春分の日、来る Part.2
それは何ですかっ!? シンデレラさん!! 早く教えて……
ガチャンッ!!
「えっ!?」
「……やあ、スワンさん……」
な、なんて大事なところにこの人は入って来るんだよ!! おかげで例の片想いについて聞くことができなかった。
『おはよう』
「え、スケブ……?」
談話室に入ってきたスワンの手には、スケッチブックがあった。それに大きく『おはよう』と書かれていた。
「スワン先輩、おはようございます。……それ、どうされたんです?」
僕はおそるおそるスワンに聞いた。さっきまで、シンデレラとスワンに多分聞かれてはならないだろう話をしていたため、口調がなんだか慎重でゆっくりになる。
『喉を痛めたんだ。だから声が出なくて……元から喉が弱くてね。よく、こういうことになるんだ』
「そうなんですか? あの、えーと……体調は大丈夫なんですか?」
『平気』
「うっそだろーっっ? 風邪とか引いてんじゃないのーっ!! ムリは禁物だよーっ!! それとっ、うつさないでよね!?」
『……(怒)……元気な証拠に、コレ、作ってきた』
それは、かわいらしいラッピング専用の袋にはいった、焼き色から見て、おいしそうなマドレーヌだった。これをスワンさんが……? 親切だなあ……お菓子の差し入れなんて。というか、乙女だなあ……
「あーあー、怒られちゃった。でも、マドレーヌはくれるよねえ?」
『しかたない……あげる』
「ふう、よかった」
『ちょっと、給湯室に行ってお茶入れてくる』
手に持っていたスケッチブックとマドレーヌを談話室の長机の上において、スワンは談話室から出た。
「……ふぅ、スワンさん行きましたね……あのときはもう、ドキッと……いや、ドキッとどころじゃないです。ギクッとしましたよ。」
「ミーもだよ……」
2人は、同じようにハアとため息をついた。深い深いため息だった。
「で、片想い終わらせるためって何ですか?」
「ん、それはねー分かんないんだよね」
「はい?」
どきどきして損した。……と僕は思った。
「あー、スワンさんにさ、この座談会やらないかって、誘いの手紙が来たときに、手紙にこう書いてあったんだ」
シンデレラは人差し指を出して、宙に自身の回想を描くようなポーズをとった。
「これから集うメンバーはおそらくみんな片想いをしていることでしょう。って……片想いってさあ、相手はこっちのことはなんとも思ってないけど、自分は恋い慕っておりまーっすってことじゃん……あの人はそれを広く捉えすぎてんだよねえ」
「広く捉えるって? どういうことですか?」
「誰か1人の人間だけじゃなくて、ものだとか、ことだとか……あと、何かに対する関係性だとかにも片想いすると考えているんだと思う。例えば……ミーなんかだと、冒険に片想いしているわけだし。多分、ミーの予想だけど、フジコはクラスメイトと仲良くしたいっていう関係性に片想い中だ」
「……僕のそれについては片想いかどうかなんて分かりませんが、クラスメイトと仲良くしたいってことはたしかです。けど、まあ、異性の1人の人間に限定されないってことはわかりましたよ。で、スワン先輩は何に片想いしていらっしゃるんですか?」
「さーねー。あの人、手紙には自分のことは書いてなかったからなあ。ま、みんなの片想いを終わらせるためって書いてあったけど、本当は自分の片想いを終わらせるためじゃないかな?」
でも、スワンさんは自分の片想いだけのためにこの会を開いているようには見えない……マドレーヌを作ってくれたり……それに、僕をこの会に呼んでくれたのは、多分僕の事情を知ってのことだろう。スワンさんはシンデレラが思っているほど、自己中心的じゃない。と、思う。
「シンデレラ先輩、スワン先輩はシンデレラ先輩が思っているほど、悪くないと思うんです」
「うん、悪くない」
シンデレラはお面を顔半分あげてにっこりと笑って見せた。形のいい唇に桃色に染まっていた。その唇の端が上に上にと上がる。それを見て、どこか僕はほっとした。自分とスワンがこの人に認めらたような気がして。
「つーか、悪いとはいってないよ。で、今さっきミーがいった内容……フジコのもらった手紙には書かれてたわけ?なんか、知らないみたいだけど」
「書かれてませんでしたけど……僕の手紙にはあ……」
「あっれー、妬いてんのお? やめてよオ!!」
僕はシンデレラを横目で睨んだ。シンデレラは、少し縮こまって、そのあとに姿勢を正した。そして、真面目になってこう言った。
「……スワンさんは、もしかして、あんたに書くと不都合なことでもあったんじゃ……例えばさあ」
「例えば?」
「片想いの相手があんただとか?」
「ま、まさか!? スワンさん、男ですよ!?」
「いや、意外と女の子だったりするかもよ?」
「ま、まさか!?」
ドンドンっ!!
引き戸がノックされる。
「あ、来た。スワンさん多分両手ふさがってんだよう。開けてやれー」
僕は、急いで引き戸を引いた。引いてすぐ甘いにおいがした。
「ココア……?」
僕は、ココアの入っているマグカップの乗ったおぼんを受け取った。
『紅茶にしようと思ったんだけど……なかったんだよね』
部屋中にココアの甘いにおいが広がった。
会話文が多くてなんだか読みにくいかんじになってます。すみません。次は気をつけようと思います。
あと、次は最近出ていないキャラクター&新しいキャラクターを出そうと思ってます。ヨロシクお願いします。