第1章 26.5話
「あちゃー、やっぱり来ちゃったか。やっぱり会わないのは失礼だよね、アルテミス?」
クー太は頭を抱えて困っている。
(どうしたんだ?何かトラブルか?)
クー太の顔色から、困った事態に陥ったように見えた。
だが、思いがけないアルテミスの発言が勝彦の心配を吹き飛ばす。
「リリア様、ベルウイング第三皇女としての責任は果たすべきかと・・・」
(へ?こうじょ・・・?アルテミスは今、皇女と言ったのか?)
勝彦は「はっ」としてアルテミスの発言に反応する。
今、確かにアルテミスはクー太の事を皇女と言ったような気がしたからだ。
勝彦は、もしかしたら、今のは自分の聞き間違いじゃないだろうか?と、もう一度クー太を見つめる。
「ちょ、ちょっとアルテミス!」
クー太は慌ててアルテミスに話しかける。
「リリア様、隠していても無駄です。どうせ局長に会えばバレる事ですよ!」
と、アルテミスは、クー太に対して窘める。
「そ、そうだよね・・・でもね・・・」
クー太は恐る恐る、チラッと勝彦の方を見て、何やら勝彦の反応を気にしている。
やはり、アルテミスが言った言葉は本当の事の様だ。クー太がこれだけ慌てているのだから、間違いないだろう。
勝彦は、思い切ってクー太に尋ねてみる事にした。
「なあ、皇女って・・・誰の事だよ?」
勝彦の質問に、クー太は押し黙る。
だが、その質問に対しては、アルテミスの方が答えてくれる。
「それはもちろんリリア様の事ですよ、勝彦殿!」
と、はっきりアルテミスが答えた。
「ふーん・・・・って、え、えええええええええ!?クー太が皇女様!?」
クー太は恥ずかしそうにしている。否定をしないという事は、真実なのだろう。
「ということは・・・クー太はお姫様?」
勝彦は指をさして、手が震えている。今までずっと男の子扱いをしてきたから驚いた。
確かに、最初クー太は女の子だという話は聞いていた。でも、幼いながらも体格は少年っぽかったし、喋り方も少年っぽかった。だから今まで男の子として扱って来た。
それに、今までそれで特に問題もなかったし、勝彦の中ではもう完全にクー太の事を男の子として判断していた。
だが、その判断はここで打ち砕かれた。
クー太が姫様だという話は聞いていなかったし、お姫様に向かって男の子扱いは流石にまずいと思った。
そう思うと、勝彦の頭の中でパニックになっていた。
「そうですよ、前にも言いましたよね。リリア様は女性として育った期間が長いって!」
と、ここでアルテミスはもう一度勝彦に念を押してくる。
「ああ・・・でも、だって今は男じゃないか?それに、お姫様って話は聞いてないぞ!」
勝彦はアルテミスに反論した。でも、アルテミスが答えるよりも、クー太が先にアルテミスに対して怒る。
「もう!アルテミスは黙ってて!!」
そして、クー太は勝彦に向かって訴えた。
「勝彦君・・・僕はあくまで勝彦君にとってはただのクー太です。だから、今は男の子の姿でいるんです。だって僕は、昔の様にクー太って呼んで欲しかったから・・・」
クー太は勝彦の方に振り向いて、まっすぐ見つめた。その仕草は、男の子ながらも女の子の様にみえる。
「あ、ああ・・・わ、わかったよ!」
勝彦は後ずさりして答えた。クー太がお姫様と知って、先入観的に女の子見えたのだ。勝彦は、なんだか複雑な気持ちになっていたのである。
(男に見つめられているような・・・女の子に見つめられているような・・・)
何とも複雑な気持ちだった。しかも、実はお姫様である。
「ところで勝彦君、向うには転送で行くんだけど、もう準備はいいですか?」
何気にクー太は話を進める。本当はお姫様だという事をもっと知りたかったが、聞きけなかった。
今さっき言った、クー太の「僕は勝彦君にとってはただのクー太です」という気持ちを尊重したかったからである。もちろん、勝彦にとってもクー太である。それは変らない。
「あ、ああ・・・いつでも、いいぞ・・・・」
勝彦は力なく答えた。衝撃の事実を知るまでは、いつでも冥王星に行くつもりでいた。
でも、今はクー太がお姫様という事が頭から離れなかった。「じゃあアルテミス・・・僕の服装をベルウイング外交用正装で港に転送して!」
そして、クー太はアルテミスに何かを指示をする。
「わかりました!お任せください!」
アルテミスがそう言うと、勝彦とクー太はすぐに転送されてしまった。また、いつもの様にめまいがした後、気が付くと小さな小部屋に転送されていた。そこには大きな機械が置いてあって、勝彦はその上に立っていた。
「ここは何処だ・・・?って・・・お前誰だ!?」
隣にいるはずのクー太に声を掛けようとしたが、隣にはドレスを着た可愛らしい女の子が立っていた。
「いやですね勝彦君、私がクー太ですよ!」
と、その少女はクー太と言い張る。確かに、一緒に転送されてきた事を考えれば隣に居るのはクー太のはずである。でも、目の前に立っている少女は紛れもなく女の子だった。
(よく見れば髪の色、顔立ち・・・・確かにクー太の面影が見える・・・)
「ええ!?お前がクー太?・・・お前女の子になったのか!?」
髪の毛は長くなっていて、体格も華奢な女の子みたいになっている。顔立ちこそクー太そのものだったが、少年だった面影は完全になくなっていた。
(ウソだろおい・・・)
くー太は少し化粧をしていて、可愛らしい女の子と言った感じである。




