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変じゃないだろ

作者: マーク
掲載日:2026/03/08

人のことを、考える。


最近、世界に対してストックホルム症候群になってるのでは。


なんて考える。


定義もくそもない言葉だけど。


思い返してみれば、めっちゃ怖くて、すぐ怒る先生とか、なんか好きだった。


まぁ、そういう言葉が広まったってことは、みんな、心当たりがあったんだろうね。


なんでこんなこと考えてるか?


それはね…


『お前、いい加減にしろ!』


絶賛、怒られてるからだね☆


『いつまでかかってる!俺は急いでるんだ!』


わぁ、すっごい主観の意見。


『はい。遅れてすいません』


そういって、袋を差し出す。


すると、ひったくるように掴んでいった。


『結構急いだつもりだったんだけどな』


まぁ、急いでるときって、信号も煩わしくなるし。


事情は知らないけど、間に合うといいね。


…そんなに大事なら、コンビニに寄るなよ。


たばこと昼飯ぐらい我慢しろよ。


なーんて考えてると、次の客が来る。


ああいう人がいると、時間が早く過ぎるから、ありがたいね。


『袋要りますか?』


『大丈夫です』


さっきとは打って変わって、静かな声。


レジを打つ。


特になにも起きなかった。


『ふぅ~』


…大丈夫ですって、何なの?


分かりづらくない?


いらないです、って直接的にいわれた方が、拒否された気がして嫌なのか…?


『…分からん』


しばらく、客は来なかった。


暇と、そうじゃないときとで差が激しいね。


まぁ、接客以外にもやることあるんだけど。


チリン。


『やほ』


聞き覚えのある声。


『お』


顔を上げた。

たまにくるんだよなこいつ。


『暇なの?』


『客だぞ。丁重に扱え』


そういって、コンビニ内を歩きだした。


…なに買うかも決めずに来たな、こいつ。


『今日さ』


遠くから声が飛んでくる。


『なんか、機嫌悪くない?』


『さっき、ムカつくことがあった』


『それは?』


『じじいに遅いって怒られた』


『ははっ。かわいそ』


なんだこいつ。


『そういうこともあるよね』


適当に棚を見ながら言った。

本当に視界に入ってるのかな。


『ほい、よろしく』


おにぎりと飲み物。

それをレジに置いた。


『袋要りますか?』


テンプレ。いつも通り。


『要らん』


バーコードを読み取る。


『少し話そうよ』


レジを打ちながら聞く。


『本当に暇人なんだね』


『んやぁ?一番面白いから、来てるだけ』


『見せ物じゃないんだけど』


『そう?』


そういって、目の前でおにぎりを食べ始めた。


『…いや、駄目でしょ』


『はんで?』


『イートインはあちらです』


『ほかのひゃくがきたらいどうするよ』


もぐもぐ。

普通に食ってる。


『飲み込んでからしゃべりなさい』


『んくっ。ハーイ』


『そんで?何話したいわけ?』


『んー』


飲み物を開ける。

炭酸。

私は嫌いなんだよな。


『さっきの話』


『どれ』


『怒られたやつ』


『ああ』


そんな、気になるほどのことじゃないと思うんだけど。


『遅いって言われただけ』


『怒鳴られたんでしょ?』


『まぁ』


『理不尽じゃん』


『珍しくもないよ』


『んー?そういう問題?』


『あー。まぁ、頻度の話ではなかったね』


『なーんで。責めないかね』


『面白いしね』


『んふっ。一番馬鹿にしてるぞ』


少し笑いながら言った。


『そう?』


『そうだよ』


飲み物を一口。


『だってさ』


『うん』


『相手の行動の理由、考えてるでしょ』


『え?いや、考えるでしょ』


『いや、なんで怒鳴られた側が、怒鳴った側の事情を考えてるんだよ』


『普通じゃない?』


『普通じゃない』


即答だった。


『普通はさ、「なんだあのジジイ」ってなるの』


『なってるよ』


『なってないね』


また飲み物を一口。


炭酸の音が、小さく弾けた。


『だってお前さ』


『うん』


『コンビニ寄るくらいなら急ぐなよ、とか考えてるでしょ?』


『うん。そりゃ、そうでしょ』


『そりゃ、怒ってない』


『いや、怒ってるよ』


『いや。分析して、叱ろうとしてんだよ』


『…何が違うの?』


『怒るってのはさ』


少し考えるように、天井を見た。


『もっと、雑なもんだよ』


『雑?』


『うん』


『ムカつく』


『なんだあいつ』


『最悪』


『そんだけ』


『…語彙力どこに置いてきた』


『怒るってのは感情だよ?語彙力なんかいらん』


『そうかな』


『そうだよ』


チリン。


ドアのベルが鳴る。


新しい客が入ってきた。


『お。私はお暇しようかね』


『帰れ帰れ。変人』


『おっ。ブーメラ~ン』


そう言いながら、空きボトルを軽く振った。


『ちゃんと捨ててってよ』


『分かってるって』


ゴミ箱に、ぽい。


『また来るわ』


『来なくていいよ』


『冷たいなぁ』


そう言いながら、手をひらひら振る。


チリン。


ドアが閉まった。


静かになった。


『袋要りますか?』


『お願いします』


レジを打つ。


普通の客。


普通の会話。


普通の音。


ピッ。


『ありがとうございました』


ドアが開く。


チリン。


ドアが閉まる。


また、静か。


『……いや、変じゃないだろ』


曲作ってみたい。

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