第1章 14話
(「そうですね・・・光速航法で5時間くらいでしょうか・・・」
「そんなにかかるのか!?・・・もっとワープとかでバアって一瞬で着かないのかよ?」
SF映画やアニメなどの宇宙船なら、そういう事が出来るはずである。
「恒星系内での短距離ワープ、つまり超空間転移は禁止されているんです。惑星間の重力波に重大な影響を及ぼす可能性がありますからね!」
と、クー太が説明してくれる。
(超空間転移・・・?またよくわからない設定だけど、とりあえず時間がかかるという事だな・・・)
「ということは、往復で10時間ちょっとか・・・・」
勝彦は少し悩んだが、大学入学まで暇だから時間はたっぷりある。今、一番心配なのは、帰って来れなくなる事である。
「結構かかるけど、まあいっか!じゃあとりあえず、冥王星まで行きますか?」
と、クー太に向かって言った。勝彦は、これまでのクー太との会話の中で、少しずつ信用する様になり、今では完全に信用していた。最初とうって変わって、もうすでに行ってみたいという気持ちに変わっていたのである。
「はい、わかりました!」
クー太も、勝彦が行く気満々で嬉しそうにしている。
「それじゃあアルテミス、冥王星までの航路を出して!」
クー太がそう言うと、地球が見えている場所の上に、画面スクリーンがパッと現れた。そのスクリーンには、太陽系の図面が大きく分かりやすく示されていて、太陽を中心に、地球、火星、木星、土星などの惑星が立体映像で映し出されている。
さらに映し出された映像には、冥王星までの直線コースと時間が指し示されていて、さすがテクノロジーが進んだ宇宙船である。まるでSF映画を見ている様な光景だった。
「冥王星までの飛行時間は、直線距離で約5時間45分です。もし、よろしければ、どこかの惑星に立ち寄ってみますか?」
とアルテミスは映像が映し出された後に思いがけない提案をしてくる。
「いい考えだね、勝彦君、もしよかったら太陽系を観光してみませんか?」
続けてクー太も同じことを提案して来た。
(待て待て!そんな事が出来るなんて聞いてないぞ!)
「マジで・・・?というか、俺、ほかの星に行ってもいいのか?」
勝彦は、自分みたいな宇宙に出た事ない普通の人間が、気軽に他の惑星に行ってもいいのか不安だった。地球人でも宇宙に出るのは選ばれた人達だけである。
ましてや、ただの学生の自分が、人類の偉業を先に達成してもいいのだろうか?と、勝彦は後ろめたい気持ちで一杯になっていた。
「はい大丈夫ですよ、ちょっと時間はかかりますけど、他の惑星に立ち寄っても問題ありません。近いところでしたら、火星と木星と、海王星なんかは、割と近いから、そんなに時間はかからずに寄る事が出来ると思いますけど・・・」
不安で一杯の勝彦をよそに、クー太は画面を見ながら気軽に説明してくれる。 勝彦の不安なんて全く必要ないと言わんばかりの軽い感じで説明してくれる。
「おお!それは面白そうだな!で、で!それってどれくらいかかるんだ?!」
心配する必要なんて無いんだと判断すると、勝彦のテンションはみるみる上がっていった。
「うーん、そうだな・・・・全部回れば多分片道7時間~8時間くらいになると思うんだけど・・・」
クー太が不安そうに勝彦に尋ねる。
「8時間か・・・まあ、帰りは直で帰るからいいとして、往復15時間ほどになるのかな・・・」
(うーん、結構かかるな・・・)
勝彦は、特別早く帰りたいという訳じゃなかったが、日帰りで行ける範疇を超えて来る事に少し不安を感じていた。
でも、未知との遭遇が待っていると思うとテンションが上がって、すぐに行こうという気持ちに変わった。
どうせ早く帰っても、大学が始まる迄、殆どやる事がないから暇である。
(よーし!それなら冥王星ってとこを、見てやろうじゃないか!)
「まあいいよ!大学入学まで暇だし。もともと2~3日は予定ないからな!プランはクー太に任せるよ!」
勝彦は、むしろ大学が始まるまでのいい暇つぶしが出来たと考えていたのだった。
「ほんと?じゃあアルテミス!!いざ太陽系観光に出発だ!」
と、クー太も上機嫌で号令をかける。
「かしこまりました。では、私にお任せください!」
だがここで、「ちょっと待った!」と、勝彦はすぐに止めた。
「何?どうしたの?」
クー太が不思議そうに勝彦を見つめてくる。
「5分間だけ、5分だけでいいからじっくり地球を見させてくれないかな!」
勝彦は、いざ出発と聞いてもう一度地球をじっくり眺めたいと思ったのだった。せっかく目の前に大きな地球が見えているのに、早々に出発するのはもったいない。
地球から離れる前に、ゆっくり見ておきたいと思ったからだ。地球を・・・わずかの間とはいえ、離れる事に無性に寂しさを感じたのである。
「う、うん・・・いいけど・・・」
せっかくやる気に満ちていたクー太は、拍子抜けを喰らったかの様に戸惑っている。確かに、よくよく考えてみればどうせまた地球には戻ってくる。
でも、なぜだか勝彦は、ここで地球をしっかり見ておかなければならないと思ったのである。
「悪いな・・・これからって時に水を差して・・・」
「そんな事ないよ、僕も見ておきたいからね!」
クー太はニコリと微笑む。
「わかりました。では5分後に出発しますので・・・」
と、アルテミスが出発時間を告げる。それを聞いて、勝彦は地球を眺めややすい場所にゆっくりと歩き出す。勝彦の目の前には、青く輝く大きな地球が輝いていた。




