは、世界アイドル総選挙で1位を取る事は不可能だな!」
「アイドル総選挙?」
クー太は不思議そうにしている。そりゃそうだろう、いきなりアイドルの事なんて言われも戸惑うだけだ。
でも、勝彦はそのまま話を続ける。
「そうだ、地球にある世界的行事だ!世界各地にいるプロアマを問わず、すべてのアイドル女子が目指す総選挙の事だ!この選挙で1位になる事は、地位、名誉、名声、権力のすべてを握ることが出来る。かのアメリカ合衆国大統領にさえ発言する権利を持っているのだぞ!」
(最後の方は創作だけど・・・・)
「いえ、私はアイドルには・・・・」
クー太は勝彦の言っている意味が解らず、話を戻そうとする。だが、勝彦はそんなクー太の話に聞く耳を持たず、クー太が言おうとすることを遮った。
本当は勝彦もクー太が本当に聞きたい事を分かっている。でも、すべては返事をごまかしたいが為である。無理にでも勢いで話を進めた。
「シャラーップ!お前には一番重要な部分が抜けている!」
「え?」
「髪も伸びて、きれいに着飾って・・・確かにかわいくなった!」
「そ、そうかな・・・・」
クー太はまんざらでもない感じで喜んでいた。
「だが、しかしだ!なぜ胸だけはぺったんこなんだ!!?これでは全く萌えないわ!!」
と、クー太の胸に指を差す。
「え!?ええええ!?」
クー太は胸に手を当てる。
「そんなぺったんこの胸ではな!ごく一部の貧乳マニアとロリコンしか投票してくれん!多くの人に認められるには黄金の5条件が絶対必要なんだよ!」
「か、勝彦殿・・・・」
アルテミスが呆れて、うなだれた声をだしている。
「黄金の5条件・・・・それは、バスト!(でかすぎず、小さすぎず)ウエスト(細すぎず太すぎず)ヒップ(でかすぎず、小さすぎず)性格(思いやりがあって清楚明るい)顔(美人、可愛い、綺麗)お前には、一番重要な胸の部分が欠けている!」
「勝彦殿・・・・そんな周りくどい事言わないで、素直に可愛いいと言って差し上げればいいのですよ!」
と、アルテミスは、完全に呆れてしまって勝彦に提言する。どうやらアルテミスは勝彦の思っている事が分かっているみたいである。恥ずかしくて「可愛いよ」というその一言が言えないが為に、こういう事を言ってることを・・・・。
「ち、ちがう!俺はただ単にクー太にアドバイスをだな・・・・」
「勝彦殿・・・そういう事を言うからモテないんですよ!」
アルテミスが、勝彦が気にしている事をはっきり言ってしまう。勝彦は顔を真っ赤にして怒り出す。
「うるせー!っていうか、なんで俺がモテないって知っているんだよ?」
「む、胸ですか・・・・」
勝彦とアルテミスが言い合っている横で、クー太は自分の胸を見て、手をあてて落ち込んでいた。
勝彦の言っている事を、真剣に捉えて落ち込んでいたのだ。
「リリア様、気にする事ありませんよ。私の知っている地球知識によれば、こういうことを言う人間は、大体ヲタクとかニートと呼ばれて忌み嫌われていますから!」
「う、うぐ・・・・」
(くっそー、真司なみにはっきり言いやがって!)
真実だから言い返せない。その横で、クー太は勝彦に尋ねてくる。
「勝彦君は胸の大きい人が好きなんですか?」
と、言って目をウルウルさせて勝彦を見つめる。勝彦は、女の子の姿でクー太に見つめられてドキドキした。男の姿でもドッキってするのに、女の姿ならなおさらである。
「リリア様、大丈夫です。勝彦殿はロリコンですし、地球では貧乳は正義だといいますから大丈夫ですよ!」
と、アルテミスがクー太にフォローをいれる。




