第1章 11話
「クー太・・・お前・・・あのさ・・・」
ここで勝彦は、クー太に断る理由を考えた。クー太は、勝彦を地球滅亡から救い出そうとわざわざやって来てくれた。今の反応からみて、そう簡単には引き下がらないだろう。
(さて、困ったぞ!)
勝彦は、地球が滅ぶなら自分だけ助かりたいとは思っていなかった。
(どうせ死ぬなら地球で死にたい・・・)
勝彦はそう思っていたのだ。
そして「はあー」と、大きなため息ついて、頭をポリポリと掻く。そして、軽い感じでクー太に告げた。
「悪いなクー太!俺は地球でウハウハな大学生活が待っているんだわ!」
勝彦はわざと軽い感じでそう答えた。始めは真面目に言ったが、クー太は尚も食い下がって来たから、今度はふざけた感じを出して軽い感じで言う事にしたのだった。
ふざけた感じで言えば、クー太は自分の事を見損なってあきらめてくれるかもしれないと思ったからである。
そして、そんな勝彦の突然の豹変にクー太はポツンとし驚いている。
「へえ!?な、何を言っているの勝彦君・・・?」
そして、勝彦はクー太の正面に立ってクー太にゆびを指して言った。
「ふ、お前には悪いが、俺にはモテモテな大学生活が待っているんだわ!悪いけど地球の女の子が俺を待っているんだよ!ふあっはははは・・・!!」
と、悪態をつく。
勝彦は、ようやく自分の言いたい事をはっきり言えて気分的にすっきりした。
今まで、ずっと驚かさられて、自分らしさを出せずにいた事もあったから、なおさらである。
「か、か・・・勝彦君の馬鹿!!」
そう言ってクー太はそう叫んで別室に走って行った。
(さすがに嫌われたかな?でもまあいい、その方が俺をすんなり諦めてくれるだろう。あくまで俺の事を諦めてもらう為だ・・・)
走り去って行くクー太を眺めて、勝彦は少し胸がズキンとして痛んだが、(本来、俺はこういう人間だ!)と、言い聞かせて気にしない様にした。
でも・・・・勝彦は地球が一年で滅びるという事実も正直ショックである。地球に住む人間の一人として、重く受け止めいてないわけではない。あと一年で自分達の未来が無くなるなんて考えたくもなかった。
「悪いな・・・クー太・・・」
勝彦は、地球が滅びると聞いたからこそ、何としてもこの一年間で彼女を作らなければいけないと思った。
ついさっき出会った、結城菜緒さんの事を少し思い出して、早く地球に戻って残りの人生を彼女と思い出を作りたいと思ったのである。
(せめて、最後の思い出に彼女を作らねば死んでも死にきれん!)
実はそれが本音だった。すると、どこからともなくクー太以外の声がまた聞こえてくる。
「勝彦殿もお人が悪いですね・・・」
「誰だ!?」
勝彦はすぐに反応して、あたりを見回したが誰もいない。
でも、勝彦はもう空耳だと勘違いしなかった。
誰も居ないけど、間違いなく声が聞こえた事に確信を持っていたからだ。すると、勝彦の声に反応して語り掛けて来る。
「どうも、お初目にかかります。私、宇宙船アルテミス号の人工知能のアルテミスと申します。どうぞ、以後お見知りおきを・・・」
その正体不明の声は、機械的な声で部屋全体から聞こえてくる。
「人工知能?そうか、さっきからクー太と喋っていたのはお前だな!?」
勝彦はピンときた。やはり空耳ではなかったのだ。勝彦はその声が、この宇宙船全体から聞こえている事をすぐに理解したのだった。つまり、この宇宙船は自分で考えて喋る事が出来るのである。宇宙のSF映画やアニメにはよくある設定だ。
「はい、私がこの宇宙船のコントロールをしている人工知能です。勝彦殿、どうでしょう?地球にはいつでも帰ることはできます。少し、私達に付き合ってみませんか?」
挨拶もそこそこに、人工知能のアルテミスは勝彦に対して提案を持ちかけてくる。
「付き合う・・・?」
(それは一体どういう事だろう・・・?)
勝彦はその言葉の意味を考えてみたが、まったく見当もつかない。
アルテミスが何を考え、何を求めているのか?今の話を聞いた限りでは判断できなかった。
「そうです。この太陽系のはずれに、冥王星という星があります。そこでは、地球への入国基地みたいな所がありまして、そこで手続きをすれば、あなたが地球に戻ってしまった後、滅亡の日の直前にあなたが望めば地球から脱出する事が認められます。せめて、手続きだけでも受けてもらえませんでしょうか?」
しかし、勝彦はその提案を受け入れるつもりはなかった。
「だけど・・・俺は・・・」
「御心配には及びません!あくまで手続きだけです。別に勝彦殿が望めば、そのまま地球と共にしていただいても構いません!」
今度は、宇宙船が食い下がって勝彦をしきりに説得してくる。話の内容は理解して、一応信じてはいるが、一度決めた考えを簡単には変えるつもりはない。
それに・・・・一度地球を離れてしまったら、そのまま連れて行かれるじゃないかと、勝彦は何気に警戒していた。
昔見たTVでは、宇宙人は地球人を人体実験するという先入観があったから、心の中のどこかで恐れていたのである。
「なあ・・・お前にとってはさ、地球人である俺の事なんて関係ないだろ。何で俺にこだわるんだよ?」
勝彦は、何故しきりに自分を冥王星に連れて行こうとするのか不思議に思った。
このアルテミスは人工知能であり、ただの宇宙船である。勝彦との関係は全くないはずだ。
そんなアルテミスが、勝彦にしつこく食い下がる理由が見当たらなかった。
「そ、それは・・・・」
アルテミスはすぐに答えられず、何かを隠している様にみえる。
(やっぱり俺を連れ去るのが目的なのか?)
「・・・もしかして、俺を連れ去って人体実験でもするつもりか!?」
勝彦はそんな事は無いと分かりつつも、話半分で言っていた。
「いえ、そんな事しませんよ!」
と、アルテミスは鋭く切り返す。
勝彦は、心の中で(なかなかいい突っ込みだ! )と、思って感心した。




