第1章 10話
「それじゃあ、証拠を見せてくれよ、証拠を!!お前が宇宙人っていうなら、UFOを見せてくれよ!出来るだろ!」
「見せるも何も、今いるここが、そのUFO中です。つまり宇宙船の中ですよ!」
クー太は手を広げ、辺りを見渡した。そこには何もない真っ暗な空間が広がっている。
「え!?ここが・・・?いや、でも俺はエレベーターに乗って一階に降りたはずだけど・・・・」
「はい、ですから、そのエレベーターから勝彦君を宇宙船に転送したのですよ」
「はあ?転送・・・?じゃあここが!?ここが宇宙船の中なのか!?」
あたりを見渡してみるが、やはり何もない。よく目を凝らしてみるが何も見えない。どう見てもただの無機質な真っ暗な部屋である。
確かにここは、不思議な空間だけど夢と考えれば説明はつく。勝彦は、本当に夢じゃないと判断のつく物的証拠が欲しかったのにこれでは証明にならなかった。
(質問の仕方を間違えてしまったのか?)
すると、自称クー太は上を向き、誰かに話しかける。
「アルテミス、船体を可視モードにして!」
「かしこまいりました・・・」
と、またもや館内放送のような声がどこからか聞こえる。
勝彦はどこかに別の人間がいるのか?と、あたりを見渡してみたが誰もいない。一体誰と話しているんだ?と、不思議に思っていると、周りの景色は一瞬で変わってしまった。
何もなかった無機質の部屋が、一瞬で宇宙空間に浮かぶ一つの小部屋になったのである。
「・・・・・・・・・」
勝彦は言葉を失った。部屋の中は真っ暗になり、星々がきらめいているのが見える。そして、下を見ると写真や映像で見る様な綺麗な地球が青々と光っていた。まさしくTVでみる宇宙ステーションから見る地球と同じ光景が眼下に広がっていたのである。
「これが勝彦君の星、地球です。そして、僕の元生まれ故郷でもある地球ですね!」
そう言うクー太は笑顔で地球を指さした。
勝彦は、あまりの光景に口をパクパクさせていた。もはや、クー太の言葉は頭の中に入ってきていなかった。ただ、ひたすら青く輝く地球を眺めていたのだった。
「これが地球・・・?」
信じられないくらい幻想的な光景が目の前に広がっていた。眼下に広がっている地球は神々しく輝いている。TVの映像で見る姿よりも何倍も美しかった。
今、自分が夢や幻覚を見ているという疑惑なんか、忘れてしまうくらい美しさに圧倒されてしまっていたのである。
「す、すごい・・・」
「綺麗でしょ?地球の美しさは、銀河系でも上位に入るんですよ。新銀河連合星系内の高度な文明惑星の間では、お忍びで訪れる観光客が絶えないんですよ。ちなみに、地球に現れるUFOのほとんどが、新銀河連合星系の観光客なのですよ」
と、クー太が横から説明してくれる。しかし、そのクー太の言葉も、勝彦の耳には届いていない。
そして、美しい地球を眺めて勝彦はふと思った。
(これは・・・やっぱり現実なのだろうか?いや、この美しい地球を眺めていたら、クー太が言っている事がすべて真実だと思えてくる。何故なら、俺はこんな美しい地球を知らない。というか、TVで見た事ある映像よりも100倍美しい。こんな光景は見た事がない、見た事ないものを妄想できるはずがない。という事は・・・やっぱり俺の夢じゃなかったのか・・・?)
と、そう思うようになっていたのである。
地球を眺めた後、気持ちを切り替えてクー太の方に向く。勝彦は今までの疑いに満ちた表情を改めて、真剣なまなざしでクー太を見つめた。
「やっぱり・・・お前・・・クー太で、宇宙人なのか・・・?」
勝彦は、クー太を眺めてそう言った。その表情にはもうクー太を疑うような様子は見られなかった。勝彦は内心まだ信じられない部分があったが、これだけの現実を見せられて信じざるを得なかったのだ。
「うん、やっと信じてくれたんだね!」
と、クー太は笑顔で微笑む。
(信じるも何も、こんな光景を見せられて、信じない訳にはいかないじゃないか・・・)
それと同時に、勝彦は今置かれている自分の状況をようやく理解することが出来た。今まで、すべての事を疑ってかかっていたので、受けた説明もすべて完全否定していた。
でも、クー太が言った事がすべて真実だとしたら、勝彦も地球も全世界の人々の置かれている状況は、非常に危機的な状況だということである。
勝彦は、もう一度地球を眺めて状況を整理してみた。
(地球で死んだクー太は、宇宙人に生まれ変わった。そして、後一年で地球が滅亡する事が分かったから、俺を救う為に地球にやって来た。という事は、俺はこの地球から離れるという事になる・・・・)
一応そこまでは理解した。
だが、地球を眺めていて、勝彦に一つの気持ちが生まれていた。今さっき聞いた、地球が滅びるという言葉を聞いて、この美しい地球が愛おしく思えていたのである。
勝彦は、クー太の気持ちを嬉しく思いつつも、とても地球を捨てて逃げようという気持ちにはなれなかった。親兄弟や友人を見捨てて、自分ひとり助かってもまったく嬉しくない。
勝彦は、一息いれて、気持ちを切り替えて、見つめていた地球からクー太の方に視線を移す。
「クー太・・・迎えに来てくれてありがとな、でも・・・悪いけど俺、地球に帰してくれよ!」
と、まっすぐ面と向かって言ってやった。こういう事は正直な気持ちを打ち明ける方がいいと思ったからである。
クー太は善意で勝彦を救いに来た。それは分かる。だったらその善意には、真っ直ぐな正直な気持ちで言わないと伝わらないと思ったからである。
「え・・・・!?」
クー太はキョトンとしていた。
「地球は滅ぶんだろ?だったら俺は、最後は地球で死にたいんだよ!」
それが、勝彦の正直な気持ちだった。こんな美しい地球を見て、見捨てて逃げられるはずがなかった。
(俺は、この地球で生まれ育ったんだ。俺が死ぬのは此処だ!馬鹿な事ばっかりやっている俺でもれくらいの愛着心はある)
そんな勝彦の決断に、クー太は動揺を隠せない。
「駄目だよ!私・・・、いや、僕は勝彦君を救うために、ここまで来たんだ!そんな事言わないで一緒に行こうよ!」
そういってクー太は尚も食い下がってくる。その姿を見て、クー太の必死さが分かった。そして、本気で勝彦の事を心配してくれているのが見て取れて分ったのだった。
だが、それでも勝彦の決心は変わらない。




