第1章 13話
(もしかして・・・クー太の体は女?心は男?それとも逆か?)
そんな文化が宇宙にもあるのだろうか?と、勝彦の頭の中であらゆる妄想が駆け巡っている。
「ち、違うよ!!」
勝彦の表情を見て、クー太は何かを悟ったのか、少し気まずい顔をして激しく否定した。そして、すぐに誤解を解こうと詳しい説明を始める。
「えっと・・・その、僕たちの星では、種の保存の為、いつでも好きな時に男にも女にもなれるんですよ。それは、手術とかではなくて、再構築と言うんです。つまり、人間を原子レベルまで分解して、自由に男性として、もしくは女性として再構築する事ができるのです・・・」
「へ?・・・・・自由に?」
「そうです、男として生きるのも、女として生きるのも自由だし、その日の気分で今日は女の子でいようとか、男の子でいようとか選べるのです」
「まじで?!」
「はい、だから僕達ベルイング星人は、男女という考えがあまりないのです」
「再構築・・・それで女にも男にもなれるのか。本当にそんな事が出来るのか?」
勝彦は口をポカーンと開けて、現代科学を越えたテクノロジーに唖然としていた。
最初の頃のような疑いはもう無かったが、さっきからクー太達が言っている事は常識を超えた事ばかりである。とても話についていけなかった。
「何を言っているんですか!勝彦君もすでに、一度再構築されているんですよ。地球からここに転送した時点で、勝彦君は一度再構築されているんですから!」
勝彦が感心していると、クー太は衝撃の事実を告げる。
(ど、どういうことだ?!いつのまにそんな事をされたんだ俺は?!)
「へ?・・・・マ、マジで!?」
「・・・・マジです!!」
クー太は真剣な目つきで答える。
(俺が一度再構築されている・・・・・)
勝彦は信じられなかった。何故なら、何処にも体の異常はないし、違和感を感じた事もない。再構築をされたという感覚が全くなかったのである。
「じゃあ俺は・・・女になってしまったのか!?・・・ん?でもちゃんとついているぞ?」
あせって股間に手を当てると、ちゃんと例の物はついている。勝彦はそれを確認して一安心した。再構築されると女になると聞いて、自分自身の体に不安を感じたからである。
(俺はちゃんと男・・・・だよな・・・・?)
「あははははははは!」
クー太は勝彦の行動を見て大笑いしていた。
「設定を女性に変えて、再構築しなければならないから、心配しなくても女性にはならないよ。もし、お望みだったら勝彦君を女性にする事もできますけど?」
クー太にそう言われて、頭の中で自分が女の姿になった姿を想像してしまった。
「だが断る!!俺は男のほうががいい!」
と、勝彦は激しく否定した。
(女なんかになってたまるか!)
想像した自分自身の女の姿は、とても気持ち悪かった。
「そういえば、俺、さっきから日本語喋っているんだけど、お前達が喋っている言葉って・・・日本語だよな?」
と、ここで思い浮かんだ疑問について尋ねる。
勝彦は、クー太の性別問題が解決すると、今度は宇宙人であるクー太達と、普通に会話が出来ている事自体に疑問を感じた。
一旦、クー太達の存在を受け入れると、疑問点が次々と思い浮かんでくる。冷静に考えてみると、今、勝彦の置かれている状況は非常に矛盾だらけである。
「ううん、違うよ。勝彦君が喋っている言葉は日本語だけど、僕が喋っている言語はベルウイン語だよ。僕の脳の中には、全宇宙の言語がインプットされているからね。どの言語の人とも会話が可能なんだ」
「でもよ、俺はベルイウング語なんて知らないぞ。何でクー太の喋っている言葉が分かるんだよ」
そもそも、言語が違うはずのクー太達と何故一緒に会話が出来るのか気になっていた。
「それは勝彦君も、この宇宙船に転送する時に全宇宙の言語を喋れるようにインプットしたからだよ。だから勝彦君と僕は、言語が違うのに会話が出来ているんだ」
「じゃあ、俺が日本語を喋ってクー太がその・・・べる・・・」
「ベルウイング語?」
「そう、そのベルイウング語喋っているのか?」
「そうだよ、お互い頭の中に意味が入ってきて無意識に会話しているんだ。たとえ勝彦君の脳がインプットされていなくて、日本語しか話せなかったとしても、僕の脳はインプットされているからね、無意識に自然と日本語を話す事が出来るんだ」
「え?という事は・・・・俺も?俺の脳もインプッされているのか?」
「うん。さっき勝彦君は再構築されていると言ったでしょ。再構築は、人体の能力を向上させる事が出来るからね」
「・・・・そんな事をされて、俺は大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。僕達の星では、日常的に行われている事ですから。でないと、全宇宙の人と会話が出来ませんからね。全銀河を移動する為には、多言語を喋り、理解しなければなりません。それに、重力の違う惑星に降り立つためには筋力が必要です。自分の体を、全銀河にある各惑星のそれぞれの環境に合わせないと、全銀河の人々と交流が持てませんからね」
「多言語を喋れる様に、脳をインプット・・・・」
いまいちピンと来なかった。勝彦は、クー太とはこれまで普通に会話して来たから、自分がクー太の星の言語を理解しているとは思っていなかったのだ。
「ちなみに、不便なのは会話だけだから、肉体は強化してないですよ。勝彦君にインプットしたのは全銀河の言語だけだよ」
「全銀河・・・・それは地球も含まれるのか?」
「うん、英語、フランス語、中国語、スペイン語、ドイツ語、何処の国の言葉でも大丈夫だよ」
「マジで?じゃあ・・・俺は英語も中国語も喋れる様になったのか?」
「はい、一応そのはずです!」
「ん?その割には・・・俺はいまいち喋れる気がしないんだが・・・?」
頭の中に英語の単語が出てこない。まったく喋れる気がしなかった。
「そうですね、直接学習したわけでないですからね。勝彦君の記憶の奥底に、インプットしただけですから。実際に会話してみると会話が出来るはずですよ」
と、気軽に言ってくる。
(ふーん、本当に俺は英語が喋れる様になったのか?まあ、クー太とはこうして話をしている訳だけど・・・・)
「・・・・まあいいか。それで、その冥王星って所までは、どれ位かかるんだ?」
勝彦は、自分の言語能力の事よりも、これから自分が何処に連れていかれるかの方が気になった。
そもそも、自分の英会話能力なんてもうどうでもいい。何故なら、元々諦めているし、別に喋れる様になりたいと思った訳でもない。今知りたいのは、今から連れて行かれる場所である。泊りなのか、日帰りなのか?それによって心構えが変わってくる。




