第1章 20話
「ああ!そういう事なんですね!つまり、死んで魂になっても、ずっと地球に居続けるって事なんですよ」
理解したクー太が、納得して言い直してくれる。
(理解されるとさらに恥ずかしい・・・・)
勝彦は、恥ずかしさのあまり話を進める。
「で、でも、お前は別の星で生まれ変わったんだろ?」
「僕の場合は、たまたま地球観光に来ていた、父と母の宇宙船に引き込まれただけなんです。だから、本当は地球で死んだら、地球で生まれ変わるのが普通だったんですよ」
「ふーん、でも、それが転送技術と一体どう関係あるんだ?」
「実は、その魂が重要でして、魂概念と、異次元概念がくっついた事で、転送理論が確立されたのです。転送する時、物体は原子レベルまで一度分解して、異次元空間を移動してから、もう一度再構築するのです。そうすれば、物体が異次元空間を移動して現れる事が出来るのです」
「うーん・・・ということは・・・魂も一緒に動くという事か?」
勝彦は無い知恵を絞って一生懸命考えてみた。
「そうです・・・でも、もし、魂概念というものが無かったら、元の場所から異次元空間を通って再構築すると、魂はその場において行かれてしまうのです。つまり、肉体があるのに、中身のない抜け殻になってしまうのです」
「それって、事実上死んでしまった事になるんじゃないのか?」
「ううん、肉体は生きています。でも、それはもう本人じゃないと言えるでしょう」
「そうなったらどうなるんだ!?」
「それはまだ解明されていません。記憶はあるけれど、一応別人が出来上がる事になります。でも、その魂は一体何処から来たのか、まだ解明されていないのです」
「ちょっと待て、転送が失敗したら俺は別人になるのか!?」
「それは心配する必要はないです。転送事故が起きたのは、ここ最近で、千年に 一度あるかないかですから。転送技術というのは、必ず魂と物質を一緒に移動させて、再構築するものなのです」
「魂か・・・ホント宗教だな・・・」
「この3次元内では、物体は光の速さを越えて、移動する事は出来ません!でも、別次元なら越えることが出来る。これが転送と言われる、超空間転移技術なんですよ」
と、クー太はニコリと微笑んだ。
「それじゃあ、原子なら別次元で自由に移動する事が出来るんだな?」
「はい、地球ではまだ解明されていないですけど、原子に、あるエネルギーを加えると、別の原子に変換されるんです。その原子は、自由に4次元、5次元に送る事が出来るのです。そして、転送されて、実体化する時、元の原子に戻る事が出来るのです」
「四次元・・・だったら、タイムマシンが出来てしまうんじゃないのか?」
「残念ながら、確定してしまった過去は戻せません。時間という概念は、別次元に行っても一緒なので、物体を過去に転送する事はできないのです」
「ん・・・!?矛盾してないか!?それは何でだよ!?」
「んーと、もし過去に、今現在の勝彦君の原子を転送すると、現在という時間軸からずれて、転送する事になります。つまり、存在しない時間軸に物体転送した事になるのです。ずれた時間軸上で、物体を再構築すると、今現在わかっている事は、消滅すると考えられています」
「ふーん・・・要するに、過去には行けない。転送する時は同じ時間軸上で、それと魂と一緒じゃないと出来ないという事だな!」
ここまでが、今、勝彦が理解できた限界だった。これ以上話を聞くと、頭がパニックになりそうだったので、もう聞くのを辞めようと思った。
でも、今聞いた事をまとめると、勝彦はこの様に理解したのである。
「そういう事になります」
疑問点はまだまだ一杯あったが、これ以上質問をすると、ますます訳が分からなくなりそうなので、もう辞める事にした。
(限界だ!もうこれ以上聞くのはもう辞めよう・・・)
そして、勝彦はクー太と難しい転送理論について話をしている途中、外の宇宙 空間の景色を何気に眺めて気にしていた。
実は、話している途中にも、何度も大きな岩の塊が宇宙空間に漂っているのを見かけていたからだ。
「あ、まただ!何だ?さっきから・・・急に岩ばっかり見かけるようになったな!?」
と、勝彦はすぐに外の宇宙空間に注目した。勝彦は、話の内容を変える為にも、これはいいきっかけだと思った。
すると、それにつられるようにクー太も外を見る。
「うーん、たしかにそうだね。アルテミス!何か分かる?」
と、クー太はアルテミスに尋ねる。
「はい、ただ今アステロイドベルトを通過中です!」
「アステロイドベルト?」
(まったく聞きなれない言葉だな・・・)
不思議そうな顔をしていると、冥王星までの道筋を映し出した、透明の3Dプロジェクタースクリーンが出てくる。
そして、アルテミスが画面を通して説明を始める。
「はい、小惑星帯の事ですね。惑星になれなかった残骸が漂っている宙域です。ここを越えると、木星まであともう少しです」
画面には、地球と火星と木星の位置が示されていて、その間に岩石が示されている。
「ふーん、なんだかゴミゴミしたところなんだな・・・」
と、宇宙空間を眺める。
「そう見えますけど、実際は岩と岩の距離はものすごく離れているんですよ!」
「典型的な、星系の環境だね!」
そう言ってクー太も同意する。
「へー、光速で通っても、岩にぶつかったりはしないのか?」
「はい、よっぽど狙って飛ばないと、岩石にぶつかることはありません!それに、レーダーで捕捉したら、自動的に避ける様にしていますので・・・」
「ふーん、まあ、それならそれでいいんだけど・・・で、それで後どれくらいで着きそうなんだ?」
「そうですね、アステロイドベルトを越えたら、後15分くらいでしょうか?」
「うーん、15分か・・・じゃあ、アルテミス!もう一度さっきのレストランを出してくれよ!」
勝彦は、アルテミスにもう一度お願いする。木星までの到着時間が後15分という話を聞いて、少しゆっくりしたいと思っていた。
火星を出てからずっと立ちっぱなしで、難しい話をしていたから疲れてしまっていた。早く椅子に座って、ゆっくりジュースでも飲みながら星を眺めていたいと思っていたのである。
「わかりました・・・」
すると、またもや部屋全体がさっきのレストランの様に一瞬で変わってしまった。
「勝彦殿、お飲み物を出しましょうか?」
と、気をきかしてアルテミスが聞いてくる。さすが人工知能だ。気が利いている。
「また、コーラで頼むよ!」
そう答えると、カウンターにコーラが出てきた。それを持って勝彦は、宇宙の星々を見渡せる席に座った。そして、クー太もそれにつられるように一緒に座った。
「ふう・・・」
コーラを一口飲むと、ため息をついた。
「どうかしたんですか?」
と、クー太が尋ねる。
「宇宙って広いなあと思ってな・・・」
勝彦は宇宙をずっと眺めていた。
「そうですね、僕達の技術でも、銀河系から少し離れたくらいまでしか一般的には知られていませんからね」
と、一口コーラを飲む。
「そうなのか?」
「アルテミスでも、隣のアンドロメダ銀河まで行こうとしたら、60年以上かかりますからね」
「へー、隣の銀河でもそんなにかかるのか?俺はてっきり、もっと宇宙の端まで行けるもんだと思っていたぞ!」
クー太達の技術を見ていたら、ものすごい遠くまで行ける様に見えるのに不思議だなと思った




