第65回 吉田兼好の友人論
今回は、現代にも通じる「友人論」について。
実は私、あまり「友人には恵まれない」という事情がありまして。
過去、様々な友人と付き合ってきて、もちろん現在も付き合いがある友人がいますが。
大抵、「いい友人」に限って、自殺したり、事故で亡くなったりしてまして、残った友人が「悪い友人」ばかり。
ということで、吉田兼好。
卜部兼好とも呼ばれ、鎌倉時代から室町時代に活躍した文人ですが、有名なのは「徒然草」。日本三大随筆の一つともされる有名な話。
その中に、吉田兼好の友人論があります。
それをご紹介します。
「徒然草」の「第百十七段」。
<原文>
友とするに悪き者、七つあり。
一つには、高く、やんごとなき人。二つには、若き人。三つには、病なく、身強き人。四つには、酒好む人。五つには、たけく、勇める兵。六つには、戯言する人。七つには、欲深き人。
よき友、三つあり。
一つには、物くるる友。二つには、薬師。三つには、智恵ある人。
これを現代語訳にすると、以下のようになります。
<現代語訳>
友達にするにふさわしくない者は、七種類ある。一つ目は、身分が高く、住む世界が違う人。二つ目は、若者。三つ目は、病気をせず丈夫な人。四つ目は、飲んだくれ。五つ目は、血の気が多く戦闘的な人。六つ目は、嘘つき。七つ目は、欲張り。
良い友達には、三種類ある。まずは、物をくれる人。次は、医者。最後に、賢い友達。
これを一つずつ見ていくと。
<悪い友達>
①身分が高い人 → これは、恐らく身分が違いすぎると、考え方や経済感覚が異なるから。例えば大金持ちと友達になっても、金銭感覚が違いすぎるわけです。
②若者 → 何故、若者はダメなのか。これは恐らくですが、これを書いた時、吉田兼好自体が老齢だったことも影響しているかと。実際、年寄りと若者では、ジェネレーションギャップがあったり、考え方も異なりますし、健康状態も変わるでしょう。
③病気をせず丈夫な人 → これは難しい解釈ですが、要は「あまりにも健康な人だと、自分がみじめになる」というところから来るかと。逆に言えば、健康な人にとっては、あまり意味がなくなります。この時代、現代ほど健康ではなかった人が多かったので、ちょっと現代にはあまり通じないかもしれませんが。
④飲んだくれ → 一番、わかりやすいかもしれません。あまりにも度が過ぎた飲んだくれは、付き合うだけで悪影響を受けます。
⑤血の気が多く戦闘的な人 → 現代的には、あまりそぐわないかもしれませんが。実際に、仕事上の付き合いがあった人で、やたらと喧嘩っ早くて、すぐ人に突っかかる人がいました。そういう人は確かにトラブルメーカーになります。
⑥嘘つき → これもわかりやすいですね。嘘ばかりつく人は、基本的に信用されません。
⑦欲張り → 欲が強すぎる人は、ある意味、「身を亡ぼす」ことになるからでしょう。
<良い友達>
①物をくれる人 → 「そんな人いる?」って思う人もいるかもしれませんが、実際にいました。もっとも別に「金をくれる」とかではないんですが、ちょっとしたことでも、惜しげもなく物をくれたり、何か譲ってくれる人。そういう人は貴重です。心が広いのでしょう。
②医者 → これは確かに「欲しい」と思いますが、実際に医者の友達を得るのは難しいです。医者の友達がいれば、自分が病気になった時に、診てもらえるからでしょうけど、逆に金取られそうな気もしますが。
③賢い友達 → これは「反面教師的」に私が、真逆の「頭の悪い友人」と付き合ったから、よくわかります。
ということで、吉田兼好の友人論。現代でも通じます。
最後は、私が感じた「友人論」。
この上記、良い友達の③に通じますが。
あまりにも「頭が悪い友達」は確実に悪影響を及ぼします。
過去にそういう人と仲良くなりました。確かに彼は「人当たりはいい」んですが、いかんせん「頭が悪すぎる」。同じ失敗を何度も繰り返し、滅多に怒らない私でさえ切れそうになりました。学習しないのか、と。
物事には限度があります。
仕事で一緒になったら、間違いなく「仕事が出来なくて見ていてイライラする」タイプでしょうね。
ちなみに、逆に「頭が良すぎる人」とも付き合ったことがあります。
その人は、両親は日本人ですが、外交官だったかで、海外生まれ。英語とドイツ語と日本語を話せるトリリンガル。
要は、めちゃくちゃ頭がいい人。
なので、一緒に仕事をしていて、よく怒られました。
簡単に言うと彼からすれば「頭が良すぎて、自分以外の人がバカに見える」んでしょうね。
いい人ではありましたが、付き合うのは大変な人。
ということで、友人は選びましょう、という話。
私は、実際に「頭が悪すぎる友人」に接して、悪影響を受けて、頭に来て「縁を切りました」から。
もっとも「普通の友人」ってのは、普通すぎてつまらない、というのもありますが。




