第29回 日本史上最大のクーデター事件
もうすぐやってくる2月26日。
そう、二・二六事件。
今回取り上げるのは、これについてです。
実はつい先日まで、You Tubeで映画「226」(1989年)が無料公開されてました。作品が作られた当時、私はまだ小学生だったので、見ておらず。
しかし改めて、自分が大人になって見ると、なかなか感慨深い物がありました。
三浦友和、本木雅弘、竹中直人、佐野史郎、仲代達矢、そしてすでに亡くなった萩原健一、丹波哲郎、梅宮辰夫など、かなり豪華なメンバーによる出演。
そして、まだ日本が豊かで、余裕があったバブル期に作られているから、作品自体が豪華です。
それでは、この「日本史上最大のクーデター事件」の原因とは何か。
これには、かなり複雑な原因が絡み合っています。
実は当時、陸軍内部で「統制派」と「皇道派」という二大派閥が競ってました。
統制派は、陸軍大臣を通じて政治上の要望を実現するという合法的な形で列強に対抗し得る「高度国防国家」の建設を目指した派閥で、中心人物は永田鉄山。どちらかというと穏健派です。
対して、皇道派は、天皇親政の下での国家改造(=昭和維新)を目指し、対外的にはソビエト連邦との対決を志向したとされており、中心人物は荒木貞夫と真崎甚三郎など。こちらはどちらかというと強硬派です。
それに加えて、当時、1929年の世界恐慌の影響で、日本でも昭和恐慌と言って、民衆が非常に貧困にあえいでいました。特に東北地方の貧困がひどく、食べていくために、親が娘を遊郭に売り飛ばすことが多発していたと言われています。
この辺り、実は「現代日本」と不思議なほど似ている部分があるというか、今はまさに財務省と一部政治家によって、国民自体が苦しめられています。
そんな中、「相沢事件」というのが起こります。
昭和10年(1935年)8月12日。陸軍中佐の相沢三郎が、統制派の中心人物である永田鉄山を白昼堂々、陸軍省の中で、「斬り殺して」しまったのです。
これは、陸軍内部における、皇道派と統制派の内紛の末に起こった事件と言われており、翌年2月の二・二六事件に繋がった出来事の一つとされています。
つまり、簡単に言うと、もう「陸軍の統制が取れなくなっていた」とも言えるわけです。ちなみに、永田鉄山という人は、陸軍屈指の秀才と言われたエリートでした。
そして、結局、なんだかんだで長い間の不平不満が溜まっていき、ついに暴発したのが、有名な二・二六事件というわけです。
昭和11年(1936年)2月26日。雪が降る中、皇道派の影響を受けた陸軍青年将校らが1483名の下士官・兵を率いて蜂起。
主に歩兵第1連隊、歩兵第3連隊、近衛歩兵第3連隊、野戦重砲兵第7連隊などが参加。なお、歩兵第1連隊は、東京の赤坂に軍営があり、言わばエリートと言われていました。
彼らによって、都内の政府中枢部と牧野伸顕がいた湯河原の旅館が襲われます。
詳細は有名なので省きますが、高橋是清・大蔵大臣、斎藤実・内大臣、渡辺錠太郎・教育総監などが暗殺され、鈴木貫太郎・侍従長が重症、岡田啓介・首相が襲われ、松尾伝蔵・内閣総理大臣秘書官事務取扱(私設秘書)が身代わりに殺されています。
あっという間に日本の政治の中枢である永田町、霞ヶ関、赤坂、三宅坂の一帯が彼らに占領されます。
結果、帝都東京は大騒ぎになり、最初は「蹶起軍」=反乱軍に同情的だったとも言われていた軍部は、天皇の判断を仰ぎ、「ただちに原隊に復帰させよ」と厳命され、各地から軍を集めて、反乱軍を包囲。
さすがに大勢が不利と悟った、反乱軍は2月29日にはほぼ原隊に服する形で解散。事件は4日ほどであっけなく終わるのですが。
なお、中心人物は以下の5人で、映画「226」でも彼らが中心に描かれています。
・野中四郎(陸軍歩兵大尉)
・香田清貞(陸軍歩兵大尉)
・安藤輝三(陸軍歩兵大尉)
・栗原安秀(陸軍歩兵中尉)
・磯部浅一(元陸軍一等主計)
反乱の結果として、野中四郎は自殺、安藤輝三は自殺を計るも失敗、後に死刑。その他の中心人物も戦後のいわゆる「暗黒裁判」でことごとく死刑(銃殺)にされています。
ちなみに、彼らを煽ったとも言えるのが、思想家の北一輝、西田税と言われています。
彼らがやったこと自体は、ほとんどテロに近い、クーデターであり、暴力に訴えるのが正しいとは到底言えません。
ただ、こういう出来事が起こってしまうには、きちんとした理由があり、彼ら若手将校は、あまりにも政治が腐っていて、家族や親戚、友人が貧困に苦しんでいるのをよく見ているのです。
私は、二・二六事件の本を持っていますが、いかに彼らが苦しんでいたか、がよくわかります。
その意味では、反乱軍の将校は、かわいそうな被害者と言えるわけです。
ちなみに、安藤輝三大尉は、とても立派な人で、多くの部下に慕われており、最初から反乱には反対していたと言われていますが、いざ反乱になったら、「死ぬまで戦う」と言っていたそうです。
現代日本で、こうした大規模な反乱が起こることはまずないでしょうが、それでも昨今のあまりにも腐った、日本の政治家たち、財務省の官僚を見ていると、「怒り」すら沸いてくるのが、一国民としての私の意見なんですけどね。
そもそも、日本の国土を中国に売り渡している政治家が多いのですが、昭和のこの時代なら、そうした政治家は間違いなく「売国奴」と言われて「斬り殺されて」います。




