建国記念日の座談会
「はじめましてみなさん。祝日だというのによく登校してくれました。今日は楽しい会にしましょう」
「りょうかーい」
「イエッサー」
「はっ、はい」
2月11日、建国記念日に僕は学校の談話室にいた。
祝日ということで、先生も、部活をする生徒もいない。いるのは僕たちだけ。お面をした僕たち4人だけ。
新学期、何かが変わるのではないかと思って、朝早く忍び込むようにして入った中学校の下駄箱に、僕宛の茶色い紙袋があった。この僕に? と思ったけど、僕はその紙袋をそっと開いた。中を覗くと、祭りの夜店で売ってあるようなお面と封筒が入っていた。
封筒に入った文書を僕は見た。それにはこう記してあった。
『2月11日、午後1時に談話室に集合。お面をつけて入室すること』
と……一瞬、何かの嫌がらせかと思ったが、僕はそれに参加することにした。文書には何をするとか、そういう具体的なことは書かれていなかったが、それに参加すれば僕の何かが変わると思ったのだ。
そして、今日に至る……と。
お面をつけた4人のうち、3人は男子制服を着、1人は女子制服を着ていた。
男子制服を着た3人のうちの1人がこの会を先程から仕切っている。
この会は、どうやら彼が思いついたものらしく、彼が参加者を選んでいるようだった。つまり、彼がもし適当に下駄箱に紙袋を突っ込んでいなければ、彼は僕ら3人の名前を知っているということになる。選ばれた理由などひとつも思いつかないが……
「自己紹介しようか。僕以外、みんな名前知らないだろうしね」
これで、彼が僕らの名前を知っているということがわかった。今、お面をつけた状態で知っているということは、声や顔、容姿も知っているということだろうか?
「じゃ、僕から。……待った。本名言ったら、お面つけてる意味ないなあ。じゃ、ここは偽名で」
僕たち3人は静かに頷いた。
「僕はスワン。2年生。よろしく」
「回すの早すぎっすよー。スワンさーん。好きなものとか詳しく言わないとー。まーいいけど。ミーはシンデレラ。2年生で好きなことは冒険。ヨロシクー」
「ごめん、シンデレラさん。好きなものね……内緒……ってのはダメ?」
「ダメ」
「キビシー」
シンデレラはもちろん女子だった。偽名にも一人称にもツッコミどころは満載だが、僕は黙っておいた。
「じゃー、俺いい?」
「どーぞ、どーぞ」
スワンがもう一人の男子に促した。
もう一人の声は、優しいが、消え入りそうな声だった。
「ミヤビです。えっと、2年です。好きなイベントはサンドアートフェスティバル。あー、あの8月にビーチであるやつです。……わかります?」
「あ、知ってる。僕も出たことあるから」
「へー、スワンさんも? 意外だなあ」
「意外? ミヤビさんのほうが……なんか、見た感じ細いし、色白だから、あんまり外での行事は好きじゃないかんじ」
「たしかに」
「失礼ですねー」
この人たち、ずばずば思ったこと言うんだな、と僕は思った。
まるで、前から知っているみたいだ……でもそれはお面で相手の顔がわからないからだろうか? だから、初対面でも気を遣わずに何でも言えるのだろうか?
「あなたも何か言ってやってください。本当、失礼なんだから」
ミヤビが僕のほうを見て言った。
「あっ、はい」
「ミヤビさん、彼は自己紹介まだですよ」
「あ、そうだったね」
僕のほうに、いっせいに仮面が向く。この視線が集まってくる感覚、久しぶりだ。数人が僕を見る、この感じ。
「え、ええっと……フジコです。1年です」
「フジコって、ルパンの?」
シンデレラが食いついてきた。
「いえ、藤子・F・不二雄さんです」
「ああ、そっちの? 漫画好きなの?」
ミヤビが優しい声のトーンを少し上げて聞いてきた。
「はい。あの……好きって言うか、マンガ家になりたいんです」
「すげー、マンガ描くんだ?」
「ええ、まあ」
どうやら、3人はマンガが好きなようだった。さっきよりテンションが高い。僕はほっとした。
「じゃ、今度持って来てよ。描いてるんでしょう?」
「ええっ!? い、いいですけど、本当に下手で」
スワンはお面の口元に手を持ってきて笑った。
「気にしなくていいよ!! どうせ、マンガ家になったらひとにみせるんでしょ?」
「そうですけど……はい、持ってきます」
「おー!!」
僕以外の3人の歓声が上がる。僕は恥ずかしくてうつむいたままだった。
この会、1回では終わらないということに気づいた。僕が3人にマンガを見せなきゃいけないのだから。
後日、再び僕の元に紙袋が届いた。今回は、下駄箱にではなく、うちの郵便受けにだった。
指定された日は、春分の日。
初めてで、不慣れな上、頭も悪いのでまともな文章になっていません。申し訳ないです。
これからも続きを書いていこうと思うので、拙い話ですがよろしくお願いします。