第57回 新撰組、隊士たちの死因
今回は、皆さんよくご存じだと思いますが、新撰組について。
ちなみに「新撰組」でも「新選組」でも正しいようで、局長の近藤勇がどっちも使ってたはず。というより、当時はその辺、結構曖昧なのです。
幕末最強どころか、日本史上、最強の剣客集団で、最盛期は隊士が200人くらいいたとも言われる新撰組。
新撰組は、江戸幕府側の治安維持組織で、敵対する薩摩・長州などの不逞浪士を「斬りまくった」というイメージが先行してますが。
では、実際に、その新撰組内部で、一番多かった死因は何かと言うと。
これが、「討死(戦死)」ではなく、「内部粛清」だったのです。
いわゆる「五か条の鉄の掟」みたいのは、後世の創作という可能性もありますが、それでも厳しい規則があったのは確かだったようで、組織の結束を図るため、組織の意向にそぐわない隊士は、「切腹」や「暗殺」に追い込まれています。
一応、調べた限り、29名の死因がわかってますが、そのうち粛清は20人にも上ります。(一部、死因が真偽不明のため、実際には10数名が粛清と思われる)
以下、粛清に遭った人間と、死亡日時、死因、簡単な説明を記載します。(順番は古い順)
1. 殿内義雄 死亡日時:1863年3月26日 死因:粛清(暗殺)
2. 芹沢鴨 死亡日時:1863年9月18日 死因:粛清(暗殺) ※初代新撰組局長の一人
3. 平山五郎 死亡日時:1863年9月18日 死因:粛清(暗殺) ※芹沢派の一人
4. 新見錦 死亡日時:1863年10月頃 死因:粛清(暗殺) ※芹沢派の一人、初代副長の一人
5. 野口健司 死亡日時:1863年10月頃 死因:粛清(暗殺) ※芹沢派の一人
6. 佐々木愛次郎 死亡日時:1863年頃 死因:粛清(暗殺)
7. 佐伯又三郎 死亡日時:1863年頃 死因:粛清(暗殺)
8. 荒木田左馬之助 死亡日時:1863年頃 死因:粛清(暗殺)
9. 御倉伊勢武 死亡日時:1863年頃 死因:粛清(暗殺)
10. 楠小十郎 死亡日時:1863年頃 死因:粛清(暗殺)
11. 山南敬助 死亡日時:1865年2月23日 死因:切腹(脱走の罪) ※初期メンバーの一人、総長
12. 谷三十郎 死亡日時:1865年頃 死因:暗殺説あり(病死説も)
13. 田中寅蔵 死亡日時:1865年頃 死因:粛清(暗殺)
14. 伊東甲子太郎 死亡日時:1867年11月18日 死因:粛清(暗殺) ※御陵衛士(新選組の分派)の総帥
15. 藤堂平助 死亡日時:1867年11月18日 死因:粛清(暗殺) ※初期メンバーの一人、御陵衛士
16. 毛内有之助 死亡日時:1867年11月18日 死因:粛清(暗殺) ※御陵衛士
17. 服部武雄 死亡日時:1867年11月18日 死因:粛清(暗殺) ※御陵衛士
18. 武田観柳斎 死亡日時:1868年1月頃 死因:粛清(暗殺)
19. 柴田彦三郎 死亡日時:1868年頃 死因:処刑(脱走の罪)
20. 酒井兵庫 死亡日時:1868年頃 死因:処刑(脱走の罪)
というわけで、これだけ「粛清」対象になっていたのです。
つまり、新撰組隊士は、敵との戦いで死ぬよりも、内輪揉めで死んだ方が圧倒的に多かったのです。
なので、ドラマやアニメで描かれるような綺麗なことは全然なかったのです。
なお、戦死組の代表格は、もちろん副長の土方歳三。箱館(現在の函館市)の五稜郭で戦死。
他に、初期メンバーだと、井上源三郎が鳥羽・伏見の戦いで、原田左之助が上野戦争で戦死。原田は生存説もあります。
戦死以外だと、局長の近藤勇が捕らえられて、斬首。一番隊を率いた天才剣士・沖田総司が20代の若さで病死。
生き残り組の代表格は、三番隊の斎藤一。漫画「るろうに剣心」でも有名。明治時代には警察官になって、その後も長生き。大正時代に亡くなっています。
同じく、二番隊の永倉新八。漫画「ゴールデンカムイ」にも登場。明治維新後は、小樽に移ったり、その後東京に移ったりしながら、同じく大正時代まで生きています。
そして、最後の新撰組隊士と言われているのが、マニアックですが、池田七三郎。稗田利八とも言います。
彼は、1849年産まれで、戊辰戦争の直前に新撰組に入隊。戊辰戦争を戦い抜き、斎藤一と共に会津に残ります。その後、なんと昭和13年(1938年)まで長生き。享年90歳(満88歳)。
太平洋戦争が始まる少し前まで、生きていたまさに「最後の侍」と言っていいでしょう。
ちなみに、剣客集団と言われる新撰組ですが、時代の流れには逆らえず、戊辰戦争以降くらいから、すでに剣から銃に装備が移行しています。
土方歳三が鳥羽・伏見の戦いで「もはや剣の時代ではない」と言ったとか。土方は合理的な考えをする人物だったので、その後すぐに洋装に変え、銃撃を中心にした部隊を編成した、とも言われています。
ということで、新撰組のドロドロとした舞台裏でした。
まあ、ご存じの方も多いと思いますが。
ちなみに、私は土方歳三が好きです。
あの「一本気」な男らしさ。現代日本人が忘れている部分ですね。
太く、短く、しかしカッコいい生きざまです。




