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俺とクー太の銀河物語  作者: カツヒコ
序章 出会いと別れ
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序章 2話

一年前の卒業式


「はああああああああああー・・・!!」

 ある高校の桜が蕾を付け、晴れやかな天気の中、勝彦はただ一人ため息をついていた。

 勝彦はたった今・・・卒業式を終えて体育館から出てきたところである。

 卒業証書授与もおわり、在校生の見送りの言葉も終わり、何事もなく式は終わっていた。

 すべての行事が終わり、卒業生は記念撮影など、皆、思い思いに自由に楽しんでいる。

 実際、勝彦もさっきまで友人達との写真撮影も終わったばかりである。

 だが勝彦は、そっとその友人達と離れる事になった。

 別に、喧嘩した訳でもボッチ(一人ボッチ)にされた訳でもない。自分から気を利かせて離れたのである。

 何故なら、卒業生のイベントの告白や、彼女との記念撮影が始まったからだ。

 彼女のいる友人は「ちょっと悪い!」と言って彼女の方に行き。もう一人の友人は、後輩の女の子が「お話があるんです・・・」と言ってどこかに消えていった。

 一人ポツンと残った勝彦に、ため息が出ないはずがない。

 唯一の救いが(救いか?)一緒によく遊んだ後輩の男二人が、勝彦を見送りに会いに来た事位である。

「どうしたんですか?西田先輩!!」

 そばにいた後輩の男は、けだるい感じで勝彦に尋ねてくる。

 この男は、門脇真司と言って一年下の後輩である。

 勝彦と真司との関係も早2年、いつの間にか先輩としての威厳はなくなり、同学年の友人といった関係になってしまっていた。

「うるさいな!ため息も出てしまうんだよ!」

 と、イライラした気持ちを爆発させ、その気持ちを真司にぶつけた。もちろん、ただの八つ当たりである。

「はあ・・・・で、それは何でですか!?」

 それでも真司は、うんざりと言った感じで聞いてくる。真司自身も、何故イライラしているのか分かっているが一応聞いてみたのだった。

「あっちを見てみろ!あのリア充どもを!」

 指差した先には、卒業生のお決まりのイベントである制服のボタン争奪戦が行われている。

 また、その周りでも、女子生徒からの男子生徒への記念撮影や花束の贈呈なども行われていて、ごくありふれた卒業風景が繰り広げられている。

「別に・・・何か問題でもあるんですか・・・?」

 と、真司は一応指差された所を見たが、うんざりといった感じで答える。

 どうやら、真司には勝彦が何を考えているのか、もうすでに分かっている感じだった。

「な、なんだと?お前はあの光景を見て、何も感じないのか!?」

「別に・・・なんていうか・・・あえて言うならほほえましい光景ですよね!」

 そう言って真司は、後頭部を少しポリポリと掻きながらしれっと答える。

 その姿に、先輩としての尊敬の念は感じられない。

 ただでさえイライラしているのに、真司のそっけない態度に、勝彦の怒りは頂点に達しようとしていた。

「ぐううううう!お前という奴は!」

 勝彦は、地団駄を踏み、真司のそっけない態度に全身を震わせて悔しさをにじませていた。

「先輩!!俺は・・・俺は・・・ぐやじいです!!」

 真司の横に立っていた、もう一人の後輩が目に涙を浮かべて悔しそうに勝彦に言う。

 この男は高橋孝司と言って、一学年下のもう一人の後輩である。つまり真司と同級生であり、勝彦の事を尊敬しているので真司と違って尊敬する先輩として接してくれている。

「そうだろ!そうだろ!お前ならわかってくれるよな孝司よ!」

 と、同意してくれた孝司と目を合わせ、勝彦と孝司は真司を睨みつける。

「お前みたいなリア充にわな!モテない男の気持ちなんて分らないんだよ!」

 勝彦と孝司の、二人の鋭い目つきが真司に対して注がれる。

「そうだ!そうだ!リア充は爆発しろ!!」

 孝司は、勝彦に同調するように真司に言葉を浴びせた。勝彦達の顔は、真司に対する恨みと憎しみで一杯な形相をしている。傍から見たら、モテない男がモテる男にひがんでいる状態である。

 そして何よりも、真司自身が本当に自分はモテていないと思っている事が勝彦達の怒りを増大させていたのだった。

「爆発って・・・・俺は別にリア充じゃないんけど・・・」

 真司はまた二人の意味不明な逆恨みが始まったといった感じで、不満そうに答える。この様な不毛なやり取りは、数ヶ月前、勝彦が在校中でも頻繁に見られていた。

「嘘をつけ!!お前は立派なリア充だろ!!お前は・・・お前は・・・俺達の女神様・・・霧條様と・・・うぐっううう!」

 すぐさま真司の言葉を否定して、血の涙を流しながら悔しそうに言葉を絞り出した。

「うっ、キ、キモイ・・・」

 と、言って真司は勝彦達から後ずさりをする。

 だが、勝彦達には真司の言葉を否定する明確な理由があった。

 真司には、霧條彩夏という少女の幼馴染がいて、どこかのハーレムアニメの主人公ばりに天然ジゴロなのである。

 本人はいつも否定しているが、霧條彩夏を始め、複数の女子との接点を持っているのを、勝彦と孝治は知っていた。

(これをリア充と呼ばずして、なんと呼ぶか!?)

 勝彦と孝司は心の中で真司に突っ込んでいた。

 だが、声に出して言えない。言えば、それを認めた事になるからである。

 さらにそんな二人には、どうしても認めたくなかった理由がるのだ。

 高校生活の2年間、霧條彩夏のファンクラブであるKS団を作り、同志を募ってアイドルオタクばりの活動をしていた。

 なので、勝彦達にとって真司に対する敵対心はとても大きかったのである。

「西田先輩、何度も言ってますけど、俺と彩夏はそんなんじゃないって、何度言えば分かるんですか!?」

 と言って、真司はやれやれといった感じで力強く答える。

 真司は、そんな二人の気持ちもお見通しで、これまで何度も二人に訴え続けて来た。

「うるさい!!お前の言うことなんか信じられないんだよ!!この裏切り者!!」

「うらっ、裏切り者!?何言ってるんですか先輩!?勘弁してくださいよ!」

 と、真司はまたやれやれといった態度を示している。

「おのれー!」

 そう言って勝彦は、真司をじろりと睨みつける。

「で、何で裏切り者扱いなんですか?まったく・・・・」

 だが、真司は睨まれてもほとんど気にせずに呆れ果てている。

「うぐぐぐ・・・」

 その真司の冷静な返事に、勝彦は即座に答える事が出来ずにいた。

 完全に勝彦の八つ当たりなのだが、勝彦はもう一つ秘密を隠し持っていたからである。

 実はほんの数日前・・・・もうすぐ卒業ということもあり、勝彦は霧條彩夏に思い切って告白をしていたのだった。


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