4話「やり過ぎ注意!」
三十日後――。
それからもわしの店は大繁盛。
クロイツ商会の店からは誰も物を買わなくなった。
その間、何度もクロイツ商会のゴロツキに絡まれたが、全て返り討ちにしてやった。
いくつかの八百屋と果物屋が潰れたが、悪党の経営する店なので気にしない。
「ヴィル、この辺りの八百屋と果物屋は全部潰れたぜ」
「クロイツ商会が経営する店が潰れたところで、罪悪感は沸かぬな」
「狙い通りってわけか。
相変わらず非道だな」
「ふっ、甘いなイグナツ。
ここからが本番じゃよ」
クロイツ商会の店を潰すなど、手始めにすぎん。
「ライバルがいなくなったので値上げする!!
今日からじゃがいもは一個五百ギル!
大根一本千ギル!
人参一本三百ギルじゃ!!」
昨日までの百倍の値段だ。
元々1/10の値段で販売していたので、定価の十倍の価格設定だ。
「えげつないな。
いくらライバル店がなくなったからって、そんな価格設定じゃ売れないだろ?」
イグナツが鋭い目つきでわしを睨む。
「その点は心配いらん。
野菜には魔草の成分が含まれておる」
「魔草?
おいそれってやばいんじゃ……」
「帝国の一部の地域で使用されている魔草には、気分を高揚させる効果がある。
しかし、依存性が高いので帝都への持ち込みや他国への販売は禁止されておる」
「野菜にその成分混ぜたのかよ」
「品種改良と言ってもらおうか。
今まで野菜を購入した人間は魔草への依存症状が出ているはずじゃ。
値段を百倍に上げてもみんな買う!
これであっという間に目標金額に到達じゃ!」
「発想がクソすぎる!
お前絶対悪魔の生まれ変わりだろ! いや、悪魔の十倍えげつないぜ!」
イグナツがわしを見る目は、ゴミを見る目と同じだった。
「何とでも言えばいい!
世の中、金を稼いだ者が勝ちなのじゃ!!
カーカッカッカッカッ!」
わしの目論見通り、野菜の値段を釣り上げても人々はわしの店に買いに来た。
いや、野菜めがけて押し寄せてきたと言った方が正しい。
「人参をおくれ!」
「俺にはキャベツを!」
「大根三本売ってくれ!!」
「どけ! 俺が先だ!」
「それ、私のじゃがいもよ!!」
「争うでない。
在庫はたっぷりあるからのう」
「客の目が血走ってる。
もうこいつら、この野菜なしで生きていけないんだろうな……かわいそうに」
「借金を返すためじゃ。
多少の犠牲は仕方なかろう」
「お前それ、正義側が絶対言っちゃいけないセリフだぞ」
イグナツの小言を、わしは聞かなかったことにした。
◆◆◆◆◆
四十五日目――。
「今日は借金返済の期日だ!
クロイツ商会の親玉に、利息分も含めてきっちり返してやるわい!」
その後、野菜の価格を二十倍に引き上げたが、見事に完売した。
わしには商売の才能があるかもしれん。
夕刻、店で売り上げを数えておると……。
「八百屋のヴィルだな!」
わしの前に数名の男が立っていた。
「そうだが、何用かのう?」
身なりや格好からして、クロイツ商会の手の者ではない。
「やばいぜ、ヴィル!
王宮の兵士だ!」
イグナツが翼をばたつかせ、わしの耳元で騒ぐ。
「王宮の兵士が何の用かのう?
悪いが野菜を買いに来たなら明日にしてくれぬかのう?
見ての通り今日は完売なのじゃ」
「独占禁止法および、麻薬成分を含む野菜の販売で貴様を逮捕する!!」
そう言って兵士の一人がわしに書状を突きつけた。




