表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/67

第24回 時代によって評価が分かれる人物

 現在、「週刊少年ジャンプ」で連載中、アニメ化もされた「逃げ上手の若君」。私は漫画を読んでないんですが、アニメを見たら面白かったです。


 何よりも「北条時行(ときゆき)」というかなりマニアックな人物を主人公にしているのが面白いですし、文字通りの「逃げ上手」っぷりが痛快なアニメ。


 では、北条時行とはどういう人物だったかというと。


 鎌倉時代末期から南北朝時代の武将で、鎌倉幕府最後の得宗とくそう(執権)・北条高時(たかとき)の次男です。


 先代の武家の筆頭である高時と、室町幕府創始者当代の武家の棟梁である足利尊氏(たかうじ)との中間の存在として、中先代なかせんだいとも呼ばれました。


 足利尊氏によって滅ぼされた、北条氏復興のため、わずか10歳で鎌倉幕府の残党を糾合して鎌倉街道を進撃し、建武2年(1335年)に中先代の乱を引き起こした、とされており、その後も何度も足利尊氏に挑み、最終的に正平7年/文和元年(1352年)に捕らえられ、翌年に処刑されています。


 享年25歳(※数え年)。


 こんなマニアックかつ、悲劇の最期を迎えた人物を、まさか少年誌の主人公に据えるとは。「るろうに剣心」を見て育った世代の私にとって、なかなかの衝撃でした。


 では、本題。


 「時代によって評価が分かれる人物」。

 それは、足利尊氏だったりします。


 江戸時代、徳川光圀(みつくに)(水戸光圀)を中心とした、水戸学では、朱子学の影響を強く受けており、皇統の正統性を重視していました。そのため、正統な天皇(=後醍醐ごだいご天皇)を放逐した尊氏は逆賊として否定的に描かれることが多かったのです。


 幕末の尊王攘夷の流れもあり、明治維新後の大日本帝国も、尊氏には否定的な見解が多かったと言われています。


 昭和9年(1934年)2月、第65回帝国議会において斎藤(まこと)内閣の商工大臣で男爵だった中島久万吉(くまきち)は、足利尊氏を再評価すべきという過去の文章を発掘。


 また、作家の萩原朔太郎(さくたろう)は尊氏を、「彼は人生の存在を、根柢的に悲劇と見、避けがたい悪の宿命として観念しながら大乘的の止揚しようによつて、また一切の存在を必然」として肯定しています。


 戦後になって、一次史料による実証的分析を通して、尊氏が数多くの発給文書を残していることがわかり、尊氏が鎌倉将軍とは違って最高指導者としての親裁権を活用し、動乱の苦難と産みの苦しみを乗り越えて室町幕府のおおよその骨格を形作った人物であることがわかってきて、評価が上がります。


 まあ、結局のところ、人物評というのは、時代によっても変わりますし、歴史家個人の見解によって変わることもあります。


 では、同時代の人は尊氏をどう見ていたか。


 夢窓疎石むそうそせきという、足利尊氏と親交があった臨済宗の坊さんがいます。

 その彼が足利尊氏を評して曰く。


・1つ、心が強く、合戦で命の危険にあうのも度々だったが、その顔には笑みを含んで、全く死を恐れる様子がない。

・2つ、生まれつき慈悲深く、他人を恨むということを知らず、多くの仇敵すら許し、しかも彼らに我が子のように接する。

・3つ、心が広く、物惜しみする様子がなく、金銀すらまるで土か石のように考え、武具や馬などを人々に下げ渡すときも、財産とそれを与える人とを特に確認するでもなく、手に触れるに任せて与えてしまう。


 何とも不思議で、魅力的な人物にも見えます。


 よく「織田信長は残忍」と言われますが、それも一面であり、彼は女や子供には非常に優しかったとも言われ、部下も能力があれば身分を問わず採用したと言われています。


 人の評価とは、簡単には割り切れないもの。


 そういうところが、歴史の面白さでもあるとは思います。


 「逃げ上手の若君」に関しても、今後、北条時行同様、足利尊氏がどういう動き、性格を見せてくるのかが楽しみです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ