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2.



―初めまして。陸くんだね?おれは汐屋まひる。


にっこりと、まるで綿菓子みたいに甘く柔らかな笑みで、その人は言った。


兄が汐屋を初めて家に連れてきた時、陸は高校生だった。その頃はまだ兄と一緒のマンションに住んでいて、父親の仕送りで2人は生活していた。


兄は美術大学を卒業し、レストランで働きながら絵を描き続けていた。大学を出てから絵の仕事をもらえたことはなかったが、兄は絵を描くことを捨てきれず、来る日も来る日も一心不乱にキャンバスに向かっていた。

絵本作家の才能があると最初に見抜いたのは、当時出版社で雑用として働いていた汐屋だった。


―兄貴の絵、売れるの?


陸は汐屋に訊いた。汐屋は描き上がったばかりの兄のイラストを、丹念に見つめていた。


―売れるかどうかは分からないけど…おれは、お兄さんの絵好きだよ。あったかくて、落ち着かせてくれるようで。

―…ふうん。


兄の絵は落ち着いた色合いと繊細なタッチで、確かに万人受けするだろう要素はあった。陸に言わせれば地味なばかりの絵だったが、これに物語が乗れば、なかなかステキな本になるんじゃないかという予感はした。


―正行はロマンティストだから、子供から大人まで幅広く読める絵本が描けると思うよ。


汐屋はまるで夢見るような口調で言い、どこか熱のこもった眼差しで兄の絵を見つめるのだった。




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